本当は怖いしきたり「面掛行列」 : ザ・ミステリー体験

1: 20xx/ﾐｽﾃﾘｰ master: 管理人です。

私達の住む日本には古来から受け継がれてきた様々な文化やしきたりがあります。

四季折々の風物詩や習わしなど実に多くの行事を長い年月繰り返し行ってきました。
その行事や風習・歌や言い伝えの中には、私達日本人が古来より大事にしてきたしきたりに隠された陰の歴史や忌まわしい、または、怨念が込められたエピソードが込められているようです。

このお話を読んで頂いた後には、ふとした瞬間に、いつもの日常とは違う何かが垣間見えてくるのではないでしょうか。

それでは、不思議で怖いお話を御覧下さい。

1: 20xx/ﾐｽﾃﾘｰ master: 今回は『面掛行列』という奇妙な祭りについてである。

毎年、９月１８日に、神奈川県鎌倉市にある御霊神社では一風変わった祭りが行われている。

神社の境内では、まず舞を神に奉納する儀式から始まり天狗に扮した人々が踊りを披露し、笛太鼓による雅楽が演奏される。

そうして陣笠を身にまとった露払いと、先導役の天狗を先頭に１０人仮面を被った者たちが現れる。

さらに、爺と呼ばれる一番面、続いて鬼が出てくる。

それから、異形、鼻長、とその呼び名通りの奇妙な面を付けた者たちが次々と現れる。五番目は烏天狗、六番目は翁だ。

七番目は火吹男で「ひょっとこ」と読む。

これらは、日本の祭礼や雅楽などで、古代から道化としての役割を担ってきた存在である。八番目としては、七福神のひとつ福禄寿が練り歩く

九番目には、大きなお腹をしたおかめが登場する。
このおかめは、子を宿しており、それに付き添う形で歩く十番目の産婆役が登場する。

これが、神奈川県の無形民俗文化財でもある、『面掛行列』である。

１０人の被る仮面はどれも不気味な造りで、その表情は奇妙で生々しい印象が強く怖さを覚えるほどだ。

中でもとりわけ、おかめについては大きなお腹で薄ら笑いをたたえながらも、どこか底知れない怖さを放っている。

妊婦は「はらみっと」＝孕み女とも呼ばれ、祭り自体にも「はらみっと行列」と称されるものもある。

その、根源となる祭りの由来は遡る事、鎌倉時代。

鎌倉幕府を開いた源頼朝は、被差別階級であった村人のリーダーの娘を寵愛したという。結果、その娘は頼朝の子を宿してしまう。

これを詫びるため、頼朝は被差別階級の人々に年に一度の祭りを許可し、無礼講として「はらみっと」祭りが生まれたという。

しかし当時は、差別意識の強かった為どんな理由があるにせよ、階級の低いものが世間に表立って堂々と顔を見せ祭りを行うことはタブーであった。

そこで、已むえなく仮面を付けるようになった。。。
このような言い伝えから別名『非人行列』とも云われていたという。

しかし、時を重ね時代が進むと、やがては豊穣や子宝を祈願する祭りへと変化していった。今では、おかめのお腹をさわると安産に恵まれご利益があるとされている。

これらの１０の仮面は明和５年（１７６８年）という銘がある。

３００年近い歴史持つと云われる仮面にはその長い期間に受けた差別に対する様々な辛く厳しい、そして悲しい思いが怨念となって仮面に取り憑き、仮面がその怨念を受け、より一層と不気味で奇妙なものへと風貌を遂げたものなのであろう。

長い長い時を超えて、積み重ねられてきた過去からの辛く苦しい思いがその仮面の中には今も息づいているのかもしれない。

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