bandicam 2018-08-21 14-29-51-919


1: 20xx/ミステリー master
ウチの爺さんのオヤジだか爺さんだか、つまり俺のひい爺さんだかひいひい爺さんだか、 ちょっとはっきりしないんだけど、そのあたりの人が体験したっていう話。
自分が子供のころ、爺さんから聞いた話。

もう爺さんも亡くなってて、事実関係とか調べようもないんだけど。
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仮にそのひいひい爺さんをGさんとしておく。

Gさんはある関西の地方都市の人で、今で言う市役所の戸籍係みたいな、そういう仕事をずっとしてたらしいのね。
当時は市じゃなくて、町だか村だかかもしれないし、県庁とかの役所なのかもしれないけど、 俺には詳しいことはわからない。

ともかく、Gさんは戸籍係みたいな仕事で、仕事柄、町のいろんな人の名前を目にすることができる立場だったらしい。 で、当時まだ大正時代だかそんくらいで、昔の身分制度の名残りみたいなのが、名前にけっこう残ってたらしいのね。

士族だったらこういう苗字が多いとか、下の名前もこういうのが多いとか。 平民階級でも、やれこの苗字は農民出身だの、この苗字はたぶん染物屋だの、 この苗字はたぶん金貸しの血筋だのって。

まあ、はずれることもあるんだろうけど、なんとなく傾向みたいなのはあったみたい。
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で、まあ予想つくかもしれないけど、 そういう名前の特徴がわりとはっきり出ちゃうのは、用語で言うとBの人。 いわゆる被差別B落ね。

当時はもう平民扱いではあるんだけど、やっぱいろいろあったみたいで、 苗字もそれとわかる、変なの名乗らされてる場合もあったみたい。

もちろん、自分がそういうのであることを隠すために、普通に田中とか佐藤とかって場合もあるみたいだけど。 Gさんの町では、やっぱり関西だからなのか、一部それとわかる苗字の人たちってのが、何種類かいたらしいのね。

こう、仕事がそういうアレの人たちのやりそうな仕事で、その仕事に関係ありそうな苗字だったりしたみたい。
つっても、この話を聞いたとき自分も子供だったから、詳しくどうっていうのは覚えてないんだけど、 爺さんもそのへんぼかして話してた気がするし。
1: 20xx/ミステリー master
で、話もどすと、 Gさんはあるとき、町に何軒か、ある珍しい苗字の一族がいることに気づいたのね。

これがさ、苗字からすると、士族とか商人とか農民っぽくない、 強いて言えば、神主とかそういう家系っぽい感じの名前。

これは民俗学とかかじるとよく目にする話題だけど、 昔コジキ坊主とか、お払い屋とか拝み屋とか、そういうのをやるBの人ってのは多かったらしい。

江戸時代からそういう風習があるみたい。
まあ、土地持ってる農民とは違うから、土地を離れて流浪の、お祓いの押し売りみたいな感じなのかな。
で、Gさんが見つけた一族ってのも、いかにもそういう仕事やってそうな名前なわけね。
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ただもちろん、近代化された後の話だから、浮浪者ってわけじゃなくて、ちゃんと戸籍があるし住所もある。 ただ、どうも不自然なことがふたつあるの。

ひとつは住所。
どうやら一族はみんな血が繋がってるらしいのに、(珍しい苗字だし、偶然同じ苗字ってことはなさそう) 住んでるところはえらく離れてる。

離れてるって言うよりか、離してあるって感じに。 町の中心的な大通りと、町の外との境目にあたるような、住所にちらばってるのよ。

なんていうのかな、町の『入り口』みたいな場所があるじゃん。
昔からあるでっかい道路とかが、町を何箇所か貫いていくとして、 その道路と市街地が接点になるような場所っていうか、円と直径の交点みたいな。

そういう場所が町に何箇所かあるんだけど、そこにそれぞれ住んでる。
ちょうど『門番』って感じに住んでるのよ。
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それでね、もう一つ不審なことっていうのは、この一族が、とにかくみんな若いうちに亡くなるのよ。
今よりも4亡率がずっと高い時代なんだろうけど、それでも普通に考えてありえないくらいに、新生児の亡くなる率が多い。

10人とか産んで、全部2~3年で亡くなるとかそんな感じ。 単に貧乏で衛生事情が悪いとか、そういうのかもしれないけど、 町のどの部分に住んでるのも、一族みんなとにかく亡くなる。

世帯主30歳くらいで、それも病4とか。
そもそもこの4亡届けの多さで、 「この苗字の人はよく亡くなるなあ」って、Gさんが気づいたのが話の発端らしいんだけど。
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それでGさんは最初、何か犯罪があるんじゃないかと思ったんだって。子供をあやめいるとか。 そういうことを疑うこと自体、Bに対する偏見だったってことに、あとで気づかされるんだけど。

たださ、Gさんがいくら怪しいと考えても、誰に相談するべきかわからないじゃない。 一応他人の戸籍とか住所の話だし、仕事中に勝手に調べて怪しいと思いましたってのも、 今よりもプライバシーとか気にしない時代とはいえ、ちょっとどうかと思って、 誰にいうでもなく、何年かはそのまま放置してた。
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でもね、同じ月に同じ家の家族が、立て続けに(何日かおきに)3人くらい亡くなった事があって、 さすがに怪しいと思ったんだって。

で、じゃあとりあえずこの目で見てこようと。

その住所の家を見てきて、何かおかしなヤツが出入りしてるとか、そういう感じだったら、警察にいってみようと。
そう考えて、休みの日にその家までいってみることにした。

それは夏の初めのすごく暑い日で、自宅を出てすぐのときは、 こんな暑い日にわざわざ行くんじゃなかった。何をやってるんだ俺は。

と思いながらも、歩いていったんだって。 車とかは、金持ちじゃないとなかなか持ってないしね。地方公務員じゃ、徒歩しかなかったんだろうと思う。

ところがね、その該当する家のすぐ近くまで行くと、暑さも和らいできて、ああちょうどよかったって。
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と思ってたら、そんな生易しいもんじゃないのね。
その家のすぐ近くまでいったら、なぜかすっごい寒いの。
暑いのに寒いのね。

炎天下で、明らかに日のあたるところを歩いてて、肌は太陽の光を感じるんだけど、 でも寒くてなぜか震えるんだって。

「熱い風呂にいきなり入って、サブイボでるときあるやろ。あれやろうな」って。

これはGさんじゃなくて、爺さんの解説だから当てにならないけど。
それで、どの家がその住所の家なのかも、探すまでもなかったって。

まあ、さっきも言ったように、大通りに面した町の一番ハズレだから、みりゃわかるんだろうけど、 それ以上に、調べるまでもないくらいに、『ここに近づいちゃいけない』って感じがするんだって。

ここには何かよくないモノがいる、って感じ
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それでも、もう何かに取り付かれたように、その家の庭が見えるところまでいったんだって。 家自体もオンボロの古い家だったんだけど、庭も雑草で荒れ放題なのね。

ただ、貧乏って感じはするんだけど、何か犯罪が行われてるって感じではない。
別に4臭とかするわけでもないのね。

ただ、何かすごくイヤな感じがするし、寒気がするのよ。 おかしいな?こんなにいい天気なのになんで寒いんだろ?って思って、何気なく家の屋根の上をみたらね。

小さい黒いサルみたいなのが、視界の隅にいるのね。
で、あっと思って、そっちをみたらもういないの。

それでGさんは、なんとなく直感的にまず考えたわけ。 この家は何かに憑かれてて、それであんなに4人が出るんだと。

じゃあ、他の場所にある同じ苗字の一族も、みんな何かに憑かれてるのか?一族まるごと呪われてるのか? と思ったわけよ。
それはそれでおかしな話だし、何かフに落ちないわな。
そこで、そこまでの経緯を、信頼できる上司に相談することに決めたんだって。
1: 20xx/ミステリー master
それで上司に報告して、黒いサルみたいなのを見たことまで、正直にいったのよ。
そしたら上司が深刻な顔をして、「おまえ、それ他に誰にもいうなよ」みたいなことを言うんだって。

上司に「何か知っているんですか」って問いただしたんだけど、最初はシラをきろうとするんだって。 でも食い下がって、一体なんなのかってしつこく問いただしたら、上司は覚悟を決めて教えてくれたらしい。

「それは○○(町の名前)のニエや」って。

つまりその一族は、町に邪悪な何かとか祟り神とかが入ってきたときに、 わざと取り憑かせて、町を守るための生贄だってことらしいのね。
だから、町の入り口みたいなところに住まわせてあるんだって。

室町だか江戸だか知らないけど、かなり昔からこの町は、そういう役目を被差別Bの人にさせてたらしいのね。
ただ、その一族の人は、それをやらされてるとは知らないみたいなんだって。

何か気づいてるのかもしれないけど、 とにかく建前上は、別の理由でそこに住まわせていて、場合によっては本人たちも気づいてない。

でも気づいてないけど、4人が出たり事故や病気になったりすることは、ほかの家よりもずっと多いと。
1: 20xx/ミステリー master
町によっては、Bに押し付けるとは限らなくて、 何か悪いことをした家とか、お家騒動があった名家とか、町に後から来たよそ者とかに、 そういう役目を押し付けて、ヤバイ場所に住まわせるってことをするんだって。

もちろん本人には教えないで。

「今でもそんなんをやっとるところもあるやろから、引っ越しするときは気ィつけなあかんで」

って、 そういう教訓めいた話として、爺さんはこの話を結んだ。
それで、一人暮らし始めるときとか、知らない街の不動産屋さんに、 なぜか一軒を執拗に勧められるときは、怪しんだほうがイイみたい。

自分がニエを押し付けられてるかもしれないよ。


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