bandicam 2017-07-11 05-44-39-182

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(´・_ゝ・`)「──こっくりさんこっくりさん、おいでください。来たら返事をお願いします」

時刻は午後7時前、場所はVIP大学のとある研究室。 そこで、私と先生、それともう1人を入れた計3人で机を囲んでいた。 机の上には一枚の紙。

紙に書かれているのは50音表と数字、「はい」「いいえ」、「男」「女」、そして鳥居のマーク。 その鳥居の上に乗せた10円玉に、私達は人差し指を置いていた。

こっくりさん。

怪談ではよく聞くけど、実際に自分がやったことはなかった。 私は、向かいにいる男性に目をやった。

(;-д- )「……」

私の視線に気付いた彼が、目を閉じ、首を横に振る。
諦めて先生の好きにさせよう──という、声にならない返事が聞こえてくるようだった。 彼からは、私と似たニオイがする。
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('、`;川「……ねえ、全然来ないんだけど」

(´・_ゝ・`)「そうだね」

こっくりさんを開始して、かれこれ15分。 10円玉は鳥居から動こうとしない。 もう諦めればいいのに、先生は、ずっと真剣な顔で10円玉を見つめている。

(;゚д゚ )「そもそも、何で急にこっくりさんなんですか」

(´・_ゝ・`)「前に、学生がこっくりさんをやって怖い目に遭ったらしい。 羨ましいから僕もやりたくなったんだ。  ……こっくりさんこっくりさん──」

もう何度目になるのか、数えるのも億劫な呼び掛け。 それを先生が言い終えるか言い終えないかというとき──

('、`;川「……わ!」

(;゚д゚ )「あ」

10円玉が、「はい」の方へ動き出した。
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さて。 なぜ私がVIP大学にいるのか、なぜ先生達とこっくりさんをしているのか、 この、もう1人の男性が誰なのか。

先に、そこを軽く説明しておかなければなるまい。


第十一夜『可哀想なこっくりさん』
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まず、前回の件により、あのファミリーレストランを辞めた私が 新たにパン屋のバイトを始めたということを知ってほしい。

ファミリーレストランで働いていると、どうにもミセリさんのことを考えて暗い気分になってしまうからだ。

で。そのパン屋で働いていて、夕方になり、 バイトが終わる寸前に先生が来店したときはもう笑うしかなかった。

(´・_ゝ・`)『うわ、伊藤君だ』

1人で食べるには少し多く感じられる量のパンを買って、先生は、何時上がりなのか訊ねてきた。 間の悪いことに、そこへ店長が「そろそろ上がっていいよ」などと声をかけてきたのである。

あとはお決まりのコース。 店から出てきた私は先生の車に乗せられた。

勿論そのまま素直に私の家に行く筈もなく。 真っ直ぐ大学へ向かった先生により、私は彼の研究室に引っ張り込まれたのであった。
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研究室には、1人の男子学生がいた。

( ゚д゚ )『どちら様です?』

(´・_ゝ・`)『知り合いの伊藤君。20歳のフリーター。  ──はい、本持ってきたよ。ついでにパン屋寄ってきた』

( ゚д゚ )『あ。すいません、わざわざ』

男子学生の名前は、ミルナといった。 先生のゼミに所属している、VIP大学の4年生とか何とか。 卒論の相談をするために来ていたのだという。

先生とミルナさんが、私にはよく分からない小難しい会話を交わす。 私は部屋の隅に行き、母に電話をかけ、 帰りが遅くなりそうな旨を伝えて通話を切った。 手持ち無沙汰に感じ、本棚を眺める。

先生が書いたと思われる経済学の本が何冊かあって、改めて先生は「先生」なのだなと思った。
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(´・_ゝ・`)『──あとは自分で調べなさい』

( ゚д゚ )『はい。ありがとうございました』

(´・_ゝ・`)『うん……それじゃあ、』

ふと振り返る。 先生のものらしい事務机があった。 大量の本とファイルが積まれた上に、一枚の紙が乗っている。 私は何気なく紙を拾い上げた。

(´・_ゝ・`)『こっくりさんでもやろうか』

50音が書かれた紙と、先生のその言葉で、私はここに連れてこられた理由を知った。 そして冒頭へ。
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('、`;川「動いた! 先生動いた!」

ついに動いた10円玉。 「はい」へ移動し、そして、鳥居へ戻る。

(´・_ゝ・`)「君達、誰も動かしてないよね?」

('、`;川「動かしてない」

(;゚д゚ )「同じく」


10円玉を自分で動かそうとすれば、力が篭ることで指先が白くなると思う。 けれど、私達の指に変化はなかった。 寧ろ私などは、気味が悪くて、軽く置く程度にしか触れていない。 先生は私とミルナさんを見てから、手元に視線を落とした。
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(´・_ゝ・`)「本当にこっくりさん?」

間をおいて、10円玉が動く。

〈はい〉

ミルナさんが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。 私も似たような表情になっていたかもしれない。

(´・_ゝ・`)「こっくりさんの性別は?」

10円玉は「男」と答えてから、反対側にある「女」も指した。 先生が首を傾げる。 どういう意味、と先生が訊ねても、今度は鳥居から動かなかった。

('、`;川「こ、これ、本当なの? 本当に来てるの?」

(´・_ゝ・`)「さあね」

先生は、こっくりさんにどんどん質問していった。 ミルナさんの今日の朝食とか、先生の好きな食べ物とか、私の弟の名前とか。 訊いたところで意味があるのかと言いたくなるような質問ばかり。
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で──何とまあ、このこっくりさん、「ぽんこつ」だった。

基本的に、答えない。 答えたとしても間違う。 問答が繰り返される内に、恐怖が薄れてきた。 物々しさというか、そういうものに欠けている。

(;゚д゚ )「……何か、拍子抜けっていうか」

('、`;川「ですね……」

(´・_ゝ・`)「君達、こっくりさんに怒られるよ」

口を噤む。 先生は顎に手をやって唸っていたかと思うと、不意に口を開いた。
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(´・_ゝ・`)「こっくりさんは、どこにいるの?」

何だ、その質問。 私とミルナさんが呆れたような目を向ける。 一拍あけて、10円玉が動いた。

〈くらい〉

('、`*川「……くらい?」

(´・_ゝ・`)「地名?」

〈いいえ〉

(´・_ゝ・`)「真っ暗な場所?」

〈はい〉

(´・_ゝ・`)「ここにいるわけじゃないんだ」

〈はい〉
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( ゚д゚ )「……こっくりさんって、降霊術の一種じゃないんですか?」

ミルナさんが先生に問う。 こうれいじゅつ、というものが何なのか、私は分からない。 後で知ったのだけど、ミルナさんも何度か 先生のオカルト趣味に付き合わされたことがあるらしい(私ほど頻繁ではないが)。 そのせいで多少の知識がついたのだという。

(´・_ゝ・`)「そうだとは聞くけど……。  降霊術ってのは、この場に来ないと成立しない、ってものでもないのかもしれない」

( ゚д゚ )「遠くから念を送ってるとか?」

(´・_ゝ・`)「そういうことで成り立つ場合もあるのかもね」

こっくりさんそっちのけで真面目に議論している。  私が咳払いすると、先生はこっくりさんの方に意識を向け直した。
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(´・_ゝ・`)「……こっくりさん。僕、是非こっくりさんに会ってみたいな」

余計なことを。 睨みつける私に、先生は微笑んで返す。 するする、10円玉は滑らかに「あ」行へ向かった。

〈いま〉 〈いく〉 4文字を辿り、鳥居へ。

──今行く。 答えの意味を理解した瞬間、ぞっとした。

身を竦ませた拍子に10円玉から指が離れそうになったけれど、 こっくりさんのタブーは知っていたので何とか堪えた。

(;゚д゚ )「『今行く』……?」
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(´・_ゝ・`)「来てくれるの?」

10円玉は動かない。 先生が色々と話しかけるのだけど、それきり、こっくりさんは答えなかった。

('、`;川「……ねえ」

(´・_ゝ・`)「ん?」

('、`;川「これ、終わらせられないんじゃないの?」

こっくりさんといえば、「こっくりさんお帰りください」「はい」のやりとりで 終わらせなければいけない筈だ。 けど、現在、こっくりさんは完全に沈黙している。 試しに「お帰りください」と言ってみたものの、うんともすんともいわなかった。
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(´・_ゝ・`)「たしかに終わらせられないね」

(;゚д゚ )「せ、先生、どうするんです?」

(´・_ゝ・`)「どうするって?」

('、`;川「ちゃんと終わらせないといけないんじゃないの?」

(´・_ゝ・`)「……んー。君達、変なこと言うね」

先生は──指を離した。 そして、私とミルナさんの指の下から10円玉を奪い去る。

(´・_ゝ・`)「そもそも、普通に帰したって面白くないじゃない」

そういえば、こういう人だ。
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こっくりさんを中断させてから、20分が経過した。 私達3人は依然として机を囲み、その上の紙を眺めていた。 今のところ、怪奇現象の類はない。

( ゚д゚ )「このまま何事もなく済みそうですね」

ミルナさんが先生に言った。 先生は、うん、と小さく頭を揺らす。

(´・_ゝ・`)「やっぱり、こっくりさんなんて来てなかったのかな」

('、`;川「でも10円玉は動いてたわよ」

(´・_ゝ・`)「10円玉が動くのは、 参加者が無意識に動かしているのが原因だ、とする説がある。 無意識だから、ひとりでに動いていると錯覚するわけだ」

('、`;川「無意識? 無意識であんなに動くの?」

(´・_ゝ・`)「うん……」

先生は、目の前に持ち上げた10円玉をまじまじと見据えた。  

「でもなあ」と一言。
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(´・_ゝ・`)「僕、あのこっくりさんはリアリティがあったと思うんだけどなあ」

('、`;川「リアリティって」

( ゚д゚ )「質問の答え、外れまくってたじゃないですか」

(´・_ゝ・`)「外れまくってたからこそリアルなんじゃないか」

親指で10円玉を弾いた。 くるくると宙を舞ったそれを、先生は手のひらで受け止める。

(´・_ゝ・`)「こっくりさんは、低級な動物霊や浮遊霊なんかを呼ぶものだと一般的に言われている。 ──そういう霊が、ミルナ君の朝食や伊藤君の弟の名前を知ってると思うかい?」

(;゚д゚ )「……うーん」

(´・_ゝ・`)「伊藤君さ、いきなり見知らぬ人から電話かかってきて 『私の好きな映画は何でしょう』なんて言われて、答えられる? ヒントも無しに」

('、`;川「そりゃ分かんないけど」

(´・_ゝ・`)「でしょ」 先生が口を閉じる。


私とミルナさんも視線を交わすだけで、何も言わなかった。
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不意に、部屋のドアがノックされた。 驚きすぎて悲鳴が出そうだった。

(´・_ゝ・`)「はい?」

「教授、研修についてお話よろしいですか」 男性の声だ。

准教授かな、とミルナさんが呟く。 先生は事務机から封筒を取ると、研究室を出た。 ドアの向こうで会話する声が聞こえ、やがて、2人分の足音が遠ざかっていった。

('、`;川「あ、行っちゃった」

( ゚д゚ )「多分すぐ戻ってくるんじゃないか」


残された私とミルナさんは、何となく気まずい空気の中、互いの動向を窺った。 初対面の男女をこっくりさんに巻き込んだ上に2人きりで放置するって、結構ひどい。
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(;゚д゚ )「……あ、な、何か飲む?」

('、`;川「はっ、はいっ」

ミルナさんが腰を上げ、事務机の隣にある棚へ移動した。 コーヒーメーカーやポットなどが置いてある。

( ゚д゚ )「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

('、`*川「紅茶で……」

棚の中から紙コップを出し、ミルナさんはティーポットを手に取った。 そして──ふと、傍にあった窓を見たミルナさんは固まった。 右手にティーポットを持ったまま、そこに立ち尽くしている。

('、`*川「?」

私は、そっとミルナさんに近付いた。 彼の隣に立つ。
ミルナさんは、窓の外を見下ろしていた。
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ここは3階だ。 すぐ下に中庭が見える。 各所に設置された外灯が、無人の中庭を照らしている。 そこを通るものがあった。 どう表現すればいいのだろう。

牛ほどの大きさもある肉の塊。 あちこちから人の手足が飛び出している。 所々に毛が生え、顔のパーツのようなものも点在していた。

手足も、髪も、1人2人の量ではない。 もたつきながら、それは這うように中庭を移動していた。
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尋常じゃないほどの寒気に襲われ、私は後ずさった。 後ろの事務机にぶつかり、床に転ぶ。 ミルナさんはびくりと体を揺らし、私を見た。 そして、小刻みに震えている足を折り曲げ、しゃがみ込む。

(;゚д゚ )「……見たか、あれ……」

頷いて答える。 ミルナさんは膝をつくと再び窓を覗き込み、視線を逸らした。

(;゚д゚ )「……生き物じゃ、ないよな」

('、`;川「た、た、たぶん、……たぶん」

したたか打ちつけたお尻を摩りながら、私はミルナさんと向かい合うように座った。 ミルナさんは青ざめている。 口を開いては閉じ、舌で唇を湿らせ、また口を開いて、閉じた。 どうしたんですか。 私が問うと、ようやく彼は答えた。
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(;゚д゚ )「あいつ……男みたいな腕もあれば、女みたいな足もあった。その逆も……」

('、`;川「はあ」

(;゚д゚ )「……さっきの、こっくりさんってさ」


そこでまたミルナさんが黙る。 けれど、その先は私にも分かった。 ──先生がこっくりさんに性別を訊ねたとき、こっくりさんは、「男」と「女」、両方を答えた。 肌が粟立つ。 まさか、あれがこっくりさんなのだろうか。
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(;゚д゚ )「帰さないと……!」

ミルナさんは立ち上がり、こっくりさんを行った机に駆け寄った。 机に辿り着くなり、妙な声を漏らしてへたり込む。 私は本棚に掴まりながらミルナさんのもとへ歩いていって、机の上を見た。 有り得ない光景だった。 紙に書かれていた文字が、ぐちゃぐちゃになっていた。

場所や方向がばらばらな上、いやに捩れていて、まともに判読出来る文字が少ない。 鳥居のマークは真っ黒に塗り潰されている。

私もミルナさんも言葉を失った。 真っ白になった頭に、警鐘が鳴り響く。

('、`;川「……に、逃げましょうよ……!」

ミルナさんの腕を引っ張る。 何とか立ち上がった彼を連れて、私はドアを開けた。
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先生の研究室は一番奥にある。 長く伸びる、真っ暗な廊下。

その先の曲がり角から、のそのそと現れる「何か」。 凍りつく。 中庭で見たものが、そこにいた。 その肉塊は、ぴたりと止まった。 直感的に、私の頭に「見付かった」という言葉が浮かぶ。

瞬間、肉塊は、先程までとは打って変わって 凄まじいスピードで近付いてきた。 かちかち、ぺたぺた、動物と人間が同時に走っているかのような奇妙な足音が耳に突き刺さる。
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ミルナさんが私を研究室に引き戻してドアを閉めたのと同時に、 それはドアにぶつかった。 ドアがめちゃくちゃに叩かれる。 ミルナさんは一生懸命の形相で鍵をかけた。 背中でドアを押さえ込むようにしながら、彼は私に携帯電話を投げた。


(;゚д゚ )「先生に電話しろ!」

私は半泣きになりながら携帯電話を操作した。 私が使っているのと違う型だったから手間取ったが、何とか「盛岡先生」の番号を見付ける。 こういうときにありがちな電波障害が起こることもなく、無事、先生に繋がった。
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『はい』

(;、;*川「先生!」

『あれ、ミルナ君じゃないね。……あ、伊藤君か』

(;、;*川「こ、こっくりさんが、こっくりさんが、」

がんがんというドアの音に、頭の中が掻き混ぜられる。 言葉がつっかえて出てこなかったけれど、 もう慣れたもので、先生は大体のところを察したようだった。

『来たの? 何だよ、僕がいない隙に……。 どうしようか、今ちょっと席外せそうにないんだよね』


(;、;*川「や、やだ、待って、待って!」

電話の向こうで、がさがさという音が鳴った。 誰かが先生に話しかける声。 先生が答える声がして、通話は切れた。 唖然として携帯電話を見下ろす私に、ミルナさんが「どうした」と訊ねる。

(;、;*川「切られた……」

(;゚д゚ )「はあ!?」
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みしり、ドアが軋む。 ミルナさんの顔色は最悪だ。 あと1分もしない内にドアは破られるだろう。 私が顔を両手で覆った──と、同時。

音が止んだ。

(;゚д゚ )「……え?」 ミルナさんが掠れた声を落とす。 私は、そろそろと顔を上げた。
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ドアは、すっかり静かになっていた。 諦めたのか。 油断させるつもりなのか。 私もミルナさんも、動けなかった。 ドアを睨む姿勢で硬直する。

──どれほどの間、そうしていただろうか。

突然、遠くから物凄い絶叫が聞こえた。数人分。

ミルナさんが座り込む。 彼の表情には、どことなく安堵の色が浮かんでいた。

(;、;*川「なっ、何!? 何!?」

(;゚д゚ )「……」

返ってきた声は、聞こえるか聞こえないかの小ささだった。

(;゚д゚ )「多分……あの人、あっちでこっくりさん呼びやがった」
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(´・_ゝ・`)「会議室に5人くらい居たんだけどさ、僕以外の教授や准教授が、 一斉に悲鳴あげて逃げたんだよ」


しばらくして研究室に戻ってきた先生は、悔しそうに言った。

(´・_ゝ・`)「何で僕だけ見えないかな……。理不尽だ。不公平だ」


('、`*川「本当に理不尽だわ」

私はミルナさんが入れた紅茶を飲みながら、先生を睨んだ。 例によって、今回も先生には幽霊など見えなかったらしい。
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( ゚д゚ )「……で、先生、具体的に何をやったんですか」

ミルナさんが問う。 先生は答える代わりに、彼に封筒を手渡した。 封筒の裏面を見たミルナさんの表情は、何とも言えないものだった。 私も横から覗き込む。 ──酷かった。 やたら曲がった鳥居のマーク。

その傍らには、恐らく「YES」「NO」の略であろうYとNの一文字ずつ。

「男」「女」と書くところは、♂と♀。 50音表は、もはや50音ではなかった。
あかさたなはまやらわ。これだけ。

('、`*川「……こっくりさん、ろくに喋れないわね。これ」

(;゚д゚ )「こんなんで呼び出されたら俺ならキレるな」

(´・_ゝ・`)「伊藤君が切羽詰まってたみたいだから急いで仕上げたんじゃないかな成功したんだし、いいでしょ」
1: 20xx/ミステリー体験 master
('、`*川「呼び出した後はどうしたの?」

(´・_ゝ・`)「説教した」

自分がいない間に研究室に来たこと、 他の教授達には見えたのに自分にだけ見えなかったこと、 お腹が空いていたこと。 それらの怒りを、先生はこっくりさんにぶつけたらしい。 前2つはともかく、最後のはこっくりさんに関係ない。


こっくりさんが碌に反論出来ないのをいいことに、一方的に説教をかましたのだという。 30分ほど続け、最後に先生が「もう帰れば?」と言うと、 10円玉は「Y」を通って鳥居に戻ったそうだ。

('、`;川「説教効いたんかい」

(;゚д゚ )「……なんか可哀想だな」

すごいとか格好いいとかより、いっそ恐い。
1: 20xx/ミステリー体験 master
私とミルナさんは、あれの見た目だけで随分とダメージを受けた。 そのせいで怯えきっていた私達には、立ち向かうことを考える余裕もなかった。

先生は正反対だ。 何も見えないからこそ、怯える暇などなかった。 寧ろ腹を立てたくらいなのだから、恐怖なんて欠片も感じなかったのだろう。

('、`;川「……見えないから図太いのか、図太いから見えないのか……どっちでしょうね」

(;゚д゚ )「どっちだろうなあ……」

(´・_ゝ・`)「何こそこそ話してるの?」

「見えない」ことの強さを、思い知らされた気がした。
1: 20xx/ミステリー体験 master
──わざわざ言う必要もないだろうけど。

今のところ、こっくりさんの祟りとか、そういうものは一切起こっていない。


第十一夜『可哀想なこっくりさん』 終わり



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引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1186053286/