bandicam 2017-07-06 18-24-12-549

1: 2017/4/01 00:02 master
あれは、たしか、お盆に入る直前だった。

お盆の時期には母方の実家に泊まるのが我が家の恒例なのだけれど、 今年はバイトの予定が詰まっていて、私はお盆前の一日しか休みがとれなかったのだ。
せめて顔だけは見せておいでと母が言うので、 私1人だけ、一足先に母の実家へ行くことにした。

そんな日の話。

('、`;川「全員留守!?」

(゚、゚トソン「また肺の調子が悪いとかで、お祖父ちゃんが病院に行きましてね。 場合によっては検査入院もあるみたいです。あくまで『念のため』ですから、あまり心配しなくても大丈夫ですよ」

(゚、゚トソン「で、お祖母ちゃんは、他県でお友達のお葬式があるそうです」
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('、`;川「お葬式は電話で聞いてたけど……伯母さん達は?」

(゚、゚トソン「母さんはお祖父ちゃんの付き添い。父さんはお仕事」

喫茶店でレモンティーを飲みながら、従姉妹は言った。

彼女はトソンという。
母の姉──伯母──の娘で、私より一つ年上の大学3年生。
歳が近いからか、私達は昔から仲がいい。 

トソンは一人暮らしをしているのだけれど、今は夏休みなので、母の実家に戻っているそうだ。 今日は、電車より安く済むからという理由で わざわざ車を運転して私を迎えに来てくれた──のに。

('、`;川「よりによって、このタイミングで……」

出発する前にお茶でも飲んでいこう、とトソンに言われ 喫茶店に行った私は、そこで衝撃的な話を聞かされた。

なんと、今日に限って、祖父母も伯母夫婦も出払っているのだという。
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(゚、゚トソン「だから、正直、ペニサスが来る意味ないんですよね。 どうします? やめます?」

('、`;川「言ってくれるね。行くよ。せめて仏壇に手を合わせるぐらいはする。あと、久々にあの縁側で昼寝したいし」

(゚、゚トソン「そうですか。まあ夜には両親も帰ってきますし、検査がすぐに終わればお祖父ちゃんだって帰ってくるかもしれませんしね。それまでのんびりしていってください」

母の実家は、言っては何だが、郊外の小さな田舎町にある。

「のんびり」という言葉がよく似合う。

('、`*川「そうするかな……。 あ、ショボンはどう? 元気?」

ショボンとは、彼女の弟である。 たしか今年で小学2年生だったか。

素直ないい子だ。

何気なく振った話題だったが、トソンは僅かに表情を曇らせた。
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(゚、゚トソン「それが、変なことを言うんです」

('、`*川「変?」

(゚、゚トソン「ええ……──おばけが、どうこうって」

私は舌打ちしそうになるのを、すんでのところで抑えた。 せっかくあのジジイがいないのに、またオカルト話か。 まったく。 トソンにバレないように溜め息をつき──私は、硬直した。

(゚、゚トソン「家の中で変なのを見るって言うんです。 ショボンにしか見えてないみたいなので、私は気のせいだろうと思ってるんですが……」

私の視線が、トソンの後ろを捉えたまま固まる。

ああ、もう、やだ。
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(゚、゚トソン「お祖父ちゃんが神社やお寺に相談したらしいんですが、これといって、何かあるでもなく。それで母さん達が気味悪がって……──ペニサス、どうしました?」

私の様子がおかしいのに気付いたのだろう。

トソンは怪訝そうに私を見て、それから、振り返った。


(´・_ゝ・`)「君達、面白そうな話をしてるじゃないか」


第七夜『つきまとう影』
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('、`*川「ごめんなさい本当にごめんなさいごめんなさい変な人なのごめんなさい」

(゚、゚トソン「構いませんよ。ペニサスの知り合いなんでしょう? それに、うちの大学にも研究熱心な教授はいますから」

午後1時に祖父母の家に着いた。 運転席のトソンに何度も謝る。 トソンは、シートベルトを外しながら首を振った。

(´・_ゝ・`)「いやあ、無理言って悪いね」

('、`*川「本当だわ。先生ってどうしてこんなに非常識なの。信じられない」

(´・_ゝ・`)「たまたま会った伊藤君がたまたま幽霊の話をしてたら、付いてこないわけにいかないだろう」

──後部座席で、先生がけらけらと笑う。

この男の前で幽霊を匂わせる発言をしてはいけない。

まさか、ここまで付いてくるなんて。
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(゚、゚トソン「でも、盛岡教授の望むような話ではないと思いますよ。 たしかに昔から地元にある家ですけど、家も地域も至って普通ですから」

(´・_ゝ・`)「それならそれで、仕方なかったと諦めるさ」

先生は、自分を「民俗学を多少齧っている経済学教授」と中途半端に偽り、 私にはよく分からない言葉を並べ立ててトソンを説得、もとい洗脳していた。

たしか、昔の風習が後世の子に齎すなんちゃらかんちゃらが何々、 学術的な興味があるからショボンの話を聞いてみたい云々。

とか。 私だったら意味が分からなすぎて逃げる。 しかしまあ、VIP大学教授という肩書きの、なんと便利なこと。

トソンもすっかり先生を信用しきっていた。 トソンと先生が車を降りる。

私は、急いで2人に続いた。
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(´・_ゝ・`)「すごいな」

先生は、座敷の真ん中で呟いた。 2部屋分の襖が取っ払われて一つの部屋となった座敷は、 今から大人数で宴会を始めても差し支えがないほどに広い。 縁側に続く障子も開かれていて、舞い込んだ風が、私達を撫でていった。 涼しい。

(゚、゚トソン「夏場は、なるべく風がよく通るようにしてるんです」

(´・_ゝ・`)「大きい家だね」

そう。祖父母の家は大きい。 純和風の、ちょっとした「屋敷」と言ってもいいレベルだ。 私や兄弟、トソンが幼かった頃は、かくれんぼをすると、 全員見付けるのに結構な時間が掛かったものである。

(゚、゚トソン「持て余し気味ですけどね。──2人共、お腹すいてませんか。ご飯にしましょう。 お祖母ちゃんの作り置きがあります」

('、`*川「あー、是非いただきます」


私と先生は座敷の隅に荷物を置き、その部屋を後にした。
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(゚、゚トソン「……あれ?」

居間の障子を開け、トソンは首を傾げた。 飯台の上に飲みかけの麦茶がある。 つけっぱなしのテレビは、ワイドショーを映していた。

('、`*川「どうかした?」

(゚、゚トソン「おかず温めて出しておくよう、ショボンに電話したんですけど……。 ……ショボンー?」

台所の方へ顔を向け、トソンはショボンの名を呼んだ。 返事も、物音もない。 トソンが踵を返す。 私と先生は顔を見合わせ、彼女に続いた。

(゚、゚トソン「ショボン、どこですか?」

よく通る声でショボンを呼びながら、トソンは廊下を歩く。 遊びに行ったんじゃないの、と私が言うと、玄関に靴があったと答えられた。

ショボンは、頼まれたことはちゃんとやる子だ。 一体どうしたのだろう。

何事かな、と先生がうきうきした雰囲気を醸し出していたので、足を踏んでおいた。
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──行きの車中でトソンが話してくれたことを思い出す。

(゚、゚トソン『黒い人間だって、ショボンは言ってましたね』 ショボンが見る「おばけ」は、真っ黒な、人の形をしたものらしい。 目だけがくっきり浮かび上がっていて、その目を忙しなく動かしながら 家の中をうろついているのだという。

(゚、゚トソン『初めて見たのは一昨年だったそうですが、一昨年は一度しか見なかったらしいです。 それが去年には3ヶ月に一度になって、今じゃ2週間に一度の頻度で出るらしくて』


そいつはショボンを見付けると、 ぴたりとショボンに目を向けたまま、その場に立ち止まったり、たまに近付いてきたりする。 少し経つといなくなるし、害はないのだけれど、ショボンがすっかり怖がっているそうだ。 彼が1人でいるときによく現れ、他の家族には見えないのだとか。

神社やお寺、拝み屋の類に相談しても、ちゃんとした答えは返ってこない。

(゚、゚トソン『お祖父ちゃん達が変に関わるから、ショボンがますます怖がるんですよね。 放っておけばいいのに』

トソンはリアリストで、幽霊などの存在は信じていなかった。


溜め息をつく彼女を、先生が冷めた目で見つめていたのを覚えている。
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私達は一旦居間の方へ戻り、台所脇の階段から2階へ向かった。 トソンが生まれたときに増築された階だ。 子供部屋しか置いていないので、1階に比べると随分狭く感じる。 階段を上った先に廊下があって、ドアが2つ並んでいるだけだった。


(゚、゚トソン「ショボン?」

右側のドアをトソンがノックする。 すると、中から、ばたばたと音がした。 トソンが眉を顰め、ドアを開ける。 それと同時に少年が飛び出してきた。

(´;ω;`)「お姉ちゃぁああん!!」

(゚、゚;トソン「わ」


少年がトソンにしがみつく。 ショボンだ。

わんわんと大声で泣いている。
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(゚、゚;トソン「どうしたんですか」

(´;ω;`)「お、おね、ちゃ、ひぐっ、ひ、」

不躾だとは思いつつ、私はショボンの部屋の中を覗き込んだ。 押し入れが開いていて、そこから布団が落ちかけている。 どうやら、ショボンはそこに隠れていたようだ。

(´・_ゝ・`)「何があったんだろうね」


私の後ろで先生が囁く。
ショボンが完全に泣き止むまで、30分以上かかった。
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('、`;川「ねえ……どうすんの?」

(゚、゚トソン「何がですか?」

私は、トソンの返答に「駄目だ」と思った。 彼女は弟の話を信じていない。
──ショボンが泣きながら話したことには。 また、例の黒い何かが現れたらしい。 トソンから電話を受けて、ご飯を温めようとしたショボンは、 台所でそいつに遭遇した。 驚いて逃げると、そいつは、ゆっくりな動きではあったが追いかけてきたのだという。

うっかり2階に逃げ込んでしまい、階段を下りるに下りられず、 自室の押し入れでずっと震えていた。

そこへトソンが来た──とのことだ。
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(´-ω-`) スースー 現在、ショボンは居間の真ん中で座布団を枕にして眠っている。

初めは先生を見て「誰?」と訝しげだったものの、大人が3人もいれば安心出来るのか、 彼はすぐに眠りに落ちた。 寝顔を見守るトソンの瞳は優しい姉のそれだけれど、 端からショボンの話を信じる気がないというのは宜しくない。

事実かどうかはともかく、ショボンはあんなに泣いていたのに。

('、`;川「『何が』ってさ、ショボンあんなに怯えてたじゃない」

(゚、゚トソン「子供ですから、いきすぎた想像に自分で怯えることもあるでしょう。 こちらまで過剰に対応すれば、ますます怖がるだけですよ」

(´・_ゝ・`)「君は随分と弟に冷たいね。 こんなに歳が離れていれば、必要以上に可愛がりそうなものだけど」

(゚、゚トソン「そうでしょうか」

トソンは、空の食器を重ねて立ち上がった。

一応食事はとったものの、ショボンの話を聞いた後だと、あまりお腹に入らなかった。 先生とトソンは完食していたけれど。
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(゚、゚トソン「お皿洗ってきますね」

('、`*川「あ、手伝おうか」

(´・_ゝ・`)「僕が手伝うよ」

私を押し留め、先生が腰を上げた。 トソンは「ありがとうございます」と先生に礼を言っている。 どうせ、ショボンが寝てしまった今、 トソンしか「黒い奴」の話を聞き出せそうな人間がいないと判断したのだろう。

質問責めに遭いながら(そしてついでに怖い話を聞かされながら) 食器を洗う羽目になるであろうトソンに、私は内心で合掌した。

今日ぐらいは私の身代わりになってくれてもいい筈だ。

2人が食器を抱えて台所に移動する。

私とショボンが居間に残った。
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扇風機が首を振りながら風を送る。 普段はエアコンがないと嫌になるけれど、この家は扇風機だけでも充分に涼しい。

その内、眠気が込み上げた。 食べてすぐ寝たら牛になるよ、という祖母の声が聞こえてきそうだが、 私は、欲求に応じることした。 本当は縁側で寝るのが一番気持ちいいのだけれど、ショボンから離れるのも可哀想だ。

彼と向かい合うように転がり、私は目を閉じた。 ショボンの前にだけ現れるという、黒い何か。 いつものように、先生が好奇心でもって引き取ってくれないだろうか。
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目を閉じたものの、あれこれ考えているとなかなか眠れない。
ここに「黒い奴」が現れたらどうしよう、とか。 もうテレビでも見てようかな。

私は、目を開けた。
──途端、目が合った。 心臓が跳ねる。

(´-ω-`) スースー 私の前で眠るショボン。

その向こうに、真っ黒な顔がある。

人の影がそのまま立体になったような印象だった。 輪郭が、どことなくぼんやりしている。 多分、上から見たら、私とショボンと影で川の字になっていただろう。
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ショボンを挟んで、私と影は至近距離で見つめ合う。 どうして幽霊ってやつは不意打ちで来るのか。 本気で心臓が止まりかねないから、やめてほしい。 影は何も言わない。 そもそも口があるのかも分からない。

唯一人間らしいパーツである目は、じっと私を睨んでいる。

何とはなしに、見覚えのある瞳だと思った。 私は、そっとショボンを抱き寄せた。 ショボンが唸り、舌足らずに私を呼ぶ。 目を覚ましたようだ。

身を捩ったショボンは私の胸元で、ひっ、と声をあげた。
小さな手が私の服を握りしめる。
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怖い。 瞬きもせずに私を睨む目からは、感情が窺えない。

ただ、奴にとって、私が邪魔な存在であろうことは分かった。 震えるショボンを抱く腕に力を込め、私は瞼をきつく閉じた。

──洗い物を終えたトソン達が戻ってきて、ようやく目を開けた頃には 影はいなくなっていた。
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('、`;川「絶対に居たんだってば!」

(゚、゚トソン「夢じゃないですか?ショボンの話を気にしすぎたんでしょう」

既に夕暮れ。 庭からは、ひぐらしの鳴き声が聞こえる。 私が何度訴えても、トソンは頑として影の存在を認めなかった。

('、`;川「このままじゃ、ショボン、家にすらいられないじゃないの」

(゚、゚トソン「まあ、それはたしかに心配ですが……」

ショボンは家にいたくないと言って泣くので、 3時前に、近所に住む祖父の友人の家に預けられた。 伯母が帰ってきたら迎えに行くつもりらしいが、果たしてショボンは素直に帰りたがるだろうか。
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(´・_ゝ・`)「落ち着きなよ伊藤君。 お姉さんに言ったって、どうしようもないさ。  拝み屋さん達だって『分からない』って言ってたらしいんだから」

縁側に座った先生が、あっけらかんと言い放つ。

どういうわけか、トソンと一緒に台所から戻って以降 先生は今回の件への興味をすっかり無くしているようだった。

(゚、゚トソン「盛岡教授の言う通りです。 仮に、本当にショボンの言うようなものが存在したとして、私に出来ることはないと思います」

('、`;川「だっ、……だったら、なるべく傍に居てあげるとかしなさいよ! ショボンが1人のときに『あいつ』が出てくるんでしょ? それが分かってるなら、出来る限り一緒にいればいいじゃない」

(´・_ゝ・`)「でも、伊藤君が一緒に寝てたところにも現れたんでしょ」


('、`;川「うぐっ……」

そういえばそうだ。 あれは、私がいるにも関わらず現れた。 というより──私がいたからこそ出てきたような、そんな気もする。

ショボンではなく、ずっと私を睨んでいたから。


言葉に詰まる私を一瞥して、先生はトソンへ顔を向けた。
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(´・_ゝ・`)「まあ、弟君の傍にいてあげるっていうのは正しいかもしれないね」

(゚、゚トソン「……そうでしょうか」

(´・_ゝ・`)「四六時中一緒に、とは言わないけど」

トソンが考え込む。 私達の言うことを受け入れてくれればいいのだけれど。 しばらく沈黙が続いた後、先生が口を開いた。


(´・_ゝ・`)「伊藤君、僕はもう帰るよ。君も一緒に帰らないかい」


('、`;川「えっ……どうして? このタイミングで?」

(´・_ゝ・`)「この件は、民俗学とは関係なさそうだからね。 あれがショボン君の空想ならば心理的な問題になってくるし、そうでないなら、風習なんかは関係ない、彼個人のオカルト話だ」


(´・_ゝ・`)「これ以上僕が首を突っ込むのは、良くないことだよ」


ああ、先生は民俗学を齧っている経済学教授、という設定でここにいるのだった。


でも、それにしても──
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('、`;川(先生は『個人のオカルト話』に興味があったから来たんじゃないの?)

何か変だ。 たしかに民俗学云々という設定上なら、先生の言葉は然程おかしくないと思う。 しかし先生の本当の企みを知っている身としては、納得出来ない。

──不意に電話が鳴った。 トソンが立ち上がり、子機を取る。 私は先生の傍に近寄り、小声で話しかけた。

('、`*川「帰るなら1人で帰ってね。私はこのままトソン達を放って帰るなんて出来ないし」

(´・_ゝ・`)「僕は、君こそ帰るべきだと思うんだけど」


('、`;川「何でよ」

(´・_ゝ・`)「そりゃあ……」


トソンが子機を置いた。

それに気付いた先生が口を噤み、顔を背ける。

一体何なんだ。
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(゚、゚トソン「……ペニサス」

('、`*川「ん?」

(゚、゚トソン「ショボンが、『また出た』って泣いてるそうなんです……。 すごく怯えてて、向こうも手を焼いてるので、こちらに帰すそうです」


('、`;川「──出た? あっちの家に!?」

私は、思わず大声をあげてしまった。 トソンが不安の滲んだ顔で頷く。 ここまで来たら、トソンも「放っておけばいい」なんて言っていられないだろう。

トソンが玄関へ行くと、先生は帰宅の準備を始めた。

「君も準備しなさい」と言われたので、本当に帰っていいのか悩みつつ、 ひとまず仏間へ行き、仏壇に手を合わせておいた。

結局、少しものんびり出来なかった。
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(´;ω;`)「お姉ちゃん……」

10分ほどすると、祖父の友人に送られて、ショボンが帰ってきた。 玄関先でトソンに抱き着き、ぐすぐすと泣いている。

トソンは祖父の友人に礼を言って、ショボンの頭を撫でた。 普段は表情の薄い彼女も、ひどく心配そうな顔でショボンを見下ろしている。

(゚、゚;トソン「大丈夫ですよ。私が傍にいますから……」

(´;ω;`)「もうやだ、こわい、やだ……」

(´・_ゝ・`)「ショボン君。お姉さんと一緒なら、あいつは出ない筈だよ」

先生が靴を履きながら言った。

何を根拠に、と思ったけれど、やけに自信のある口調だった。

ショボンがきょとんとしながら先生を見上げ、次にトソンを見る。 それから、ショボンは不思議そうな顔をしつつも頷いた。
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(´・_ゝ・`)「行こうか、伊藤君」

('、`;川「う、うん……。じゃあ、トソン、えっと……気を付けてね。 ごちそうさまでした。ご飯美味しかったってお祖母ちゃんに言っといて。お祖父ちゃんにはお大事にって」

(´・_ゝ・`)「お邪魔しました。いきなり押しかけてごめんよ」

(゚、゚トソン「はい……あの、変なことに巻き込んで、すみません」

ショボンが私達に向けて「行っちゃうの」と呟いた。

私だって彼らを置いていきたくないが、さっきから先生が2人には見えない位置から 私の腰を突いてくる。多分急かしているのだと思う。

('、`;川「何かあったら電話してね。もし怖かったら、2人で知り合いの家に──」


(´・_ゝ・`)「行くよ」


先生に腕を引っ張られた。 何度も振り返り、私は、トソン達に手を振った。
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(´・_ゝ・`)「あれは多分生き霊じゃないかな」

('、`*川「……生き霊?」

乗客の少ない電車の中で、先生は言った。 生き霊。恨みを持つ相手を祟る、生きている人の魂だか念──だったっけ。
弟の幼馴染みが、いつぞや、そんな話をしていた。

(´・_ゝ・`)「洗い物の最中、色々聞いてる内に分かったよ。 ……前も言ったけど、僕は亡くなった人間の霊が見たいんだよね。生き霊はどうでもいいや」


少し前まで赤く染まっていた窓の外。 もう、夜の闇が手を広げ始めていた。
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('、`;川「生き霊って……。 誰か、ショボンに恨みでも持ってるわけ?」

(´・_ゝ・`)「逆」

('、`;川「何がよ」

(´・_ゝ・`)「ショボン君を愛しすぎてるってこと」


ぽかんと口を開け放し、私は先生を凝視した。 先生は溜め息をついている。 嫌な予感がしつつ、訊かずにはいられなかった。

('、`;川「……誰が?」

返ってきた答えは、やっぱり、

(´・_ゝ・`)「あのお姉さん」


トソン。
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(´・_ゝ・`)「初めは、弟に対する愛情が薄い人だと思ったけど……。 いやはや、誤解だった。 洗い物のとき、彼女、ショボン君の話ばっかりするんだ」

(´・_ゝ・`)「こっちがちょっと恐くなるくらいね」

('、`;川「うそ……」

(´・_ゝ・`)「本当」

私の知っているトソンは、歳の離れた弟だろうと、必要以上に甘やかさない人だった。 寧ろ厳しすぎるのではないかと思うくらいに。
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(´・_ゝ・`)「初めてショボン君が『おばけ』を見たのは一昨年だっけ。 お姉さんが大学に入って一人暮らしを始めたのも一昨年だそうじゃないか」

('、`;川「……そうだけど……」

(´・_ゝ・`)「弟が心配で堪らなかったんだろうね。その気持ちは年々募っていき、当然、『おばけ』が出る頻度も上がる」

ショボンが1人のときによく現れる黒い影。

それは、トソンがショボンを案ずるが故のものだろうと先生は言う。 なら。

('、`;川「なら、何で私の前にも出てきたの……?」  

私に向けられた先生の視線は冷たい。「少し考えれば分かるだろう」、というような。


(´・_ゝ・`)「嫉妬かな。姉としての。 君にも弟がいる分、『弟』としてショボン君を可愛がる気持ちは強いだろうから」

(´・_ゝ・`)「その嫉妬が引き金になったのか、 とうとう他所の家でも『おばけ』が現れるようになってしまったね。……彼女が弟離れ出来るまで、君はあんまりショボン君に近付かない方がいいよ」  


先生は、ほんの少しだけ口角を上げた。


(´・_ゝ・`)「実際に『おばけ』を見た君に訊くけど、僕の推理は間違ってたかな?」

もう何も言えなかった。


居間で見た黒い影が、私の脳裏に浮かんでは消えていく。 どうしてあのとき、すぐに気付かなかったのだろう。

あの目は、トソンの目に似ていた。
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お盆になり、帰省した母から電話が掛かってきた。

祖父の体調は良好だとか、 親類が大勢集まって賑やかな宴会が始まっているとか、 墓参りは恙無く終わったとか。

『それとね、珍しくトソンちゃんがにこにこ笑いながらショボン君と一緒に遊んでるの。 やっぱり姉弟なんだから、仲良くしてる方がいいわよね』


そうだね、としか答えられなかった。

そのときの私は、一体どんな表情をしていただろうか。



第七夜『つきまとう影』 終わり


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引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1186053286/