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信じられないような出来事だったけど実話なんだ。
釣りだと思うならそう思ってもらって構わない。
実際話だけ聞けば作り話みたいな話なので。
あと特定防止のために少しフェイクはいれるけれど大筋は実話です。
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まずは当時の俺と仲良かった二人のスペックについて
俺 キョロ充チビの高校二年生、吹奏楽部 クラスではかなり地味な存在だった。 いじめこそなかったけれど周りに見下されてる感じはあった。
細木 中学校からの友達。 俺と同じ吹奏楽部。 ガリガリだけど身長は高い。
松坂 高校で出会った親友。科学部の部長。 顔が不細工だがそれ以外のスペックはなぜか総じて高い。
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まずおれたちの通っていた学校についてだが、そこそこ田舎の頭がよくも悪くもない。
なんというか普通の高校だった。
俺たちのいたクラスは全員で36人のクラス。 夏休み前に学校祭で一致団結していたのでイジメもなくそれなりに仲のいいクラスだった。
ことの発端は夏休みが明けて1週間くらいの時。 うちのクラスの委員長が無断欠席をしたところから始まる。
うちのクラスの委員長は男子バレー部の副部長だかで人望があって真面目な奴だった。 そんな奴が何の連絡もなく休んだので担任もおかしいと言っていたし、 クラスでも登校中に交通事故にでもあったんじゃないかみたいな話がでていた。
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そんな中リア充グループの一人が
「あれ、もしかしてあいつ呪われたんじゃねww?」
みたいなことを言い出した。
その時はみんな「んなばかなwww」みたいな雰囲気だったけれど そのリア充の話では昨日の夜にこっくりさんみたいな儀式を友達数人でやったとのことだった。
それでそれをやったメンバーの中に委員長もはいっていたとのことだ。
「それであいつ、儀式終わってから気持ち悪いとか言って帰りやがったのww これは憑りつかれたの確定でしょww」 みたいなことを言っていた。
俺と細木と松坂は話の輪に入っていたわけではなかったが、話は聞こえてきていたので 「そーゆー儀式ってうまくいくとやばいんじゃない?」 って感じでそのまま2ちゃんのオカルトな話について語ってた。
その後昼休みになり担任が委員長の家に電話したが、親に「いつも通り登校したはずだ」と言われたとのことで クラス全体がオカルトなはなしで盛り上がっていた。
怖い話をしつつも、真面目な委員長が何かしらの理由でさぼったと思っていたと思う。
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そんなこんなでその日は終わったんだけど、次の日には笑えない事態になっていた。
次の日委員長のことなんてすっかり忘れて普通に登校したんだが、クラスに入ると雰囲気がおかしい。 みんな押し黙っていて、会話している奴がいても暗い表情でぼそぼそ話していた。
それどころが中にはすすり泣いている女子も何人かいた。 俺は既に登校していた松坂に何かあったのかきいた。 すると松坂は 「委員長、昨日なくなったらしい。」 と目を腫らしながら教えてくれた。
一瞬昨日のことを思い出して 「えっ呪い!?」と思ったけれどそんな不謹慎なことを言える雰囲気ではなかった。 俺「なんで亡くなっちゃったの?事故?」 松坂「いや、俺も詳しくは知らないんだ。 俺も朝きてクラスの奴に聞いただけだから。」 俺「そっか。」 結構衝撃的なことだったが俺は結構冷静だった。 悲しくもあったし、つらくもあったけど、それよりも先に「なんで?」って考えで頭がいっぱいだったと思う。
そのあとすぐに緊急の全校集会が行われた。 内容はもちろん委員長がなくなったことについてだったが、なぜ亡くなったのかは一言も触れていなかった。
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それからクラスは一日中暗く、常にすすり泣く声が聞こえていた。
授業も授業にならず、自習か、先生も泣いてしまって授業が進まないかのどちらかだった。
帰りのホームルームになって一日中姿の見えなかった担任がやってきた。 委員長のご亡くなった後に会ってきたとのことだった。
担任はやっぱりシ因については触れなかったが、クラスメイトの一人が 「なんで、あいつはしんじまったんだよ!!」 と泣きながら叫んだところでクラス全員が涙を流した。
俺もやっと実感がわいてきたのか涙が止まらなかった。
すると担任も涙を流しながら 「自ら亡くなる事だ。遺書も見つかった。」と教えてくれた。
みんなかなりのショックを受けていてもう口を開く人はいなった。
担任も何か言おうとしていたが泣いて言葉が出なかったようで 「気を付けて帰れよ」とだけ言って行ってしまった。
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その日は部活も休みになってほとんどだれかと話すこともなくすぐに帰った。
家に帰るとなぜか母親も一連の騒動のことを知っていて、 「大変だったね」と言ってくれた。
高校二年生にもなって親の前で号泣してしまったよ。
次の日もクラスはとても暗かった。 朝のホームルームで担任が来て 「今日委員長の葬式がある。 参列したい奴は手を挙げてくれ。」 といった。
こんなに上げにくい挙手はないだろうと思ったけどクラス全員が手を挙げていた。
その後何人かの先生の車に分かれて乗って葬式に行った。
葬儀では涙が止まらなかったが、葬儀が終わるとしっかりと別れを告げることができたと思えた。 その後は学校に戻っていつも通りの授業を受けた。
まだ暗い雰囲気は残っていたがクラスのみんなも切り替えができたのか、いつも通り過ごそうと明るく振舞っていた。
クラスには大きな傷が残ったが、この先委員長の分まで頑張ろうといった感じだった。
しかし、次の日事件が起きた。
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次の日俺は自転車に乗って学校に向かっていた。
いつも通学の途中で大きい橋を渡るんだが、その日は橋に通行規制がかかっていた。 なにやらパトカーやら救急車やらがいっぱいとまっていた。 そして野次馬がいっぱいいた。
なにか事件でもあったのかと思い野次馬の中に混ざってみると何でも高校生が橋から落ちたという話を聞いた。
まさかと思って現場ぎりぎりのところまで行ってみると自転車が2台倒れているのが見えた。
うちの高校じゃ自転車には盗難防止のため高校指定のシールを貼らなきゃならないんだが、 その2台の自転車にはうちの高校のシールが貼ってあるのが見えた。
さらに言うと学年ごとにシールの色も決まっているんだが、その自転車に貼ってあるシールは、 俺の自転車に貼ってあるシールと同じ色だった。
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俺は怖くなってしまい、あわててその場を離れた。
学校に着くともうその話は学校中に広がっていた。
でも誰が落ちたのかはわかっていなかった。 もし仲のいい奴が・・と思うといてもたってもいられなかったが、細木と松坂の姿を見つけて 不謹慎ながらも胸をなでおろした。
でも細木はとても体調が悪そうで何を話しても「ああ」とか「おお」しか答えてくれなかった。
その後いつも通りホームルームがはじまったが、まだ来ていない生徒が二人いた。
野球部の生徒が二人来ていなかった。 担任からは何も言われなかったけどみんなわっかていたと思う。
今日落ちたのはこの二人だって。
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重苦しい空気の中で時間が過ぎて昼休み。
4時間目の授業が終わると同時に担任が入ってきて話し始めた。
「ちょっと話がある。
みんなもう知ってるとは思うけど今日うちのクラスの生徒二人が○○橋から転落して亡くなった。」
中には泣き始める者もいたがほとんどの生徒が押し黙っていた。 みんな分かっていたと思う。
すると突然儀式のことを話していたリア充が 「呪いだ!!」 と叫んだ。
担任「どういうことだ?」
リア充「俺と委員長と野球部の二人で呪いの儀式をやったんだよ!!
委員長が亡くなる前日に!!
次はきっと俺なんだよ!!」
担任「呪いなんてあるわけないだろ!?」 リア充「でも儀式はうまくいったんだよ!!」 女子A「ねえ、不謹慎なこと言うのやめてよ!」 女子B「そうだよ!命がほんとうに・・・」
細木「呪いだよ!!!」
細木が不意に叫んで立ち上がった。 クラスは一瞬で静かになった。
細木「お、おれ見たんだよ!! 二人が橋から落ちるところを!! 野球部Aが突然転んで落ちそうになって・・ 野球部Bが助けようとしたけど一緒に落ちたんだよ!!」 女子A「それってただの事故じゃん!! なんで呪いになるのよ!!」
細木「見たんだよ!! 二人が落ちたところに駆け寄って橋の下みたらさ、女がいたんだよ!!」
女子A「はあ?女が川の中にいたっていうの? へえ、そんなのよく見えたねえ!?」
細木「違う!!違う!! 川の中じゃなくて浮いてたんだよ!! 橋のすぐ下に!! 女の幽霊が!!」
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クラスが本当に静かになったのを覚えてる。
おれは訳が分からなくて呆然としてた。
担任「バカなことを言うな!! 幽霊なんているわけないだろ!! 今日はもう全員かえれ!! 自宅待機だ!! 絶対外出するなよ!!」
担任がぶちぎれてその日は終わった。
家に帰ると俺が早く帰ってきて母親がびっくりしていた。
今日の出来事を話すと「今日はゆっくり休みなさい」と言われた。
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まあへたくそな創作だと思って聞いてくれ。
俺は部屋に戻るとすぐに細木に電話した。
細木の話をまとめると
細木は野球部二人の後ろを距離を開けて走っていた。 一人が突然転倒して橋から落ちそうになった。 もう一人が助けようと引っ張ったけど二人一緒に落ちてしまった。 慌てて細木が近寄って橋の下をのぞき込むとすぐ下に女が浮いていた。 細木はそのまま逃げてしまった。
とのこと。 とてもだけど信じられなかった。
そもそも自転車で転んだところで橋から落ちるだなんてまずありえない。 この時は細木が嘘をついてると思った。
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細木が嘘をついていると思うとなんだか腹が立ってきてすぐに電話を切ってしまった。
次に松坂に電話した。
今回の事件は呪いだろうかと聞いてみると
ほぼ確実に偶然だろうとのことだった。 たまたまこっくりさんだかをやった人たちが立て続けになくなっているから 呪いの話が一気に広まっただけですごい確率だけど偶然だと。
細木のみた幽霊に関しては幻覚だろうといっていた。 目の前で知り合いが二人も落ちたら幻覚の一つや二つ見ても仕方ないだろうと。
確かに目の前で知り合いが橋から落ちたら冷静ではいられないだろう。 そう考えると細木に冷たく当たってしまって申し訳ない気持ちになった。
その日の夕方のニュースで事件についてほんの少しだけ触れていた。 ニュースでは原因を調査中と言っていた。
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その日の夜に学校から明日は普通通りに登校するよう電話があった。
次の日登校すると教室では誰も話をしていなかった。 泣いてるやつもいなかった。
ホームルームでは今日は一日中自習だと言われた。 それと自習中に順番に呼び出しするから校長室に来いともいわれた。
自習中は常に教卓に副担任が座っていて、誰も一言も話さなかった。 呼び出しで担任が来るのと、呼び出しから戻ってくる人がいる以外は物音もほとんどなかった。
そして俺の呼び出しの番が来た。
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呼び出しを受けて校長室に行くと担任、校長、教頭、それから知らないおっさんが2人いた。
担任に言われるがままに面接みたいに椅子に座るとおっさんが自己紹介をしてくれた。
一人はなんと我が市の市長。 そういわれるとどこかで見たことがある気がしてきた。
もう一人は偉い医者の先生とのことだった。
始めに校長に今俺が知っていることを教えてほしいと言われた。
俺は今まであった出来事、細木の話の内容、ついでに松坂の受け売りだが細木は幻覚を見たんじゃないかって話をした。
すると医者と市長が俺の話に同意してくれた。受け売りの話だが。
医者の言うにはクラスメイトが立て続けに亡くなってクラスのみんなの精神が疲弊しているといった。 偶然が重なったからこっくりさんの話が信ぴょう性を持ってしまったが、呪いなんて存在しない。 と断言した。 今は心身ともに疲れているから明日からの土日はゆっくり休むように言われた。 その話を聞いて俺はなんだかすごくほっとした。 やっぱり偶然だったんだと安心できた。
市長は今回の事件はあまり大事にならないようにしてくれるといってくれた。 来年の受験に影響が出るといけないから、と気を使ってくれたようだった。
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クラス全員が呼び出しを終えるとクラスは少し明るくなった。
みんな医者や市長の話を聞いて安心できたのだろう。
でも細木だけは相変わらず暗かった。
松坂の言うには、実際に幻覚を見てんのにみんなにそれを否定されたんじゃ暗くもなる。 俺たちで支えてやらないとな。と言っていた。
本当に顔以外は完璧な松坂である。 松坂は帰る前に少し三人で話さないか、と提案してきた。 そういわれるとこの一週間では三人でまともに話す時間がなかったので折角だし少し話してから帰ろうということになった。
放課後、早く帰るようには言われていたが俺たちは教室に残ってお菓子を食べながら話をしていた。 お菓子は松坂がハッピーターンを大量に所持していたのを三人で食べた。 話の内容は全然部活に行ってなくてヤバいとか、アニメの話とか意識して明るい話をした。
でもそんな中細木は 「俺は間違いなく見た。幻覚ってあんなにはっきり見えるのか!?」 と事件の話を始めた。
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熱心に語る細木に俺と松坂はうんうんと相槌を打ちながら聞いていた。
そこで何か違和感を感じた。
教室には俺たちしかいないけれど、それでも静かすぎないか、 もう少し外の音が聞こえてもいいのではないか。 校舎にはまだたくさんの人がいるのに。
そう思って教室を見渡すと教室の真ん中にいつの間にか知らない女がいた。
あまりのショックに言葉が出なかった。 ただ「ああ、ああ・・・」 と情けない声が漏れていた。
すると松坂と細木も女に気付いたようだが二人とも固まっていた。
その女は白い服に黒いスカートをはいていた。 そして両目が異常に離れていて、腕が異常に長かった。 そしてぼーっとした表情でこっちを見つめていた。
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すぐにでも逃げ出したかったけれど恐怖で体が動かなかった。
細木と松坂も動けないようだった。
すると女が一歩こっちに踏み出した。
その瞬間松坂が大声で「逃げるぞ!!」と叫んだ。
松坂の声で体が動くようになり、俺は全力で窓を開けてベランダに出た。
松坂と細木がどうなったのか、振り向く余裕もなく俺は非常階段を目指して全力で走った。
亡くなるほど怖くて何も考えられずにただ走った。
そして非常階段まであと少しの所で左足を掴まれた感覚があった。 このままでは亡くなると思った。
かなり錯乱してたと思う。 これは非常階段に間に合わないと思ってそのままベランダの柵を飛び越えた。
ちなみに俺たちがいたのは3階だ。
このとき本当に「ああ、亡くなるんだな」って思った。
下を見ると丁度物置として使われているプレハブの屋根が見えた。 そこにうまく着地できれば、と思ったところで俺は気絶した。
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全身の激痛で目が覚めると俺は病院のベッドで寝ていた。
起き上がろうとしても痛いのと、なぜか体のあちこちがベッドに固定されていて全く動けなかった。 「だれかいませんか!」と叫んでみるとすぐに看護師さんが来て、医者を連れてきてくれた。 医者は俺のことを見ると体をベッドに固定していた器具を全部取ってくれた。 医者「ここは○○病院だ。君は何でここにいるのかわかるかい?」 俺「学校のベランダから飛び降りたからです。」 医者「自分から飛び降りたのかい?」 俺「はい。」 医者「自分の命を絶つつもりだった?」 俺「いえ、亡くなる気はありませんでした。」 医者「それならよかった。 きみは今首から背中にかけて強い打撲をしている。 それから左手の指の骨が親指以外全部折れている。 でも命に別状はないし、どちらもちゃんと治るよ。」
医者はそんな感じで俺の状態について説明してくれた。
そうしているうちに母親が泣きながら病室に入ってきた。 「よかったよかった」と言いながらボロ泣きだった。 すごく申し訳ない気持ちになっていた。 何と俺はベランダから飛び降りて5日も眠っていた。
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母親は俺が飛び降りたことについては触れなかった。
とにかく今はゆっくり休んでね、と言っていた。
状況がいまいちわからず困っていたが、ふと左足に違和感を感じた。 気になってみてみると左足の足首にしっかりと足を握るように手形がついていた。 手形が残っているというよりはリアルタイムで握られていると思った。
これは何とかしないとヤバいなと思っていると松坂がお見舞いに来た。 松坂は明らかにやつれていて顔色も悪かった。 松坂にはこの5日間の話を聞いた。
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まず教室で女が出た後の話だ。
松坂はあの後教室を飛び出し、職員室まで全力で走った。
松坂も後ろを振り向く余裕はなかったらしい。
職員室について、とにかく来てくれと先生方を教室まで連れて行った。
すると教室では細木が息をしていない状態で倒れていた。 女はどこにもいなかったらしい。 細木はすぐに救急車で運ばれたが病院で亡くなったが確認された。 自分の腕をありえないくらい口の中に突っ込んでいたらしい。
おれは物置の天井を突き破って物置の中に倒れていたところを部活中の生徒が発見したらしい。
おれはその後救急車で運ばれ、覚えていないが病院で一度目を覚ましたらしい。
その時はかなり錯乱していて自分の手を口の中に入れようとしていたらしいが、 鎮静剤を打たれてからはずっと眠っていたとのことだ。
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その後学校は臨時休校となった。
俺が飛び降りたのが金曜日の夕方で、月曜日には市長も参加して保護者説明会がクラスで行われたようだ。
学校ではイジメの事実はなかったこと、今回の事件は事故だったことを話したらしい。
また、今回の件は細木の両親の強い希望もあってあまり事を大きくしないようにするらしい。
細木に関して調査中の一点張り。 俺の飛び降りについても調査中とのことだった。 俺の母親が呪いについて質問したようだったが、学校側としてはオカルトな事情を挟むつもりはないとのことだった。
火曜日にはまた学校が再開されたらしいが俺たちのクラスはほとんどの生徒が休んだとのことだった。 そして火曜日の朝に担任が自宅で亡くなっているのが見つかった。 精神を病んでしまっていたらしい。自ら亡くなる事だそうだ。 そして今日、水曜日の午前、学校に担任の嫁が凸してきた。 教室まで侵入してきて泣きながら「あの人をかえしてよ!」と訴えたそうだ。 これが警察沙汰となって今日も早く家に帰されたとのこと。
聞きたくない情報ばかりで訳が分からなくて号泣した。
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その後俺は次の土曜日まで三日間入院することになった。
その間いろいろな人がお見舞いに来てくれた。
まずは父親。 俺の顔を見るなり「なぜ飛び降りたりしたんだ!!」と怒鳴られた。
俺は実際にあったことを詳しく話したが父親は信じていないようだった。 どうやら俺がいじめにあっていて、いじめっ子に口止めされていると考えているようだった。 最後には「母さんを泣かせるような真似は二度とするな!」と怒られた。
次に副担任と教頭。 当時の状況について聞かれたので、父親に話した内容と同じ内容を話した。 そのあと教頭が今の学校の状況を教えてくれた。 話の内容は大体松坂に聞いた通りだったが、 保護者説明会では俺の父親が怒鳴り散らしていたことをここで初めて聞いた。
そして警察の人と校長、教育委員会の人たち。 ここではイジメがなかったことの確認と、当時の状況説明が主なものだった。 俺たちが見た女が不審者なら事件だということだったが、 学校の出入り口のカメラには映っていなかったことを教えてくれた。 あと今回の件については大事にしない予定だから、あまり騒がないようにとのことだった。
そして細木の両親と弟。 「あの子の友達でいてくれてありがとう」と言われて号泣。 最後に細木のことをずっと忘れないでいてほしいと約束をした。 他にも友達や親族の人たちも来てくれたけどここでは省く。
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その後俺が入院している間に様々な情報が入ってきた。
俺たちのクラスは学級閉鎖になっていて、次の月曜日から再開する予定だということ。
クラスの女子の一人が精神的に崩壊してリスカした画像をメールで一斉送信したこと。 クラス内のメールのやり取りで女の幽霊を見たという情報が多数で回っているということ。 でもどの目撃情報も俺たちの見た女とは違っていたため、 松坂は嘘かそれっぽいものを見て勘違いしたのだろうと言っていた。 でも俺も松坂も実際に見てしまった以上、幻覚だとは言えなかった。 松坂は相手を霊的なものと仮定して、素人なりにできる限りの対策をしてみると言っていた。
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そんな中、女子の一人がお祓いをしてもらったという話が入ってきた。
結構な料金を出したらしいが、お祓いが終わると体が軽くなったと聞いた。
俺はまだ左足に手形が残っていて精神的にかなり参っていた。 お金の問題はともかく藁にもすがる思いで、その女子がお祓いをしたという神社に電話をした。 電話はつながったが、今はお祓いできないと言われてた。 女子のお祓いをしたすぐ後に住職がバイクで事故を起こして大けがをして入院中だと言っていた。 命に別状はないが、しばらくは動けないらしかった。
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土曜日になって俺は退院した。
まだ背中と首は痛かったし、左手も包帯ぐるぐる巻きだったが、
問題なく歩けるので学校に行っても大丈夫だろうと言われた。
久しぶりに家に帰り、ケータイを開くと最初に「呪いだ!」と言い出していたリア充からクラスメイト全員に 一斉メール送信が来ていた。
内容は儀式の詳しい内容についてだった。 ちなみにこのリア充は俺たちが女を見た日以降、一度も学校に来ていなかった。
儀式の詳しい内容は全部は書かないが、簡単にまとめると こっくりさんの亜種みたいな儀式。 こっくりさんと違う所は降霊術ではあるが呼び出すのは神様であること。 また、占いではなく、呼び出した神様に願いを叶えてもらう儀式だ。 まず神様を呼ぶ段階で、神様を呼び出す詩を読みながらお酒をふるまう。 そもあと願い事を言って、叶えてもらう代わりにこちらから代償を払う。 代償はなんでもいいらしいが、大切なものであればあるほど願いは叶いやすいとか。 そこで代償として今回出したのがなんと「委員長の魂」。 もともとふざけ半分だったし、上手くいくとは誰も思ってなかったらしい。
そしてこのリア充が懸けた願いは 「退屈しない刺激的な学校生活」
儀式が成功すると点けていたろうそくの火が消えるらしいのだが、 願いを言った瞬間、風もないのに火は消えたとの話だった。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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メールが来たあとは一斉送信祭状態だった。
リア充を激しく非難する声もあれば養護しようとする声、質問攻めする声、
かなりカオスな状態だった。
リア充の言い訳は、 「退屈しない刺激的な学校生活」というのは、 明るい青春のイベントがいっぱいあって、毎日が楽しい生活を想像していたらしい。
だが実際は最悪の形で刺激的な学校生活となってしまった。 メールの中では 願いを言ったリア充を中心として今回の事件が起きているなら、 このリア充がいなくなれば、みんな助かる。 という話が強くなっていた。 つまりリア充が転校するか消えるかすればみんな助かるみたいな話だった。 中にはリア充を擁護しようとする声もあったが、基本的にみんなリア充を責めていた。
そこである一人のクラスメイトが 「メールで話していても何も解決しない。 一度全員で集まらないか。」 と発言した。 それにはみんなが賛成して、翌日に学校に集まることになった。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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メールが落ち着いたころ、俺は松坂に連絡した。
なにか対策はできたかと聞いてみると、 調べれば調べるほど、素人の力ではどうしようもないと思えたため、 やはりその道のプロの誰かに除霊してもらうのが1番だと考えた。
両親とも協力して、手あたり次第除霊をやっていそうなところに電話をしたが、 ほとんどの所で断られてしまったという。 女子が除霊してもらった所の住職が大けがしたという情報が広まっていたためだ。
中には話だけでも聞いてくれるという所もあったが、 リア充の儀式のことを伝えると、ほぼ全滅だったようだ。
中には「任せてください」と言ったところもあったが、 費用があまりにも膨大すぎる上に、サギっぽいところだったからやめたと言う。 ただ、対策がないわけではない、と松坂は言った。 どういうことか聞いてみたが、明日みんなの前で話すとのことだった。
そのあととても不吉な話をされた。 なぜ、たくさんいるクラスメイトのなかで、金曜に俺たちの所に女が現れたのか。 おそらくだが細木が野球部の二人が落ちた時に女を見てしまったから、 細木のいる俺たちの所に現れたんじゃないかと。 もしも女が自分を最後に見た人の所に現れるなら、次は多分、 俺の所かお前の所に現れるんじゃないか。 松坂はそういった。
もちろん女がどんな原理で動いているのか分からない。 ただ金曜日から今日まで女とは関係ないところで、 担任がしんだり、担任の奥さんが学校に着たりと、 リア充にとって刺激的なことが続いていたから女は現れなかったんじゃないか、と。 そう考えると、リア充にとって刺激的な出来事が途絶えると、 俺たちの下に女が出てリア充に刺激を与えるんじゃないか、と。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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松坂の話はとても説得力があった。
それなら常にリア充に刺激的な出来事を体験させればいいんじゃないかと思ったが、 人がシぬレベルの刺激を与え続けるのは無理だろうと言われてしまった。 煮え切らない気持ちのまま松坂との電話を終え、その夜は自分なりに対策を考えてみた。
まず除霊はどこもかしこも断られてしまって、誰かにお願いすることはできない。 リア充に刺激を与え続けるのも現実的ではない。 一番手っ取り早いのはリア充が転校することだろう。 でもリア充はメールで転校はできないと言っていた。
リア充が俺たちのクラスに在籍している限りは女は現れるだろう。
だったらリア充が亡くなってしまえばいい。 あいつらの悪ふざけのせいで関係のない細木も担任もしんでしまったし、 おれも松坂も散々な目にあっている。 札されても仕方ないと思った。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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一睡もできないうちに日は登り、みんなで集まる日になった。
まだケガは全快していなかったので親の車で学校まで送ってもらった。 親は俺が心配だから学校の駐車場で話し合いが終わるまでずっと待っていると言ってくれた。
この日は教室ではなく、学校が会議室を貸してくれた。 学級閉鎖中だから本当は学校に来てはいけないのだが、校長が特別に許可をくれた。 会議室に行くとすでに結構な人数が集まっていて、みんなが俺のことを心配してくれた。
松坂ももう来ていて、ほかのクラスメイトと何か話していた。 話し合い中は何かあってはいけないと、会議室の前の廊下に先生が1人待機してくれるとのことだった。
そして約束の集合時間となり、話し合いが始まった。 この日はほとんどのクラスメイトが出席していたが、除霊を終えた女子は来ないとの話だった。 そしてリア充はまだ来ていなかった。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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話し合いはまとめ役として
みんなで集まろうと言った、生徒会役員とかやってる男子が司会進行をすることになった。
もちろん本名ではないが、ここでは高木と呼ぶことにします。
話し合いが始まってすぐに始まったのはリア充の愚痴大会だった。 「なんであいつ来てねーの?」 「元凶がさぼってんじゃ何にも始まらねえよ」 「てかあいつが亡くなってしまえば全部解決だろ?マジ亡くなってしまえばいいのに」 みたいな発言ばかりが飛び交っていた。
このままでは収拾がつかなくなると思ったのか、高木が叫んだ。 「今日集まってもらったのはほかでもない、 今後俺たちの身を守っていくために、どうしたらいいかを話し合うためだ! リア充が憎いのもわかるし、ただの悪ふざけのせいでクラスメイトや担任の命が失われたのは俺だって許せない。 だからと言って、リア充の文句を言っても事態は何も変わらない。 こんなふざけた事件が起こっている以上、今は解決策を模索しよう。」 話した内容は正直あまり覚えてないが、高木はこんな感じのことを言っていた。
すると一人の男子が手を挙げていった。 「ここにいるみんなでリア充を葬ってしまえば解決するだろ? みんなで口裏合わせてさ。」 するとクラスからは あいつは亡くなっても仕方ない。 これ以上犠牲が出る前に消すべき。 みたいにこの男子に共感する意見と、 どんなに憎くても、あやめてしまうのは絶対ダメ。 札さなくても転校、退学すれば済む話。 というリア充を擁護する意見が出てきた。
高木は 「たしかにリア充が消えれば解決する可能性は高い。 ただあいつをあやめてしまうというのは、あまりにリスクが高すぎる。 いくら口裏を合わせたところでどこかで必ずボロは出る。 一応解決策の一つとしては扱おうと思うけど、もう少し平和的な案を探してみよう。」 と、上手く場をまとめていた。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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他に出た意見としては、
学校側に頼み込んでリア充を退学させる。
みんなで除霊してくれる人を探して除霊してもらう。
リア充に刺激を与え続ける。
個々で女への対策を用意して自分の身は自分で守る。
などと言った意見が出た。
じゃあこの中のどれがいいだろうかと、高木が言ったところで松坂が立ち上がった。
「俺たちが見た女ってのは神様なんだろ? 何の神様かは知らないけど代償を払えば願いを叶えてくれるらしいし。 だったらもう一回女を呼び出して、 退屈で、平凡な学校生活をお願いすればいいんじゃないのか?」 といった。
- 1: 2019/08/09/Edit master
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クラスメイトはみんな「はあっ?」って感じで松坂を見ていた。
すると松坂はみんなに向かって話し始めた。
松坂の言い分をまとめると、
まずリア充をあやめてしまう案について。
高木の言った通り、ばれる可能性が高い。
ばれてしまえば受験はおろか、ここにいる人全員の人生がめちゃくちゃになる可能性が高い。
よって現実的ではない。
次にリア充を退学させる案。 学校に頼み込むのは難しいだろう。 実際に事件は起きてはいるが、こんなオカルトな理由で退学させるのは学校としても難しいだろう。 それならみんなでイジメて自ら退学させるほうが現実的。 しかし、リア充をイジメて退学まで追い込んでいる暇はない。 この調子でいくと今日明日にでも女が現れてまた犠牲者が出るだろう。 犠牲者が出てまた学級閉鎖となればイジメも進まない。 即効性のある対策が必要だ。
除霊してくれる人を探す案について。 もう当たれるところはすべて当たったつもりだが、ことごとく断られた。 その数200以上だとか。 今から探して仮に見つかったとしてもそのころには犠牲者が増えているだろう。 そして金がかかる。 すべての家庭の親が女の存在を信じているわけではないこともあり、 この方法でみんなが救われることはないだろう。
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リア充に刺激を与え続ける案について。
前に俺にも説明してくれた通り、物理的に難しいだろうとのこと。
どの程度の刺激があれば女が出現しないのかも分からない状態だ。
仮に刺激が「クラス関係者における、身近な人がシぬレベルの刺激」だったとしたら、
どう考えてもそんな刺激を与え続けることはできない。
最後に個々で対策をする案について。 この場に一人でも有効な対策を知っているやつがいるのか。 盛り塩でもするつもりか? 人を容易く消してしまうような神を相手に? おそらく何の修業もしてない高校生が抵抗したところで効き目はないだろう。
消去法でいけば退学させる案が一番だが、リア充が退学したところで実際に女が出なくなるかと言われれば、 そうとは言い切れない。 そもそもリア充を中心に事件が起こっているって話自体、仮説に過ぎない。 リア充の願いの中には、「自分にとって」というフレーズが入っていなかった以上、 「クラス全員にとって」刺激的な学校生活になっていてもおかしくないとのこと。 実際にクラスメイトの全員が最悪の刺激を受け続けているのも事実だった。
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それならどうすればいいのか。
それなら願い事事態をなかったことにしてもらえばいい。
もう一度女を呼び出して願い事をキャンセルすればいい。
これがうまくいけば平穏な学校生活が戻ってくるだろうということだった。
しかし、クラス内では「なるほど」と言う声もあれば「絶対に無理だ」 という声もあった。
高木が「どうやって呼び出すのか」と聞くと、 松坂は「みんなでもう一度儀式をする」と答えた。 「仮に儀式が成功したとして、女の神が来るとは限らない。 違う神を呼んでしまったらどうするのか」 という意見に対しては、 「その神に、女を追い払ってもらえるように頼む」と言っていた。 ここで俺も疑問に思ったことを聞いてみた。 「呼び出した神が女かそうじゃないか、どうやって判断するんだ?」 「それはお前が判断するんだ。」 と言われた。
正直戸惑ったが、思い当たる節はあった。 俺の左足に残る女の手形だ。 「お前はある意味、今あの女と繋がっている状態なんだと思う。 女が現れれば、おそらくその手形に何かしらの変化が現れると思う。 かなり不確かなものだけど、これが一番わかりやすいんじゃないか?」 正直自信はなかったが、この方法を実践するならやってみると答えた。
そんな感じで松坂が説明を行っていたとき、会議室のドアが開いた。 入ってきたのはリア充だった。
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リア充は今にも消えそうな声で
「遅れてごめん」と言っていた。
するとクラスのあちらこちらから罵声が飛んできた。 そして1人の男子生徒がリア充の前まで歩いていくと、グーで思いっきりリア充の顔面を殴った。 吹っ飛ばされて倒れたリア充に、またほかの男子が棒言を吐きながら何度も蹴りを喰らわせていた。 すぐに廊下から先生が飛び込んできて男子生徒を止めた。 リア充は何も言わずに嗚咽していた。 先生が「大丈夫か?」と言いながらリア充を立たせると、誰かが 「そいつにかける情なんていらねえよ」と言ったのをよく覚えている。
リア充は泣きながら「助けて」と言っていたが、 周りの生徒は 「助けてほしいのはこっちだ。」 「なに被害者面してんだよ、5人も消しておいて。」 なんてことを言っていた。
先生が「お前たちなあ!」と声を荒げたところで高木が 「先生、リア充が何か言いたいことがあるそうですよ!」 と叫んだ。
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リア充は先生の手を振りほどくと、会議室の真ん中にやってきた。
そのままボロボロと涙を流して口を開いてはいたが、言葉が出ないようだった。
その間も周りからは 「泣きたいのはこっちだっての」 「言いたいことがあるならさっさと言えよカス」 と心無い言葉が浴びせられていた。
俺はリア充を少しかわいそうだと思った。 それだけのことをしてしまったのは事実だもあるが。
リア充は膝をついて土下座をした。 泣きながら何度も「ごめんなさい」と謝っていた。
みんなをこんな目に合わせるつもりはなっかった。 ふざけ半分であんなことをしてしまったことを後悔している。
亡くなってしまったクラスメイトや担任に合わせる顔がない。 みたいなことを言っていた。
リア充を見る視線は相変わらず冷たかったが、女子の中には 「もういいよ、もうやっちゃったことなんだじゃら一緒に対策を考えよう」 というやつもいた。 俺はリア充のことを絶対に許すことができない。 でもこのときは悪気のなかったリア充に同情していた。
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結局なんやかんやでリア充を責めるのはやめて、話し合いが再開した。
先生にはもう大丈夫だと伝えて廊下に戻ってもらった。 話し合いとは言っても松坂の説明だ。
仮に儀式を行って女が来た場合、そう簡単に願いを取り下げてもらえるだろうかという話になった。 それに関しては松坂もただ「取り下げでお願いします」と言っても可能性は低いだろうと言っていた。 それならそれ相応の代償をまた払えばいい。女が納得できるだけのキャンセル料を出せばいいと松坂は言った。 神相手にそんな話が通じるだろうかとも思ったが、クラスメイトはみんな納得していた。 文章ではなかなか伝わらないと思うが、松坂の話にはなぜかすごい説得力があった。 話の内容はとてもオカルトだが、論理的な話し方、考え方をしているからだと思う。 クラスの空気はもうほぼ儀式をやる空気になっていた。
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しかしまだ一番重要な代償に何を出すのかが決まってなかった。
リア充が「俺の魂を払ってもいい」と言っていたが、松坂にあっさり断られていた。
仮にリア充の魂を代償にして平穏な生活が戻ったとしても、魂を取られたリア充が無事でいられるとは思えない。
そこでリア充が亡くなってしまったら、それはもう平穏な生活とは言えないだろう。
そうなれば神は平穏な学校生活という約束を守れなかったことになる。
そうなったときに何が起こるかは見当もつかないから、少なくとも今ここにいるクラスメイトは全員生き残った状態で卒業しなければならないとのことだ。
でも魂レベルに大切なものってのは難しい。 キャンセル料だから魂までいかなくてもいいんじゃないか、と松坂は言っていたが、 同時に確実性をあげるなら大事なものに越したことはないとも言っていた。 そこで松坂はとんでもない提案をした。
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松坂の案は、
100年分の寿命をクラスみんなで割り勘して、代償を払おうということだった。
なんとなく松坂の言いたいことは伝わるが、いまいちピンとこない。
松坂の案は、 この場にいるクラスメイト31人で、一人3年ずつ寿命を差し出す。 でもリア充が多く代償を払ったほうがみんな納得できるだろうから、 リア充だけ差し出す寿命は10年。
30人で90年と、リア充で10年。
俺たちの寿命合計100年を代償として払う。
寿命は魂に比べればランクが落ちるかもしれないが、キャンセル料としては十分なんじゃないか、 と松坂は言った。
たとえば俺が100歳まで生きる予定だったが、実際は97歳で亡くなる。 そういわれるとなかなか良い案だと思った。
これが成功すれば、ほぼ間違いなく卒業まではこれ以上犠牲を出さずに過ごせるだろう。 また、高校生の俺たちにとって老後の三年なんて想像できなかったこともあり、 クラスの全員がこの案にのった。
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そうと決まれば早速儀式の準備を俺たちは始めた。
クラスの女子に酒屋の娘がいたため、飛び切りの酒を用意するように指示。 高木を含む男子数名で儀式に必要な蝋燭、チャッカマンの買い出し。 他の残ったメンバーはリア充の指示の下、儀式に必要な特殊な五十音表を作る事となった。
準備が整い次第、会議室で儀式を行うことに決まった。
一度クラスはバラバラに別れ、各自で準備を行った。 俺は会議室に残って五十音表の作成を見ていた。 手伝おうとも思ったが、左手がほとんど使えないため近くの椅子に座って眺めていた。
俺がぼんやり作業を眺めていると、俺の左足首に激痛が走った。 思わず「ウッ」っと言って足を見ると真っ白い手が椅子の下から伸びていて、 俺の左足首をしっかりと掴んでいるのが見えた。
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俺は恐怖で後ろを振り向くことはできなかったが、間違いなく俺の後ろには女がいた。
恐怖のあまり声が出ずに「うあ・・う・・」みたいに口をパクパクさせていると、 女子の一人が俺のほうを見て悲鳴を上げた。
その悲鳴からクラスはパニックに陥っていた。 俺は後ろを振り返ることもできずに、混乱するクラスメイト達を見ているしかなかった。
逃げようとする者もいれば、腰を抜かして倒れこむもの、 松坂ですらどうしていいのかわからずに固まっていた。
そんな中で一際大きい女子の声がはっきりと聞こえた。 「あんたなんか大っ嫌いだ!!亡くなってしまえ!!」 その女子はそういってリア充をグーで思いっきり殴った。
一瞬場が固まった。 リア充を殴ったのは陰キャラのメガネ女子。 普段静かで声が小さい彼女の突然の行動に唖然とした。 リア充が口を開いて何か言おうとしたが、 言葉を発する前に「うるせえ!!」ともう一発殴られた。
空気が凍り付く会議室、女はいつの間にか消えていた。
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これがリア充にとっての刺激ととられたのか、クラス全員にとっての刺激ととられたのかは分からない。
しかしこの女子の行動がみんなに刺激を与えたことで、女が消えたことは明白だった。
混乱してみんな固まっている中、松坂は 「準備急げ!!」と叫んだ。
そこから10分と経たないうちに外出していたクラスメイトは全員戻り、即儀式が行われることとなった。 儀式に参加するのはリア充、松坂、高木、俺だった。 他のメンバーは同じ会議室内で待機してもらっていた。
リア充が主体となって儀式を行う。 松坂と俺は女との繋がりが強いだろうということで抜擢された。 繋がりの強い俺たちが参加すれば女を呼び出せる可能性が上がるかもしれないからだ。 高木は数合わせ。
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そして儀式がはじまった。
用意したろうそくに火を点ける。 リア充が酒をささげながら、女を呼ぶための詩をうたう。 女がくるまで同じフレーズの詩をうたいつづける。
しかし俺の左足には何の変化も感じられない。 10分くらい経過したころ、突然場の空気が重くなるのを感じた。 これは俺だけでなく、その場にいた全員が感じたらしく、全員が俺のほうを見た。
しかし左足には何の変化もない。 そもそも女が来たところで俺の足に変化があるのかどうかもわからないが、 この場に人ではない何かがいることはみんな感じていた。 おれはみんなに向かって「女かどうかわからない」と伝えた。
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しかし、来たのが女であっても違う神であっても願うのは「平凡な学校生活」だけだ。
もともとそういう手筈だったため、みんな動揺することなく儀式は進んだ。 リア充が「平凡な学校生活」を願い、代償として 「リア充の寿命10年分とこの場にいる30人の寿命を3年ずつ、合計100年分の寿命」 をささげた。
儀式が成功ならろうそくの火が消えるはずだ。
しかし蝋燭は火が付いたまま折れてしまった。
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一体なにが起こったのか、なぜ風もないのに蝋燭が折れてしまったのか。
様々な考えが頭をよぎったが、とてもまとまらなかった。
まとまる前に凄まじい悲鳴と共に、会議室の中心に女が現れた。 しかし今までとは様子が違った。 頭から身体からの赤い液体を流しており、服もところどころ赤く染まっていた。
女は「ぎゃあああああああああ」と叫びながら異常に長い手をバタバタさせていた。 真っ赤にした目を見開いて叫ぶ様は今でも時々夢に見る。
女はバタバタともがいていると思ったら、まるで今までそこに床がなかったかのように、 床をすり抜けて落ちて行った。 文章だと伝わりにくいと思うけど床に吸い込まれるように落ちて行った。
気付くと、折れても燃え続けていた蝋燭の火は消えていた。 どうやら儀式は成功したようだった。
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ここからは後日談です。
この後、除霊できたのか確証が持てなかった俺たちは市内でもかなり大きい神社に向かった。 神主に今回の一件を話したところ、いくつかの疑問が解決した。
まず最初にリア充が呼び出した女について。 俺たちはてっきり神様だと思っていたが、話を聞く限りでは神ではなく強力な悪霊だったんじゃないかと言われた。 魂まで取ったところ、おそらくだが神になりたい悪霊だったのではないかと。 神ではなくても、神としてリア充の願いを叶えようとした。 しかし当然神ではないから使える力は限られている。 その結果、悪霊にできる範囲で刺激を与える結果が周囲の人の4だったのだろう。
おそらくだがクラスメイト全員での儀式では正当な神様を呼ぶことができたのだろう。 素人にはなかなか難しいらしいが、きっと酒がよかったからうまくいったのではないか。 呼び出された正当な神が、神になりすましている悪霊をみて地獄に叩き落したのだろう。 蝋燭が折れたのは悪霊が抵抗したから。 それでもみんなの願いは叶えられたから火は消えたのだろう。
神主の話はこんな感じだった。 あくまでも今回の1件を無理やり解説するとしたら、ということだった。
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この後俺たちは平凡な学校生活を過ごし、卒業した。
リア充は周りからの目は冷たかったが、松坂が 「1件でもイジメがあれば平凡な学校生活とは言いがたくなってしまうかもしれない」 と言ったことで、特別イジメられることはなかった。
松坂はというと、科学部の部長のくせに今回の1件を受けて神道の道へと進んでいった。 除霊の電話をしまくったときに、誰も助けてくれなかったのが堪えたらしい。 「俺は助けてほしいやつに手を差し伸べてやりたい」とカッコいいことを言っていた。
俺は高校卒業後、短大へ進学。短大卒業後は市の臨時職員として働いている。 当たり前の、平凡な社会人生活を送っている。
松坂とはあまり連絡は取っていないが、先週に細木の墓に行ったときに松坂と再開し、 今回のことを振り返った。
そこでこのスレを建てようと思ったわけです。
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この1件で失ったものはあまりに大きかったです。
でも亡くなっていったクラスメイト、担任の分も、三年短い寿命ではありますが精一杯生きていこうと思います。
最後まで見てくれた方、ありがとうございました。
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恐怖にかられて、新たに命を捧げることに抵抗のないクラスメイト
なかなかおぞましい集団心理だ
ムラ社会はまだまだ続くんだな