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先生:「どうやら、このコンビニの霊は僕に会ってくれないみたいだし。ここでの怪異は諦めようと思ってさ。 で、何かオススメの心霊スポットとか、もしくは怪奇現象の悩みとかない?」
──このとき、私が自分の行動圏内から遠く離れた場所を挙げるなり、 「ない」と答えるなりしていれば、 恐らくもう、この男と関わることはなかっただろう。
だが、咄嗟にそこまで思考が至らなかった私は思わず、
私:「……友達から、心霊写真は預かってますけど」 そう答えてしまった。
ああ、出来ることなら、当時に戻って私をぶん殴りたい。
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第二夜『心霊写真』
先生:・・・ ──盛岡デミタス。それが先生の名前。
2度目に再会したときに自己紹介された。
VIP大学で教鞭を執っているのだと聞いている。 なので、私は彼のことを先生と呼ぶことにした。 大学では経済について教えているそうだ。
おおよそ彼が好む幽霊やら何やらとは関係なさそうな学問だったので、少し拍子抜け そもそも、50代後半という歳に不相応なほど気ままで勝手な性格の彼に、 教授という職業が向いているのかどうかすら甚だ疑問だった。
高校を卒業し、フリーターとなってアルバイト三昧の生活を送っている私には、「教授」なる立場の人間はあまり馴染みがないから分からない。
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さて、先生の紹介はこれくらいにして、話を進めよう。
先生:「──ううん……」 夕方。駅前のショッピングモール。
そこにあるファミリーレストランで、私と先生は向かい合っていた。 話すなら何か食べながら、と主張する先生に、 アルバイトが終わって早々ここに連れてこられたのだ。 時間帯もあってか、店内はなかなか賑やかだった。
私「……先生?」
カレーライスが食べたいと言っていた先生は、メニュー表を前にして かれこれ10分ほどうんうん唸っていた。
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私「どうかしました?」
先生:「お子様ランチっていうのは、大人は頼めないのかな」
私:「……おとなしくカレー頼みましょうね」
先生:「でもお子様ランチだとカレーに海老フライが付いててさ」
私:「カレーと一緒に海老フライ単品で頼めばいいでしょ」
先生:「単品? メニューには書いてないけど」
私:「頼めば出来ますよ」
ここは、私の数あるバイト先の一つである。 故に、対応可能な範囲は分かる。 とりあえず、先生は私の案に落ち着いてくれた。
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先生:「それで、写真は?」
注文を済ませた後。
夕飯はいらない、と母にメールを送った私に、 先生はドリンクバーから持ってきたホットコーヒーを啜りながら訊ねた。
携帯電話を鞄にしまい、それと入れ替えるようにクリアファイルを取り出す。 シフト表などと一緒に挟まれていた封筒を、先生に手渡した。
私:「どうぞ」 先生は封筒を開き、中から一枚の写真を出した。 テーブルの中央に置く。
【( ^Д^)(=゚ω゚)ノ从'ー'从】
写真に写っているのは2人の男と1人の女。私と同い年くらいの。
3人共、少々目立つ格好をして、おちゃらけたポーズを決めていた。
頭の悪そうな子達だなあ、と呟いた先生が、ふと1人の男に目を止める。
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先生:「あれ。左の子、プギャー君じゃないか。うちの学部の学生だよ。講義はよくサボるけど。 伊藤君、知り合いなの?」
私:「そうなんですか? 男の方は2人とも知らない人です」
先程ドリンクバーで注いできたメロンソーダで喉を潤し、私は答えた。 知り合いである女の子の方も、大して交流はない。友達の友達、程度。 右下の一週間前の日付を見てから、先生は唸った。
先生:「……ああ、これ、右の」
私:「そう。右の女の子の横」 私は頷き、先生の視線の先にあるものを指差した。右端の女の子にくっつくようにして、妙なものが見える。
先生:「人、だよなあ……」
私:「だと思いますよ」 カメラのライトであろう光に照らされた3人。
その中で、「それ」は一際真っ白に、 まるで写真に直接描き込まれたかのようにくっきりと浮かび上がっていた。
くっきりと、とは言っても、所々が擦れて背景に溶けているし、 影などがないので「それ」自体は平面的に見える。
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「ふむ」
先生は、興味津々といった様子で顎を摩って前のめりになった。
「それ」は、辛うじて人の形を保っていた。
てっぺんには頭らしいシルエット。そこから首、肩、と続いている。
ただ、やはり、顔だとか服の種類までは判別出来ない。
先生:「子供かな」
私:「多分……」 女の子の腰ほどの高さしかないので、恐らくは子供だ。
全体的に小さくもある。 眉間に皺を寄せていた先生は、ふと片眉を上げた。
先生:「これ、あれか。あの家でしょ」
私:「家?」
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先生:「知らない? 隣町の有名な心霊スポット。 今や誰も住まぬ、札人現場」
私:「札人……あ、一家皆頃しですっけ?」
10年前、隣町で凄惨な事件が起こった。 気の触れた男が赤の他人の家に侵入し、 そこに住んでいた父母と幼い息子を包丁で刺し頃す──という事件だった。
通報を受けた警察が現場に駆けつけたとき、 その男は子供のI体で遊んでいたという。 検氏の結果、即氏だった両親に対し、 子供は長時間にわたり苦痛を与えられた後に氏んでいたという、惨たらしい事実が判明した。
結局、心神喪失を理由に、男が罪に問われることはなく。
それを巡って、各メディアが騒いでいたような記憶がある。
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先生:「そうそう。後はお決まりの流れでね。 頃された一家の幽霊が出る出ないの噂がたくさん……」
私:「その家、誰も住んでないんですか?」
先生:「事件から1年後ぐらいに住んだ人がいたようだけど、すぐに引っ越してる。 これもまた、噂が広まった原因だろうね。 ──大方、その噂を聞いて肝試しにでも行ったんだろうね、この子らは」
この子ら、と写真を見下ろす先生。
私は、前回のトイレでの光景を思い出して身震いした。 私なら肝試しになんか行こうとも思わない。
私:「へえ……。……でも先生、よく、この写真だけで場所が分かりましたね」
先生:「後ろの柱を見てごらん」
先生が、3人の背後を指差した。
木目の浮かぶ柱。
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先生:「ここに、僕が以前訪れたときに残した落書きがある」
よく見ると、刃物で彫ったような跡が確認出来た。 口にするのも憚られるような、低俗で幼稚な落書きだった。
私「……」
先生:「何だい、その目」
私「氏ぬほど下らないことしてますね」 心霊スポットで記念撮影する3人とどっこいどっこいだ。
先生:「別に僕は、遊びだとか度胸試しのつもりで描いたんじゃないよ。 幽霊さんを怒らせるためにやっただけだ」
私「怒らせてどうするの」
先生:「そしたら僕の前に出てくれるかもしれないだろ?結局何も起きなかったけどさ」
私「この人、馬鹿なんじゃないの……」
馬鹿である。
そこへ、料理を抱えたウェイトレスさんがやって来た。 慌てて、心霊写真を隅に寄せる。 先生の前にカレーライスと海老フライ、私の前にナポリタンの皿が運ばれた。 ウェイトレスさんは、「ごゆっくり」と一礼して立ち去っていく。
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先生:「こういうシーンだと、2人しかいないのに 3人分の水が運ばれてきたりするのが定番なんだけどな」
私:「はいはい」
しょうもないことを言いながら、先生はカレーライスをスプーンで掬った。 視線は心霊写真へ移している。 よくもまあ、そんなものを眺めながら食事が出来るものだ。 溜め息をつきつつフォークを取って──私は、ぎょっとした。
私:「!?」 視界の隅、自分の横に、何かがいたように見えた。
慌てて顔を横向けるも、そこにあるのは長椅子の生地だけ。
先生:「どうかした?」
私「……いや。……む、虫が飛んでてびっくりしただけです」
気のせいだろうか。 さっきのは、細い、子供の足に見えた。
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すっかり日も暮れて。
私は、先生が運転する車の助手席に座っていた。
先生:「先に、大学に寄ってっていいかな。知り合いに渡す書類を取りに行きたいんだ」
私「はい」
──まず、軽く経緯を説明すると。 ファミリーレストランで食事を終えた後、先生の携帯電話に着信があった。 何やら小難しいことを言っていて内容は分からなかったけど、 どうやら誰かに呼ばれたようだった。
そしてレストランに来る客が増えてテーブルがいっぱいになっていたのもあって、 話の続きはまた今度、ということになったのだ。 恐らく社交辞令であろう「暗いし車で送ろうか」という先生の言葉に、私は頷いた。
その瞬間、露骨に嫌な顔をされたが気にしない。
まず大学に寄るというので、私はシートに凭れて、軽く目を閉じた。 先生の用事が済むまで少し休むことにした。
車が動き出す。
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先生:「──あの心霊写真」
しばし黙って運転していた先生が、不意に、口を開いた。 瞼を持ち上げ、何ですか、と答える。
先生:「友人が君に預けたんだっけ? その友人って、写真に映っている内の誰か?」 私「いえ。あの写真の右端の女の子いたでしょ?あの子……渡辺ちゃんっていうんですけど、 渡辺ちゃんの友達が私に寄越したんです。その子は渡辺ちゃんから貰ったって」
先生:「んん? じゃあ写真を手にしたのは、少なくとも君で3人目なのか。 どうして全く関係のない君に渡ってきたんだろう?」
私「私、高校生の弟がいるんですけどね。弟の幼馴染みに──えっと、そういうのが好きな女の子がいるんです。 女子高生の」
本当は、そういうのが好き、ではなく、霊やら何やらが「見えてしまう」体質の子なのだけれど。
うっかり先生に話そうものなら、その子に迷惑が掛かりかねない。
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先生:「ほう」
私:「それで友達が、『その子にあげたら喜ぶんじゃないか』って言って……。
……多分、心霊写真持ってるのが嫌だったんじゃないですかね」
先生:「なるほどね。渡辺さんから友達へ、友達から君へ、君から女子高生へ……。 心霊写真は転々と、か」
私は、例の写真を鞄から出した。 窓を通してちらちらと不定期に差し込む光を頼りに、写真を眺める。 正直、ただ真っ白な影が映っているだけだ。
テレビで見るような、恐ろしい顔をした霊とか体の一部が消えているとか──そういう、 いかにもおどろおどろしいものではない。
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先生:「……その写真、いつ貰ったんだい」
私「今朝。バイトに行く途中、道端で会って」
先生:「今朝? 道端でってことは、会う約束はしてなかったんだね」
私「はい。実は会うのも何ヵ月かぶりだったんですよ。 心霊写真を見て、さっき話した女子高生のことを思い出したらしいんです。 前に、その子について少しだけ友達に話したことがあったんで」
先生:「で、君の家に来る途中でばったり会ったと。それは何時頃だった?」
私「ええと、掃除のバイトに行くときだったから……結構早かったですよ。 7時前とか、それくらい」
先生は、ちょっと妙な表情をした。 真剣に考え込んでいるような、何かを面白がっているような。
先生:「……最初からあの封筒に入ってたの?」
私「入ってました」
先生:「その子、変わった様子はあった?」
私「……特には」 ふうん、と先生が頷く。
それから何となく、2人共、口を閉じた。
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先生は、VIP大学の駐車場に車を停めた。
私を助手席に残し、先生はエンジンをかけたまま降車する。
先生:「ちょっと待ってて」
私「はあ」 大学へ歩いていく先生の背中を、本当に教授なのだなと思いながら見つめる。 冷房の風が私の襟元を撫でた。 駐車場には他に何台もの車が停まっている。
午後7時半。 大学を見遣ると、明かりのついている窓が多く目についた。 高校時代、部活には入っていなかったけど、委員会の仕事などで夜まで学校に残ることが何度かあった。 そういった日に、外から校舎を見たときは真っ暗な印象を抱いたのに。 私:(大学って明るいのねえ)
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──ふと。
何気なくルームミラーを見て、ぎくりとした。
咄嗟に視線を外し、胸元を押さえる。
私(……いやいや……) 足が見えた、気がした。
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恐々、もう一度ルームミラーに視線をやる。
ある。
足が2本。 何度瞬きしても、何度見直しても、ある。
私(いや……いやいや……)
1週間と数日前、コンビニのトイレで遭遇した「奴」も初めは足とのご対面だった。 短パンから伸びる脚は細く、子供なのが分かる。 どうやら後部座席に腰掛けているようだった。 ルームミラーの角度のせいで、腰から先が見えないのは幸いか。
私:(先生戻ってきて早く来て) 振り返る勇気はない。
鏡から目を逸らす勇気もない。 ばくばくと跳ねる心臓。冷房の風が、ひどく冷たく感じられた。
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鏡の中で、子供が体を揺らす。
ゆらゆら、ゆらゆら。
いくら祈っても、先生は来ない。 それどころか、誰ひとり近くを通らない。
そうする内、子供の動きが激しくなっていった。 初めは左右に揺れるだけだったのが、段々、ジャンプするように足を踏みしめて 腰を軽く浮かしてから、一気に座席へ体重をかけるような動きに変わっていく。
後部座席の振動も激しくなり、車全体が揺れているのではないかと思えた。
どすんどすんと、助手席の背もたれに頭でもぶつけているかのような衝撃が伝わる。 〈ウ~……ウゥ……ウ~〉
呻き声らしきものがした。 間違いなく後ろから聞こえている。
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〈ウゥゥ~……〉
ぐるぐる、喉の奥で絡んだ痰が震えるような、そんな音が混じった呻き声。
間延びしていて、ともすれば間抜けにも思える響きが、余計に不気味だった。 それが徐々に大きくなっていく。
〈ォ……ァアザ……〉
私はようやくルームミラーから目を逸らし、自分の手だけを見つめた。 ドアの把っ手を掴む。開かない。鍵が掛かったままだ。
〈イ、ァア……ダ……ィョ……〉
震える指で鍵を押し上げようとするが、滑って上手くいかない。
どすどす、背中に衝撃。
〈オァ、ア……ザ……イアィヨ……〉
ばちん、と、大きな音をたてて鍵が開いた
〈……オアァザン……〉
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──お母さん、痛いよ、お母さん。
子供の言葉を理解すると同時に、私は、ドアを開けて外に飛び出した。 私の右手を掴もうとした小さな両手が、するりと滑ったような気がする。
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先生:「おや。何をしてるんだい」
私「……」 大学の正門から玄関まで続く、煉瓦の敷かれた道。
そこに設置されたベンチの一つに、私は腰掛けていた。 大学から出てきた先生が私に気付き、傍らに立つ。 彼が脇に抱えた大判の封筒と本が、互いに擦れ合って音をたてた。
先生:「トイレでも行きたいのかい?」
私:「先生……」
先生:「……何かあった?」 私の様子がおかしいのを察したらしい。 先生の瞳に好奇心の色が宿る。 癪ではあったけど。
私は、ぽつぽつと、先程の出来事を話した。 1人で抱え込むのが嫌だった。
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先生:「──それはなかなか面白……いや、怖い目に遭ったね」
話を聞き終えた先生は、うんうんと頷いた。 爛々と輝く瞳。私を本気で心配してはいない。確実に。
先生:「でも、ずるいなあ。何で君ばっかり……」
私「……」
先生:「そんなに睨まないでくれるかな」
肩を竦め、先生が息をつく。 並んでベンチに座っている私達の前を通りかかった学生が、 ぺこりと先生に一礼していった。
先生:「……件の『家』にまつわる噂なんだけれどもね」
返事をするのも億劫で、ちらり、先生を見る。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
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先生:「その多くが、子供に関するものだった。『子供の泣く声がする』『子供の霊が窓辺に立つ』『子供が歩き回る』──
他にも色々。両親が出てくる話は、とても少ない」
先生:「その内のどれが本当で、どれが出鱈目かは分からないけれど、 それだけ偏りがあるということは……まあ、そういうことだろう」
私は、頭が良くないなりに精一杯考えた。 噂は子供主体のものが多い。 ──両親は、どこにいるのだろう? もし。もしも。 両親は霊として留まることもなく、既に成仏なり何なりしていたのなら。 子供だけが取り残されたのなら。
先生:「あの写真の中で、白い影は女性に寄り添っていた。 ……もしかして、子供の霊は、親を探しているんじゃないかな。 幼い子なら、特に母親を必要とするだろう」
そこまで話して、先生は腰を上げた。 大判封筒の一つで私の頭を軽く叩く。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
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先生:「写真を寄越してきたお友達とは、付き合いを考え直した方がいいよ」
私「……え?」
先生:「というより、信頼出来る友人として接するのはやめようね」
急に何だ。 それは失礼ではないか、と抗議しようとしたけど、 まだそこまでの気力は戻っていない。
睨むだけの私を見下ろしながら、先生は話を続ける。
先生:「お友達は、写真の女の子からもらったんだっけ。 可哀想に。朝早くから君に写真押しつけたくなるほど、怖かったんだろうね」
私:「……何なの、先生」
先生:「伊藤君」 先生は、微笑んだ。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
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先生:「あの心霊写真。 子供の霊が写真に『写っていた』のではなく、
『潜んでいた』と考えれば、どうだろう」
私:「潜む……?」
──写真の中に潜む霊。 初めは被写体の女の子のもとに。 次は、友人のもとに。
「映画を思い出すね。ビデオを見た人が呪われちゃう感じの」 人から人へ。
写真と共に、霊が移動する。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
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私:「──じゃあ、友達は……」
先生:「多分、君に直接渡す気はなかったんじゃない? 君の家のポストにでも封筒を突っ込んで、 さっさと逃げて、知らんぷり決め込むつもりだったんじゃないかな」
先生:「後の始末は、きっと、君か──あわよくば、弟くんの幼馴染みさんに任せてさ」
──久しぶり、と、私に声をかけた友人の姿を思い出す。 互いの近況報告もそこそこに、私に封筒を持たせた彼女。
うっすらと目の下に隈は出来ていたが、以前と変わりない、明るい笑みを浮かべていた。 何だか、無性に。
寂しいような、悔しいような気持ちになった。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
- 車に戻ると子供は消えていた。 心霊写真は、欲しいと主張する先生に渡す。 それから私の家まで向かった。 家の前に来たところで、礼を言って降りる。 発進する車の後部座席に、一瞬だけ、子供らしき影が見えた。
- 1: 2017/4/01 00:02 master
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後日、駅前で先生に会った。
あれからどうなったのか訊ねると、
先生:「ラップ音みたいなのはするんだけどさ、肝心の姿が全然見えないんだよ。酷くない? 腹立ったから、写真燃やして、灰は元の家に撒いてきた」
とのお答えをいただいた。 それ以降、祟りらしいものも怪奇現象も、特にないらしい。
第二夜『心霊写真』 終わり
- 2: 2017/04/01 00:02
- 先生つええええええ 乙!
- 2: 2017/04/01 00:02
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先生つよすぎワロタ乙
心霊現象描写が怖すぎたせいでトイレ行けねえ
子供の霊はちゃんと成仏できたんだろうか
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