bandicam 2018-08-16 17-33-33-238


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──ある日を境に、高山さんは変わった。

争いの後間もなく開院し、現在では特に心臓手術について定評のある鏡尾病院。 私たちは看護師としてそこに勤めている。 経験が豊富であれば当然技術レベルは向上する。

確かにこの病院は他の追随を許さない程の数、心臓手術をこなしてきた。 でもそれが全て成功するわけは無いし、術後にトラブルが発生した事例も一定の頻度では存在する。
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たくさんの手術を行い多くの命を救ってきたという事は、それに比例してその病院で亡くなった患者も多数に上るという事に他ならない。

それらの中で特にレアケースだった例として、突発性の心疾患で運び込まれた患者の胸を開けると内臓逆位だったという話を聞いた事がある。

心臓も他の臓器も、鏡に映したように左右逆の配置・形状だったのだ。 そういった症例の患者を診た事の無い医師は思うように施術を進める事もできず、残念ながらその患者さんは亡くなってしまったという。

病院名に『鏡』とつくのに鏡映しの命を救えなかったとは皮肉な話だ。

しかし今の私はそれとはまた別の『鏡』に悩まされていた。
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私たち女性の看護師の内で独身の者の一部は、その病院の福利施設である女子寮に住まっていた。
『ねえ、やっぱりチーフの時も鏡に落書きがあったって』

今日の夕方、同じシフト上がりだった吉沢さんは私の部屋で雑誌を読みながらそう言った。
『やめてよ、このあとお互い一人で寝るんだから』

『ごめん、どうしても考えちゃうんだよ』

築20年が迫るお世辞にも綺麗とは言い難い寮。 噂によればこの施設を新築する頃、同時に改築された病院の北棟から発生した廃材を多数再利用しているという。 確かにこの寮には目に見える範囲でもいくつか建物の年代にも増して古いと思われる構造物があった。

例えば廊下の電灯、食堂のシンク、そして吉沢さんが口にした『共同洗面所の鏡』もそのひとつだった。

吉沢さんが自室に戻ったあと独りきりになった私は、それらの会話とここ最近の出来事を思い出して得体の知れない恐怖に襲われていた。
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2ヶ月ほど前の夜、同僚の金切り声が廊下に響いた。

何人かが慌てて駆けつけてみると、声の主は鏡の前に屈み込み震えていた。 そして鏡を見ると、そこにはまるで皿を指でひいたかのような文字でこう書いてあった。

《助けて そこにいる私は偽者です》

皆、その文字を読み取るに多少の時間を要した。
なぜならそれは字の向きも並びも左右反対だったからだ。 あまりの不気味さに誰も言葉を発する事ができない中、一人だけ前に歩み出る者がいた。

『馬鹿馬鹿しい悪戯ね……「私」って誰の事よ』

彼女こそ『高山』さんだった。 美人というタイプではないけれど、おっとりとした性格とそれに見合った可愛らしい容姿で誰からも好かれる人だった。

高山さんは洗面台に備え付けられた化粧落としのシートを2枚引き出し、それで鏡を拭こうとした。

『つまらない事で大声なんか上げないで頂戴』
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屈み込む同僚にそう吐き捨てた高山さんの声や表情は、今まで誰も見たことのないものだった。

そう、それはまるで──

『あら? ちっとも落ちないわ、どうしたのかしら』

『ねえ……これ、鏡のガラス内面に書かれてるんじゃ……』

『ふん、手の込んだ悪戯ね』

──正反対の性格をした別人のように感じられた。

それから今までの間に4回も同じような出来事があった。 鏡に現れる悪戯、裏面から書いたとしか思えない皿糊の文字。 でも鏡というものは、ガラス板の裏側に不透明なメッキを施して作られている。

つまり表から透けて見える落書きは、誰も触れないはずの境界面に書き込まれている事になる。 そしてその文字は誰も見ていない内に消え去ってしまうのだ。
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度重なる人の仕業と思えない悪戯に怯え、鏡を撤去しようと言い出す者もいた。

しかし鏡はコンクリートの壁に埋め込むように施工されていて、業者でなければ外す事は叶いそうになかった。

2度目の悪戯の時、『益田』さんがおかしくなった。
3度目には後輩の『谷』ちゃんの雰囲気が変わった。
4度目の時は皆が怖がっていた『金森』チーフが、別人のように優しくなった。
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そしてそれらの人には、ある共通した変化が現れていた。

『あの、チーフ……ここの字が違います』

『あらごめんなさい。嫌だわ、歳かしらねぇ』

字が下手に、不正確になっている。 そして幼稚園児のように箸の使い方が不器用になっている。 それはまるで『慣れない左手』でその動作を行っているかのようだった。 もう随分前から私の中には、ある仮説が立っていた。

もしかして、変わってしまった人たちは──

「──そんなわけない、か」 わざと声に出して仮説を否定する。 あくまで恐怖を紛らわせただけと解っていても、そうしなければならなかった。

何故ならこれから就寝する私は、その洗面所に向かうつもりだったから。 だって冷静に考えれば有り得ないようなオカルト仮説なのに、その馬鹿げた恐怖に縛られて歯も磨かず髪も梳かずに寝るなんて嫌だった。
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できるだけいつもと同じ動作と心持ちで部屋のドアを開ける。 少し薄暗い廊下を歩き、洗面所を目指す。 途中、いくつもの個室の前を過ぎ、中から聞こえるTVの音に少しだけホッとした。

吉沢さんの部屋の前、影山さん、矢吹さん……その次が谷ちゃんの部屋。

彼女は少し暗い性格の地味な子だったのに、今はやけによく喋るようになった。 藤崎さんの部屋を過ぎ、小島さんの部屋を過ぎた……

その次が──

「こんばんは」

──心臓が止まりそうになったけれど、声を上げる事はなんとか堪えた。 目を遣っていた扉が突然開いたのだ。 そこから現れたのは部屋の主、最初に変わってしまった高山さんだった。
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「……こんばんは、こんな時間からお出かけ?」

「ええ、今日は準夜勤だったから。もう食事もコンビニ物で済ませようと思って」

「それはお疲れ様、いってらっしゃい」

努めて自然に言葉を交わし、彼女の前を通り過ぎる。
彼女もこちらに背中を向けた……そう思った時、高山さんは思わぬ言葉を発した。

「今夜は鏡に何事も無ければいいわね」

「どういう意味?」

「別に、あと一度だけ悪戯が起きそうだと思ったのよ」
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なんの根拠があっての発言かは解らなかった。 ましてや彼女は最初の悪戯の日、それを馬鹿馬鹿しいと言い放った人だ。

「気にしないで。おやすみなさい『天田』さん」

「……おやすみ」

疑念は解けなかったけれど、私は気にするのをやめた。 真意の掴めない言葉に少し気分を害した私からは、幸いにも恐怖心が失せていた。 たぶん今の私は不貞腐れたような顔をしているだろう。

口を尖らせて、眉間に少し皺を寄せていると思う。

わざわざまた弱気な顔に戻る必要はない。 私は敢えて表情を変えもせず、そのまま例の鏡に向き合った。

そこに映る私は、笑っていた。

その時、私は理解した。 鏡映しで正反対、鏡映しで対称形。

さっき高山さんが言った あと一度だけの悪戯、変わってしまう最後の一人は──



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引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1186053286/