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578: 2021/01/15(金) 00:36:28.44 ID:FROZYJpJ0
それじゃあここで、オレの痛すぎる高校3年間を語ろうか。

高校に入学したある日、突然空から降ってきた魔導少女と契約したオレは、
常世の世界と呼ばれるセカンドワールドにおいて、支配者である夜見王と戦い、勝った。
あと、魔導少女とやりまくった。

高校2年になったある日、魔導少女が病気で死んで、夜見王の娘が常世の世界を征服しようとした。
だが、オレの中に眠っていたタクティカルエレメントが突如発動し、悪の心が消し去られた夜見王の娘は我を取り戻した。
また、超絶イケメンのオレに惚れたらしいので、毎日やりまくった結果、聖魔の子どもを3人も授かった。

高校3年になったオレは、流石に女にもセカンドワールドにも飽きてきたので、魔導能力を捨てて現世に戻った。
そして、ゴールドジム通いを初めて、ホモ性行為に目覚めて、デカマラゴリラとやり過ぎた結果、直腸が崩壊した。
あと、ゲイ雑誌を部屋に隠してたのが母親にばれたが、母親がパート先で正社員と浮気してることも知っていたので、
まあなんとかなった。

ちなみに母親の名前は笹子という。
そう、オレは未来からやってきた1の息子だ。
デデンデンデデン
580: 2021/01/15(金) 22:39:46.12 ID:EaCBqt4a0
こんばんは!
続きを書いていこうと思います~
581: 2021/01/15(金) 22:40:30.87 ID:EaCBqt4a0
親には「真面目に授業を受けている」と軽薄な嘘をついて、
俺は大学に行くこともなく、誰と会うこともなく、
しみったれたアパートの部屋で一人過ごしていた。

ぼんやりしているうちに、季節は流れて6月になった。
むしむしして、すっかり暑くなっていた。

金もなかったので、エアコンを無闇に使うこともできず、
昼間だけ大学図書館に避難して涼んだりしていた。

高い学費を払って、授業を一切受けずに、
図書館で涼んでるんだから、本当に救いようがないよ。
582: 2021/01/15(金) 22:41:12.54 ID:EaCBqt4a0
しばらく、昼過ぎに起きて涼むためだけに大学図書館に繰り出すという、
世界で一番意味のない日々を過ごした。

テスト期間でもなく、基本的に人影のまばらな図書館で、
俺は日がな一日中物思いに耽っていた。

「はじめから絵なんて…漫画なんて描いていなければ」
「こんな事にはならなかったのに」

俺は、かつて創作活動に打ち込んでいた自分をひどく恨めしく思った。
と同時に、もはや心の底から絵を描くことが嫌いになっていた。
583: 2021/01/15(金) 22:42:20.64 ID:EaCBqt4a0
無駄な時間だった。
すでに、大学の2年間を棒に振った。

そして終いには大きくつまずいて転んで、すっかり居場所をなくして。
きっとだらだら留年を続けて、就活も上手く行かずに、
クソみたいな人生を歩むんだろうか。

目の前に広がる暗闇が本当に怖かった。

「漫画なんて描かずに、俺も普通に漫研に参加していたら、もしかしたら」
ありもしなかった架空の日々に思いを馳せた。

絵なんて、漫画なんて、クソだ。
そう思った。
584: 2021/01/15(金) 22:44:15.96 ID:EaCBqt4a0
図書館にこもるようになってからどのくらいだったか分からない。
館内の端のデスクで眠りこけていた俺の肩を誰かが叩いた。

「戻ってきてたの?」

俺「え……?」
笹子「久しぶりだね」

そこには、約一年ぶりに見る笹子さんの姿があった。
めちゃくちゃに気まずかった。
俺が最後に見た本物の笹子さんは、ぐしゃぐしゃに泣いていた時だった。

実に、あのクソ騒動以来での対面であった。
585: 2021/01/15(金) 22:45:29.77 ID:EaCBqt4a0
笹子「元気そうで、よかった」
俺「あ……は……はい」

笹子「こんな所で、何してるの?」
俺「い、いや、別に特に何も……」
笹子「部室、来る?」

そう水を向けられたが……今さらあんな場所に行けるワケがなかった。
っていうかもう、部員ですらなかったし。

俺「いや、いいです……」
笹子「そっかぁ。お腹は、すいてる?」
586: 2021/01/15(金) 22:47:00.55 ID:EaCBqt4a0
俺「そ、それなりには」
笹子「じゃあさ、一緒に学食で行こうよ」
俺「大丈夫ですが…いいんですか?」

笹子さんは「なにが?」とでも言わんばかりにキョトンとして俺を見た。

笹子「じゃあ、せっかく久々に会ったし、いこっか」

そう言われて連れ出されて、俺は笹子さんと二人で学食へ向かった。
587: 2021/01/15(金) 22:48:29.00 ID:EaCBqt4a0
券売機の列に並びながら、妙に気まずい空気を感じつつ、
俺は「あの件」に触れる勇気を振り絞った。

俺「あの」
笹子「ん、なに?」
俺「俺…あんな事して…本当にすみませんでした」

笹子さんは、少し上の空で「あ~…」と言うと、
「ま、もういいよ。ほとんど忘れた」と力なく笑った。
588: 2021/01/15(金) 22:50:00.51 ID:EaCBqt4a0
その奥底には、もう絶対に消すことのできない傷があって、
俺と笹子さんの間には、どうしようもなく深い溝があることが、痛いほどに分かった。

笹子「私は、1くんが元気に大学に戻ってきて嬉しいから」
俺「あ、ありがとうございます…」

そんな会話をしつつ、料理を受け取って二人で空席をさがした。
ピーク時は過ぎた時間帯であったが、
それでも良さそうな席は埋まってしまっていた。
589: 2021/01/15(金) 22:51:10.03 ID:EaCBqt4a0
席に着いてからも、気まずい時間が流れた。
どうして笹子さんは、俺なんかを誘い出してくれたのだろうか?
単純に心配だったのだろうか。

俺「笹子さんも、もう4年生ですもんね」
笹子「どうしたの急に? そりゃそうだよ」
俺「いや、俺はまだ2年ですから」
笹子「あっ…そっか、ごめんね」

自分だけピッタリと、時が止まっているような気がした。
590: 2021/01/15(金) 22:52:33.65 ID:EaCBqt4a0
俺「そういえば、穂高のヤツから聞きました。内定おめでとうございます」
笹子「あ、ありがとう!」

俺「聞きましたよ。ゲーム会社でデザイナーだって」
笹子「うん、行きたかったところなんだ」
俺「笹子さん、絵は仕事にしないって言ってたから…意外でした」

俺がそう言うと、笹子さんは「そんな事も言ってたね」と笑った。

笹子「私ね、色々考えたんだ。自分の将来のこととか、人生のこととか」
俺「はあ……」
591: 2021/01/15(金) 22:54:28.95 ID:EaCBqt4a0
笹子「絵で食べられるなんて到底思ってなかったんだけど、」
笹子「それでも、自分の好きな事を仕事にできたら、きっと楽しいんだろうなって」
笹子「好きな事を仕事にすると辛くなるってよく言うけどさ」

笹子「それくらい人生を好きな事に捧げたかったから……」

熱心に話す笹子さんの顔を見て…俺は思った。

「ああ、この人は俺とは違うんだなぁ」
592: 2021/01/15(金) 22:55:50.29 ID:EaCBqt4a0
俺「……すごいと思います」
笹子「いやまあ、ただ運が良かっただけだよぉ」

運がいいだけで、ゲーム会社でデザイナーになれるわけがない。
それは確実に”笹子さんの実力”だ。
俺は心の中でそう思ったけど、口には出さなかった。

俺「きっと笹子さんはこれからも、一生絵を描いていくんですね」
笹子「まあ、仕事にしたらね。きっとそう」

本当に愛して傾倒するって、こういう事だったんだな。
593: 2021/01/15(金) 22:56:52.52 ID:EaCBqt4a0
笹子「1くんは、もう絵は描いてないの?」

そう言われて…ドキッとした。

俺「俺はもう…描かないっすよ」
笹子「え、でも、あんなに熱心だったのに」
俺「あれは……一時のものだったというか。多分嘘っぱちだったんです」

笹子「……本当に?」
笹子さんは、とても寂しそうな顔をしていた。
594: 2021/01/15(金) 22:58:05.40 ID:EaCBqt4a0
俺「…本当ですよ。もう、二度と描かないです」
俺「意味ないですから」

笹子「…嘘だよ」
俺「嘘って、何がですか? 僕はもう描きたくないって自分で…」
笹子「そんなの嘘じゃん!」

珍しく、笹子さんが大きな声を上げた。
595: 2021/01/15(金) 22:59:08.69 ID:EaCBqt4a0
俺「え……?」
笹子「1くんの絵は、いつも楽しそうな気持ちが伝わってくる素敵な絵だったよ?」
笹子「描きたくないなんて、そんなの嘘だよ」

俺「だって、俺なんかが描いたところで…もう意味なんか……」

笹子「1くんは初めて絵を描いたとき、意味があると思って描いてたの…?」

そう言われて俺は。
自分が「楽しい」と思って絵を描いていた日々の事を思い出した。

初めてお絵かきしたのはきっと小学1年の時で、
カービィを模写して母親に褒められたことがすごく嬉しかった。
596: 2021/01/15(金) 23:00:25.18 ID:EaCBqt4a0
小4の時、ドラゴンボールの模写をして、キャラクターを初めて描いた。
中学に上がって、初めて女の子のキャラを描いた時はすっげえドキドキしたけど、
めちゃくちゃに楽しかったことを、今でも覚えてる。

でも、高校に上がってからはオタクいじめをされ、
そこから「見返してやる」という気持ちが強くなって、
ただただ自分の存在証明のためだけに絵を描き始めて……

「楽しい」よりも、「焦燥感」の方が、勝っていたかもしれない。

俺には才能があって、誰よりも上手くないといけなくて、
絶対に賞を取って、必ず漫画家にならなくてはいけない。

いつからか俺は、そんな風に考えてしまっていたんだ。
597: 2021/01/15(金) 23:02:37.21 ID:EaCBqt4a0
バンプの「才悩人応援歌」じゃないけど、
いつしか俺はそんな人間になってしまっていた。

そしてそれで突き進んだ結果……
今、こんな姿に成り果てた自分がいた。

笹子「1くんは、どうして絵を描き始めたの?どうして絵を描いていたの?」
俺「そ、それは……」

笹子「ずっと前だけどさ…私、1くんがアンケートに描いてくれた大河の絵、よく覚えてるよ」
笹子「楽しそうに絵を描くなぁって」
笹子「私は、1くんの絵がずっと好きだったよ」

嬉しかった。笹子さんにそう言ってもらえるだけで、どれほど救われたか。
でも、自分だけじゃもう、どうしていいかわかんなかったんだ。
598: 2021/01/15(金) 23:03:36.09 ID:EaCBqt4a0
笹子「もう、描かないの?」
俺「わ、わかりません! 俺にもわからないんです。俺はもうどうしたらいいか…」

俺「絵を描こうとすると、むなしくなるんです」
俺「叶わなかった夢とか、理想とかがちらついて、もう前と同じように描けないんです!」

俺は必死になって、そんな事を笹子さんに言っていた。
でも、取り乱した俺に対しても笹子さんは、落ち着いた様子だった。

笹子「1くんさ、この夏、ヒマ?」
599: 2021/01/15(金) 23:04:47.69 ID:EaCBqt4a0
俺「ヒマですけど……」
笹子「私と一緒に、コミケ出ようか」

笹子さんの口から「コミケ」というワードが飛び出し、俺は驚いた。

俺「え、コミケですか? それって、同人誌を出すってことですか…?」
笹子「そうだよ。だからさ、同人誌作ろうよ」

笹子さんからの誘いだから、断るはずもなかったのだけど、
それってまた面倒くさい原稿作業をしないといけないのか…?
と思うと、気乗りはしなかった…。
600: 2021/01/15(金) 23:06:03.61 ID:EaCBqt4a0
俺「でも、同人誌なんて俺興味ないですし、なんのためにそんな……」
笹子「だから、私が見たいんだよ。1くんの作品」

胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
本当に卑怯だ、この人は。

今まで俺は、漠然と自分の自己実現……
ただ夢のためだけに、絵や漫画を描き続けてきた。

こんな身近なたった一人のために何かを描く。
そんな事、考えたこともなかった。
そして、何かを作る上では、それが一番大事な事だったのかもしれない。
601: 2021/01/15(金) 23:07:49.56 ID:EaCBqt4a0
俺「そ、そんなのずるいですよ……」
笹子「だからさ、一緒に描こう、同人誌」

俺「え、一緒って…?どういうことですか?」
笹子「だから、1くんと私の合同誌にしようよ。そしたら費用だって折半だよ!」

俺「俺を使って、費用を抑えようとしてません?」
笹子「ひどーい!そんな事ないよ!本当に1くんと同人誌が作りたいんだよ」

茶化すと、笹子さんはなんだか楽しそうに笑ってくれた。
602: 2021/01/15(金) 23:09:09.95 ID:EaCBqt4a0
俺「…わかりました。笹子さんがそこまで言ってくれるなら、一緒に作りましょう、同人誌」
笹子「ほんとに?」

俺「でも、コミケって申し込みとかジャンルとか…色々複雑だって聞きましたけど…」
笹子「あ、それなら大丈夫。就活が終わるだろって見込んで、私申し込んでおいたの」
俺「おお、それはすごいですね……」

笹子「まだ就活中だったらやばかったけどねw学生時代のうちに、一度参加してみたかったから」
俺「確かに、社会人になったら参加は難しいかもですね…」

俺「あ、そうだ。ちなみにジャンルは…?なにか版権ジャンルですか?」
俺がそう訊ねると…笹子さんは首を横に振った。

笹子「創作少年。…ほら、1くんの出番でしょ?」
笹子さんがドヤ顔でそんな事言うもんだから、俺は思わず吹き出した。

でも、なんだか騒がしくて楽しそうな夏になる気がした。
603: 2021/01/15(金) 23:12:27.19 ID:EaCBqt4a0
それから俺は、ずっと立ち上げていなかったコミスタを久々に起動し…
原稿作業に着手した。

笹子さんはイラストしか描けないとの事で、本文の半分を笹子さんのカラーイラスト、
そしてもう半分を、俺のモノクロ漫画で埋めることにした。

その間、笹子さんとたまにSkypeで連絡を取り合ったりして、
お互いの進捗を確認しあったり、励まし合ったりした。

印刷所の手配なんかも俺の方でして、
少しでも質が高く、料金がリーズナブルな所を探した。

本来であれば何もなかったはずの夏が、急に慌ただしく、
そして鮮やかに色づきだしたので、戸惑いつつも、それを目一杯楽しんだ。
604: 2021/01/15(金) 23:13:56.07 ID:EaCBqt4a0
7月の下旬に差し掛かると、いよいよ〆切間近。
本文も大体が仕上がって、あとは表紙絵だけ、となった時。

表紙のイラストはカラーが上手な笹子さんのイラスト単騎でいく予定だったが、
笹子さんが「二人の本だから」と、
どうしても俺と笹子さんのイラストを組み合わせた表紙絵にしたがった。

カラーはほとほと苦手だったんだけど、
笹子さんの「二人の本だから」という気持ちが嬉しくて、
俺は苦心してなんとか、オリジナルのカラーイラストをでっち上げた。

色んな苦労がありつつも、すべてのデータを無事に入稿した俺たちは……
きたる「夏コミ」本番を待つだけとなった。
605: 2021/01/15(金) 23:15:48.26 ID:EaCBqt4a0
当日。
俺は大井町で安いビジホを借りて前泊し、
笹子さんは高田馬場の親戚の家に泊まって前乗りをした。

早朝に国際展示場駅で待ち合わせた笹子さんと俺は、
初めての異空間に圧倒された。

見渡す限り人の海で、果てしない熱気をまとった人間が、
このビッグサイトで一堂に介している。

その状況があまりにも「非現実的」で、
俺も笹子さんもただただ圧倒されるばかりだった。
606: 2021/01/15(金) 23:18:00.76 ID:EaCBqt4a0
俺たち「創作」ジャンルのスペースは西展示棟だった。

東に比べればそこまで広くない西館であるが、
この時ばかりは俺も笹子さんも圧倒された。

あの「コの字型」の展示棟に、これでもかと長机が並んでいて、
色んなサークルさんが思い思いのポスターを掲示し、
自分の「自慢の作品」を並べている。

その光景には、すべてに「情熱」と「愛」が宿っていて、
こんな世界があるんだなぁとかつてない衝撃を受けた。
607: 2021/01/15(金) 23:20:10.59 ID:EaCBqt4a0
スペースにたどり着くと、すでに長机の下には印刷所のダンボールがあった。
笹子さんと二人で興奮しながらスペース内に入り、
「これですよね!?」と急いでダンボールを開封。

なんとも言えないインクの匂いともに…
俺と笹子さんの苦労の結晶である、同人誌の束が出てきた。

俺「す、すごい! 本当にちゃんと、本に、本になってますよ!!」
笹子「マジだ!すごい!ちゃんと本だ!」
608: 2021/01/15(金) 23:21:54.29 ID:EaCBqt4a0
作った部数は、ちょっと強気の50部。
いや、大手のサークルさんからしたら、大した数字じゃないだろうが。
初参加で、かつオリジナルの同人誌とあっては、かなり冒険した数字だった。

でも、笹子さんはピクシブでも普通に人気があったので、
このくらいの数字にしても普通に大丈夫だろう、という算段だった。

初めての同人誌にすっかり舞い上がった俺と笹子さんは、
あたふたしながらサークル設営をしつつ、
隣のサークルさんと挨拶をして新刊を交換したり、スタッフさんに見本誌を提出したり、
そんな初めての「同人イベントの定番」を楽しんだ。
609: 2021/01/15(金) 23:22:53.01 ID:EaCBqt4a0
そして、時刻が10時になり……
会場内、一斉の拍手とともに、コミケがスタート。

その拍手の文化を知らない俺と笹子さんは、
きょろきょろと周りを見回しながらも、なんとなく拍手をした。

開始してから15分弱で、「新刊ください」と、
一人の男性が同人誌を購入していった。

緊張でどぎまぎしながら「ありがとうございます!」と
言って、本を手渡した。
610: 2021/01/15(金) 23:26:23.89 ID:EaCBqt4a0
俺と笹子さんは「売れた!」と大はしゃぎ。
「本当に買ってくれる人がいた!」と二人して大喜びであった。

その後も、あまり途切れることなく、俺と笹子さんの同人誌は次々と売れていった。
その度に、俺も飛び跳ねて喜んでいたが…。

けど、時間が経つにつれて俺は気づいた。
これ、買っていってる人、ほとんどが笹子さんのファンだ。

考えてもみれば、当然のことであった。
だって笹子さんはpixivでもランキングに入るほど、
すでにそこそこ知名度があって、かつイラストもすこぶる上手い。

そんな人と合同で本を出したら……そりゃあ、笹子さん目当てで買いに来る人ばかりだろ。
611: 2021/01/15(金) 23:27:41.59 ID:EaCBqt4a0
立ち読みする人もみな、笹子さんのイラストパートを熟視して購入しているし、
声をかけてくる人も、みんな「○○さん(笹子ペンネーム)います?」としか言ってこない。

開始1時間くらい経過してから、今さら俺はその事実に気づき……
スペース内で一人また、自分を客観視していた。

「笹子さんと同人誌が作れる」っつって一人で勝手に盛り上がって舞い上がっていたけど、
結局、結局……現実はこれだ。

俺はただのヘボで、主役ではない。
この同人誌だって、作る意味はなかったんじゃないだろうか?
612: 2021/01/15(金) 23:28:28.64 ID:EaCBqt4a0
昼過ぎあたり……同人誌の在庫もわずかになってきた時。
俺はふと、こんな事を言ってしまった。

俺「この同人誌……俺、必要だったんすか?」
笹子「…どうして?」
俺「だって買いに来る人はみんな笹子さん目当てで…」
俺「はっきり言って、俺の漫画なんてただの邪魔ですよね?」

そう言うと、笹子さんはイベント効果で高揚していたのか…いつもの笹子さんとは違った。
ぱしん、と俺の肩を叩くと、
「何言ってんの!1くんの漫画最高だったじゃん!」と楽しげに言った。
613: 2021/01/15(金) 23:30:07.21 ID:EaCBqt4a0
笹子さんは、同人誌を開いてまじまじと眺めた。
笹子「1くんの漫画、すごく面白かったよ」
笹子「描いてくれて本当に感謝してるし、私、また1くんの漫画読めて…本当に嬉しかったよ」

ちょっと前まで「笹子さんは印刷費を抑えるためだけに俺を利用したんじゃ…」
とか考えていた自分を、殴り倒したくなった。

笹子さんのその表情には、まったく嘘偽りがなかった。
本当に、心の底から、きっと俺の漫画を楽しみにしてくれていた。

というか、どうかそうであってほしい。
あの女神のような表情が、嘘であったなら、俺は死ぬ。
614: 2021/01/15(金) 23:31:13.18 ID:EaCBqt4a0
俺「笹子さん……」
笹子「だから、そんな事言わないでほしい」
笹子「少なくとも今日、私たちの同人誌はたくさんの人の手に…渡ったんだから」
俺「まあ……それも、そうですね」

俺は、あと数冊になった同人誌の残りを見て、
最後までイベントを楽しもう、と思った。

そして、それから少しだけ間があって……。
615: 2021/01/15(金) 23:32:09.41 ID:EaCBqt4a0
笹子さんのファンと思われる若い女性が一冊購入していき、
そのすぐ後であった。

俺と同性代くらいの、若い男性が「いいですか?」と同人誌を手に取った。
そしてしばらく熟読。
一回読んで、もう一回読み直す。

そして笑顔で顔を上げると……

男「この漫画描いた方、今いらっしゃるんですか?」

急な質問に、俺も笹子さんも驚く。

俺「あ、俺……ですけど」
616: 2021/01/15(金) 23:34:02.04 ID:EaCBqt4a0
男「この漫画、すごく面白かったです!一冊ください」
そう言って笑顔で、500円を差し出した。

初めてのことだった。
まったく知らない誰かに、直接、自分の漫画を褒めてもらったこと。
だから俺は嬉しくて、嬉しくて、混乱してしまい……

その男性が去ったあと、スペースに立って売り子をしたまま、涙を流していた。

笹子さんに「大丈夫?」と心配されたが、
涙は止まらず、ぼろぼろと泣き続けていた。
617: 2021/01/15(金) 23:35:16.61 ID:EaCBqt4a0
誰にも認められることのないと思っていた、自分の漫画。
自分の生み出すものは、ずっとずっとクソだと思っていた。

でも、いた。
今日、確かに、そこにいた。
どこかの、知らない誰かに、届いた。

そう思うと、もう自分の感情がわからなくなり、ただぼろぼろと泣くしかなかった。

でも、考えてみれば……最初からそうだったのかもしれない。
618: 2021/01/15(金) 23:36:05.78 ID:EaCBqt4a0
横森さんがいた。穂高も褒めてくれた。
笹子さんも俺の作品を好きだと言ってくれた。
高校の時だって、中学の時だって、ずっとずっとそばには、
俺の作品を好きだと言ってくれる人がいた。

なのに、夢とか漫画家とか、大きすぎる目標だけが先行してしまって、
自分の中でそういった人たちの存在にずっと気づかずにいた。

バカだと思った。
いつだって、どんな時だって、必ず……
誰かが自分の作品を見ていてくれる。

俺は、そんな単純なことにずっと気づいていなかったんだ。
619: 2021/01/15(金) 23:37:40.55 ID:EaCBqt4a0
そして、笹子さんと参加したコミケで、俺は……

そんなシンプルな事にやっと気づくことができた。
絵はただ自分が楽しいから描くものだったし、
そして、それを応援してくれる人は、気づかないだけで、どこかにいるんだ…と。

この、コミケの熱狂渦巻くビッグサイトのど真ん中で、
俺はそんな単純なことに気づき……

ただただ、涙を流すしかなかった。
620: 2021/01/15(金) 23:38:47.55 ID:EaCBqt4a0
結局、笹子さんとの合同誌は昼過ぎにはめでたく完売し、
俺と笹子さんは14時過ぎには会場から撤収した。

なんだか、いつになく、本当に清々しい気持ちだった。
一日中熱気の中にいて、体なんか全身汗だくでひどいものだったけど、
外はバカみたいに晴れていて、この上ない青空が広がっていた。
621: 2021/01/15(金) 23:40:32.08 ID:EaCBqt4a0
俺「なんか、よかったです。今日参加して」
笹子「ほんと? 1くんがそう思えたなら、本当によかった」
俺「正直言うと、ちょっと怖かったり…卑屈になっていた部分もあったんです」
笹子「……そっか」

俺「でも、なんか全部どうでも良くなったっていうか。もちろん、良い意味で」
笹子「…うんうん」

俺「笹子さん、俺……また絵とか漫画、描きます」
俺「だって、描くのは……楽しいですから」

俺がそう言うと、笹子さんは小声で「だろ?」とだけ言い、にこりと笑顔を咲かせた。
622: 2021/01/15(金) 23:43:57.77 ID:EaCBqt4a0
色々あったけど、やっぱり俺は、絵を描いてきて良かったと思った。

痛すぎる行動も何度もしでかしてしまったし、その代償が消えることもない。
けど……
俺は、きっとこれからもまた懲りずに絵や漫画を描き続けるんだろう。

ビッグサイト前のやぐら橋で振り返ると、
あの”逆三角”が青空のなかにくっきりと浮き立っていた。

俺「俺、またなんか描きたくなってきました」
笹子「わかるよ。私も」

俺「帰ったら、何描こうかなぁ」
623: 2021/01/15(金) 23:46:11.19 ID:EaCBqt4a0
ということで…この話はこれで終わりです。
今まで長い間、お付き合いいただいて本当にありがとうございました。

https://twitter.com/Tomizawa_2ch
↑Twitterもやってますので、もしご感想があればこちらにお願いします。

それでは、本当にありがとうございました。
624: 2021/01/15(金) 23:49:11.65
あー、、お疲れ様。。
すごく綺麗なドラマだったからそうかもなぁとは思っていたが
創作だとしてもホントに楽しめたよ。ありがとう。
なんかこの世界に入り込みすぎて、俺もどっと疲れたよ
626: 2021/01/15(金) 23:59:56.70
お疲れ様でした。
とても楽しませて頂きました。
まさか、ゲーセンの方とは思わなかった……
ありがとうございました。
627: 2021/01/16(土) 00:09:23.89
これ思うんだけど、大袈裟じゃなく
夢を追いかけてる人は必見の読み物だろこれ
特に、クリエイター系目指してるやつ
630: 2021/01/16(土) 00:18:50.99
最後までお疲れ様
面白かったよ
ありがとう
640: 2021/01/16(土) 12:07:37.68
ホント楽しかった!
これをちゃんとした作品として改めて出して欲しい!
641: 2021/01/16(土) 18:56:44.94
めちゃくちゃ青春してて草
642: 2021/01/16(土) 20:11:02.28
完走おめ!

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