bandicam 2019-04-12 16-31-09-976



1: 200xミステリ-21:18:40.72 ID:veZIivoe0
もう三年前の話なんだがな









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2: 200xミステリ-21:20:20.97
聞こう
6: 200xミステリ-21:22:14.85 ID:veZIivoe0
家出した理由はそれなりに家庭の事情だった
両親不仲で毎日喧嘩してて嫌になって家飛び出した
十五歳だった

親の財布から抜いた一万円で全く知らない街に行った
自分の財布ぐらいしか持ってなかった
携帯は電話鳴ると鬱陶しいからおいてきた


夜の十時過ぎに電車降りた
それなりに都会だった
とりあえずどうしようと駅前の広場にあるベンチに座って考えてた
9: 200xミステリ-21:23:58.50
もうスレタイがうらやましい
10: 200xミステリ-21:24:34.85 ID:veZIivoe0
家出した高揚感が次第に収まっていった
だんだん都会が恐く思えてくる
まあガキだったし

歳上の男や女が凄く恐く思えた
だいそれたことをしてしまったんだと思って悲しくなった
半泣きだった

俯いてると声をかけられた

「なにしとん?」

顔をあげるとにやにやと笑う三人がいた
歳上の男と男と女だった

凄く不快な笑みだった

玩具を見つけた、みたいな
15: 200xミステリ-21:27:38.40 ID:veZIivoe0
逃げ出したくて仕方ないのに体が動かない
蛇に睨まれたカエルみたいな?

「なあなにしとん?」

目をまた伏せて震えた
今から消されるんだぐらいの勢いで恐かった

「大丈夫やって、なんも恐いことせんから」

悪役の台詞だと思った
けど今にして考えれば悪役じゃなくてもいいそうな台詞だ

とにかく当時の俺には恐怖に拍車がかかった

また震えた

ごめんなさい、と呟いた

「つまんね」

開放されると思った

「お金ある?」
20: 200xミステリ-21:30:42.67 ID:veZIivoe0
すぐにこれがカツアゲだとわかった
産まれて初めての経験だ
恐い恐い恐いって

あの時の俺はとにかく臆病だった

財布には親から抜いた一万円(電車代でちょっと減ってる)と
自分のお小遣い数千円があった

けどこれを失くしたらもうどうしようもなくなる

金がなくても警察に行けば帰れるとか、当時の俺は思いつかなかった
だからそのままホームレスになって4ぬんだと思った

ないです、と答えた

「嘘はあかんて。な? 財布だせや」

駅前の広場は他にもたくさん人がいたけど
誰も助けてくれる人はいなかった

ドラマじゃよく聞く光景だ
誰も助けてくれない

でもそれは本当なんだな、と思った

「なあ?」

男が俺の頭を鷲掴みにする
23: 200xミステリ-21:32:25.68
こええー
24: 200xミステリ-21:33:58.03 ID:veZIivoe0
言っておくがこの三人はただの不良だ
けどまあ、この三人のお陰で俺はお姉さんに拾ってもらえた

「なにしとん?」

それが初めて聞いたお姉さんの声だった
といっても

俺は向こうの仲間が増えたと思ってまたびくついた
けど三人の対応は違った

「なんやねんお前」

「いやいや、自分らなにしとん? そんなガキ相手にして楽しいん?」

「黙っとれや。痛い目見たなかったらどっかいかんかい」

「流石にガキ相手に遊んどるのは見過ごせんわ。ださ」

「あ?」

まあ、会話はおおよそだから。
でもこんな感じだったと思う。
26: 200xミステリ-21:35:07.87
なるほどな
29: 200xミステリ-21:37:34.46 ID:veZIivoe0
恐くてってどんだけ言うんだって話だけどやっぱり恐くて上が向けず
お姉さんがどんな人かもわからなかった

「調子のっとるな、しばいたろ」

三人組の女の声だ

他の二人も賛同したのか視線はそっちに向いた気がした
少なくとも俺の頭を掴んだ手ははなされた

「ちょっとそこの裏路地こいや」

とか、そんな風なことを言おうとしてたんだと思う
けど、それは途中で終わった

「うそやん」

妙に驚いてた気がする
声色だけでそう思ったんだけど

「シャレにならんわ。ほな」

関西弁の人ってほんとにほなって言うんだ
とか調子の外れたことを思った

それから暫くして
俺の肩に手が置かれた

びくっと震える

たっぷりの沈黙の後

「なにしとん?」
31: 200xミステリ-21:38:34.26
紅さそり隊
33: 200xミステリ-21:41:20.52 ID:veZIivoe0
さっきまでの三人組みたいな声じゃなくて
ちょっと優しい雰囲気があった
おそるおそる顔をあげると
綺麗なお姉さんがそこにいた

髪は長くて
真っ赤だった

化粧もしてて
大人のお姉さんだと思ったけど
今にして考えてみればあれは多分、V系だったんだろう

なんにせよ綺麗だった

同級生の女子なんてちっさく見えるぐらい綺麗だった

「ありがとうございます」

と、つっかえながらもなんとか言えた

「んなもんええけど、自分アホやろ? ガキがこんな時間うろついとったらアホに
絡まれんで」

家出したと言ったら怒られると思って下を向いた
お姉さんは大きな溜息を吐いた

「めんど、訳ありかいや」

やけに言葉が汚いお姉さんだと思った
34: 200xミステリ-21:43:26.51 ID:veZIivoe0
お姉さんスペック

身長170越(自称)
外だと厚底履いてるから175は越えてる

スレンダー
Dカップ
赤髪ロング
耳にピアスごじゃらら
関西人っぽい
年齢不明(見た目18~21)

綺麗だと思う
39: 200xミステリ-21:47:54.73 ID:veZIivoe0
暫く沈黙が続いた
というかお姉さんタバコ吸ってるみたいだった
タバコの匂いがやたら甘かった

「ああ……腹減った」

お姉さんが言う
言われてみれば俺も腹が減っていた

家出してかれこれ五時間
電車の中でポッキー食べたくらいだった

「ファミレス行こか」

「?」

「ファミレス。ほら、行くで」


近くのファミレスに行く
着いて適当に注文する

お姉さんは凄く目立つ
赤髪、ロング、黒服、ピアス

綺麗だし、目立つ

「自分なんも喋らんな。病気なん?」

「ちが、ちがいます」

「ああ、あれ? 恐い? そやな、よく言われるんよ、恐いって」

「い、いや」

なんて言おうとして否定したのかは知らんが、まあだれでもそう反応するだろ?
47: 200xミステリ-21:50:47.54
それで?
48: 200xミステリ-21:51:00.15 ID:veZIivoe0
俺はハンバーグ
お姉さんは野菜盛り合わせ

「んで、なんで家出したん?」

驚きすぎてむせた
なんでわかるんだこの人は、超能力者か
とか考えたかは知らんが驚いた

でも今にして考えれば解ることかもしれん

夜の十時すぎに家に帰らない子供
思いつくのは塾帰りで家に帰りたくないか
夜遊びするガキか
家出か

なのにその時の俺は塾に行くような鞄持ってなかったし
遊んでそうなガキに見えなかったろうから
家出

カマかけてきたんだろう

でも当時の俺はただただ
大人のお姉さんすげーって思うだけだった
50: 200xミステリ-21:52:38.14
俺も一人暮らしだけど家出したらこんな出会いあるかな
51: 200xミステリ-21:55:13.04 ID:veZIivoe0
「家が……色々」

「ふうん、そっか」

「まあその歳やといろいろあるわな」

「で、どないするん? いつかえるん?」

「……帰りたくないです」

「そりゃ無理やろ。仕事もないし、ってか仕事できる歳なん?」

「15です」

「ギリやな。家もないし金もないやろ?」

「……」

それでも帰りたくなかった
俺にとってあの当時の家はかなり地獄だった
まあ、もっと酷い家庭はあると今ならわかるけど

「一週間もしたら帰りや」

「……はい」

「ほんじゃ、飯食ったら行こか」

「?」

「うち、ヒト部屋空いとるから」

こんな経緯で俺はお姉さんに拾われた
57: 200xミステリ-22:00:16.89 ID:veZIivoe0
お姉さんの家は都会の駅から四つ
閑散とした住宅街だった

見た目とは裏腹な場所に住んでるなと思ったけど
住んでるのは高層マンションの最上階だった

お金持ちなんだと思った

「片付けてないけどまあ歩けるから」

「おじゃまします」

玄関入ると左手に一部屋
右手にトイレ、浴室
奥にリビング
リビングの隣に一部屋

「ここ、物置みたいなもんやから使って」

俺は玄関入って左手の部屋に案内された
ほんとに物置だった

「衝動買いしてまうんよね、はは」

お姉さんが照れくさそうに笑う
知れば知るほど見た目とのギャップに困惑した

でもそのギャップに惹かれた
67: 200xミステリ-22:05:25.52 ID:veZIivoe0
「とりあえず風呂でも入ってきたら?」

「はい」

初めて女の人の部屋に泊まるわけだけど
だからどうだって緊張感はなかった
ガキだったから



シャワーを浴びて体を拭く

「洗濯機の上にパジャマと肌着出しとるから」

見るとそれは両方とも男物だった
なんで男物があるんだろうと考える

以前同棲してたから?
ありうる
だから一部屋余ってるんだと思った

こんな綺麗なお姉さんだ、彼氏がいない方がおかしい


肌着とパジャマを着てリビングに行く

「サイズちょうどええみたいやな、よかったよかった」

「やっぱうちとおんなじくらいやねんな」

「……?」

「それ両方うちのやねん。男もんの方が楽でな」

途端に俺は恥ずかしくなった
いつもお姉さんが着ているものを着てるのだ


肌着も
74: 200xミステリ-22:08:09.99 ID:veZIivoe0
不覚にもおっきした
いや不覚もくそもないか
ガキだし

でもそれはバレないようになんとか頑張った
中腰で


「ん? んん? なーんや、お姉さんの色気にあてられてもたん?」

「ははっ、若いなあ」

速攻でバレた
恥ずかしさが一気にヒートする

「ええよ気にせんで、なんし男の子やねんから。ほら、そこ座り。コーヒー……は飲めんか」

「飲めます」

「おお、君飲む口か」

嘘だ、コーヒーなんて飲めない
苦い

でも子供扱いされたくなかった
75: 200xミステリ-22:08:30.74
むひょおおおおお!!!
77: 200xミステリ-22:09:25.43
お姉さん男物の肌着履いてるのか…?
90: 200xミステリ-22:16:27.32 ID:veZIivoe0
>>77
ボクサー肌着な
最近では女物のボクサーとかあるらしいぞ


お姉さんに一番気になっていたことを聞く

「どうして、その、泊めてくれるんですか?」

「そりゃもちろん」

なんだそんなことかと言わんばかりに
お姉さんは興味がなさそうに携帯に視線を戻して

「暇潰し」

「暇潰し、ですか」

「うん」

「そうですか」

「なんやとおもったん?」

「……?」

「お姉さんが君に惚れたとでも思った?」

「いえ」

「そこは嘘でも頷いたらいいボケになんねんけど、ってあ、君こっちの子ちゃうんよな」

「はい」

「ほんじゃせっかくやねんから関西のボケとツッコミを勉強して帰りや」

「はあ」

「そしたら家のことも大概どうでもよくなるわ」


それは嘘だと流石に思った
80: 200xミステリ-22:12:12.27 ID:veZIivoe0
コーヒー
目の前にブラックな飲料が差し出される

「砂糖は?」

首を横に振った
湯気だつコップを持つ
覚悟を決めて口につける

うげえ

「はっはっは! 梅干食っとうみたいなっとうやん!」

お姉さん爆笑
俺は俯く

「無理せんでええて。ミルクと砂糖持って来たるから」

「うちも自分ぐらいん時コーヒーなんて飲めんかったし」

その言葉で救われた気がする
お姉さんも子供の時があったんだな、なんて
当たり前なんだけど


「あの」

「ん?」

お姉さんは頬杖をついて携帯をいじっていた
話しかけると綺麗な目を俺に向ける

まっすぐに向ける
心が囚われる

「どないしたん?」

「あ、えと」
84: 200xミステリ-22:12:43.56
おいついた
おねぇさんって良いよな
97: 200xミステリ-22:20:15.93 ID:veZIivoe0
俺自身口下手な方だし
お姉さんは自分の世界作ってるような人だし
特に会話は続かなかった

お姉さんの部屋から流れる音楽
フィーリング音楽?
が心地よくて
時間が過ぎるのを苦もなく感じられた


「そろそろ寝るわ」

「はい」

「明日はうち夜から仕事やから」

「はい」

「夜からの仕事、ついてこれるように調節してな」

「……はい?」

「やから仕事やって。自分、もしかしてタダで泊めてもらえるおもたん?」

「いや、そんなことは、ってかその僕、大丈夫なんですか?」

「平気平気。うちの店やから」


お姉さんは自分の店も持っていた
先に言っておくとそれはBARなわけだけど
やっぱりお姉さんかっけーってなった


まさかあんな格好させられるとは思わなかったけど
101: 200xミステリ-22:24:17.44 ID:veZIivoe0
夜から仕事で起きるのが夕方だったから
俺は結局朝まで起きてた
それ事態は物置にある本棚に並べられた本を読んでれば問題なかった

夕方に起きる
リビングに行くと机の上に弁当があった
メモで食べるようにと書かれている
そして五時に起こすようにと書かれている

お姉さんは寝ていた

まだ四時すぎだったので先に弁当を食べた
食べ終わってお姉さんの部屋の扉を開ける

やけにいい匂いがした
凄く緊張した

手に汗がにじむ

「おねーさーん」

扉から声をかけるもお姉さんは起きない
意を決して中に入る
ベッドの上ですやすやと寝息を立てるお姉さんがいた

「お姉さん、おきてください」

お姉さんは起きない
薄暗い部屋で目を細めてお姉さんの寝顔を覗く

起きてる時に比べればブサイクだった
化粧をしてなくてブサイクとかじゃなくて
枕で顔が潰れててブサイクだった
でもどこか愛嬌があって

いうなればぶちゃいくだった
102: 200xミステリ-22:28:27.20 ID:veZIivoe0
間近で見てると胸が高鳴った
今ならなにをしてもいいんじゃないか、なんて思い始める
そんなわけないのに

そんなわけがないのに手が伸びる

ゆっくり
静かに

鼓動がどんどん大きくなる
あわや心臓が口から飛び出しそうになる

やめておけ、と誰かが言うが
やっちまえ、と誰かが言う




俺はお姉さんの頭に手を置いた

見た目より痛んでない髪に手を通す

撫でる

「ふにゅ」

それは形容しがたい寝声だった
ってか多分これは美化されててふにゅなんだろうけど
なんだろう

文字にできない可愛らしい言葉ってあるだろ?
お姉さんはそんな声を出した


優しく
愛でるように撫でた

お姉さん、可愛いな

とか思いながら撫でた


だから気づかなかった
お姉さん、もうとっくに起きていた
103: 200xミステリ-22:29:25.06
うひゃあああああ
109: 200xミステリ-22:32:02.62 ID:veZIivoe0
「なにしてんの?」

怒っている風ではなく
優しい寝起きのぼやけた声色だった

「す、すみませんっ」

逃げ出そうとした

「ええよ」

「撫でててええよ。気持ちいいから」

了解を得たので再び座り込んでお姉さんの頭を撫でる

「うん、君撫でるの上手いな」

「今日はうちが寝る時撫でててもらおかな」

「はい」

十五分くらいか
お姉さんの頭を撫で続けた

お姉さんは心地よさそうにしていた
俺もなんだかとても心地よかった

「さて、支度しよか」

それの終わりがきたのはやっぱり少しだけ残念だった
112: 200xミステリ-22:32:46.55
胸がキュンとします
116: 200xミステリ-22:34:32.63
若返った気がする。



気のせいなのはわかってるけど…
118: 200xミステリ-22:35:25.42
羨ましいな...
119: 200xミステリ-22:35:50.22 ID:veZIivoe0
「……なにしてるんですか?」

「ちょ、動かんといて」

「いやほんと、なにしてるんですか?」

「やから動かんといて」

「……はい」

俺は化粧をされていた

「んー、まあこんなもんか」

「なんで化粧されたんでしょう」

「化粧するとな、年齢がわからんくなるんよ」

「ほら、それに君うっすい顔してるし。めっちゃ化粧映えするわー」

「はあ」

「んで、そやなーふふふーん」

「楽しそうですね」

「あんまないからなーこんな機会」

「あ、これでええな」

「……冗談ですよね」

「冗談なわけないやん。その顔で男もんの服着る気?」

「その顔ってか俺は男です」

「どこがあ。鏡みてみ?」

そこにはとても可愛らしい女の子がいました
なんて流石に言いすぎだが

確かに女の子がいた

化粧こええ

「君若いし、女装すんなら今のうちやって」

「……」

俺はいろいろと諦めた
123: 200xミステリ-22:39:05.53 ID:veZIivoe0
可愛らしい化粧をされて
可愛らしいスカートはかされて
可愛らしい服を着せられて
タイツもはかされて
俺なにやってんだろう

もちろんヅラも被されて


お姉さんの店はあの都会の駅だ
電車にも乗った

派手な二人組だった

「お姉さん、流石にこれは」

「喋らんかったらバレんから大丈夫やって」

俺は喋れなくなった


BARにつく
普通のBARだった
普通の、といってもなにが普通かわからんが
イメージ通りのBARだった

要はちょっと暗くてお洒落

小さな店だった

カウンターが七席にテーブルが一席

「なにしたらいいですか?」

「とりあえずトイレ掃除から。あ、上着は脱いでな」

ってなわけで俺は店の掃除を始めた
127: 200xミステリ-22:45:42.72 ID:veZIivoe0
トイレ掃除
床の掃き掃除
テーブル拭き掃除
グラス磨き

「お客さんが来たらこれ二つずつ乗っけて出すんよ」

とそれはチョコとかのお菓子

「あとはそやな。これが~」

冷蔵庫の中のメニューを三つ教えてもらう
(お皿に盛り付けて出すだけ)

「んでお客さんが帰ったらグラス回収やらしてテーブル拭いてな」

「は、はい」

「今日はそんな客多くないから緊張せずに慌てずに、やで」

「頑張ります」

「まあ自分の一番の役目はそんなんとちゃうけど」

お姉さんが悪い笑みを浮かべた気がした
その意味は後に知ることとなる


開店から三十分、二人組の女性が来る

「おねーさんこんちゃーってなにこのこ! ちょーかわいいやん!」
「おねーさんどこで誘拐してきたん!?」

「誘拐なんかせんでもほいほいついてきまうんよね」

「あかんで、あのお姉さんについていったら食われてまうでー」

「いや、あの、そんな……これ、どうぞ」
言われてた通りお菓子を出す。

女性二人は目を丸くしていた

「……男の子やん! うわあうわあうわあああああ!」

二人の女性のテンションが上がる。
131: 200xミステリ-22:49:58.71 ID:veZIivoe0
その後は落ち着いた女性客とお姉さんやらが話して
その日は計七組のお客さんが来た

入れ替わりがあったから満員にはならなかったけど


「はい、お疲れ」

お姉さんがジュースを出してくれる
なんだかんだで疲れた
主に精神的に

「いやー大盛況やったね、君」

「……はあ」

俺はようするにマスコットキャラクター代わりだった。
来る客来る客珍しいものを見る風に
ってか本当に珍しいんだろうけど
わいのわいのと騒ぐ

「あの」

「ん?」

「真っ青な髪の男性客の人、今度ホテル行こうとか言ってましたけど、冗談ですよね」

「ああ、あれな」

「ほんまにホテル付いてってくれたらラッキーってなぐらいちゃう?」

世間は広い
俺は色んな意味でそう思った
133: 200xミステリ-22:53:19.86 ID:veZIivoe0
閉店作業をして家に帰る
もう朝だ

家に着くなりお姉さんはお風呂に直行した

「一緒に入るか?」

とか言われたけど盛大に断った
恥ずかしくて無理

お風呂から出てきたお姉さんは凄くラフだった

どっからどう見ても見えそうで
薄いパジャマを着ていた

前のボタンを途中までしか締めてなくて
胸元が思いっきり露出している

「熱いわー」

思いっきり見えてしまった 

目を逸した

「ああ、そや、化粧落としたるわなー」

この間、服もどうすればいいのかわからないので
俺はずっと女の子である
142: 200xミステリ-22:59:34.05 ID:veZIivoe0
化粧を落とすためにお姉さんは凄く近くに寄ってきた
勘弁してください

「玉の肌が傷んでまうからなー」

優しく化粧を落とすお姉さん
胸が見せそうで見えない角度

胸の横っかわはずっと見えてて
俺はそれに釘付けだった

息子も釘付けだった

「よし、顔洗ってき。そのまま風呂入ってき」

「はい」

急いで俺は浴室に直行した
もう限界だ

やばい、本当にやばい

そりゃしたさ
うん、そりゃするさ
だってガキだもん 猿だもん

そんなわけですっきりした俺は風呂から出て
またお姉さん肌着パジャマに身を包む

コンビニ弁当を食べて
またコーヒーを頼んだ

「飲めんやろ?」

「飲めます」

「はいはい」

出されたコーヒーにやっぱり梅干の顔をした

「はははっ、懲りんなあ」

暫く時間が流れて

「はあ、そろそろ寝よか」

「おやすみなさい」

「なに言うとん。一緒に寝るんやろ?」

目が点になった
148: 200xミステリ-23:03:43.62 ID:veZIivoe0
なにを言ってるんだろうと思った
そんな約束はしていない

「なに驚いとん。髪撫でてくれるって言うたやん」

あれってそういう意味だったのか

「丹精込めて撫でてやー」

丹精込めて撫でるってなんだろう

「ほら、寝るで。明日も仕事やねんし」

小さく頷く


お姉さんの部屋に入る
あの落ち着くBGMが流れてた

「奥はうちやから」

「はあ」

ベッドに誘われて入り込む
お姉さんの匂いがした
もうそれだけで眠れそうだった

「はい」

「?」

「ぼうっとしとらんで、ほら」

「あ、はい」

お姉さんの髪を撫でる
俺よりもずっと身長の高いお姉さんの髪
綺麗な髪
赤い髪

撫でる度にいい匂いがする
152: 200xミステリ-23:07:06.29 ID:veZIivoe0
「なあ」

「はい」

「彼女おるん?」

「いや、いないです」

「の割に髪撫でるの上手いな」

「多分、犬飼ってたから」

「犬? 犬とおんなじか」

「すみません」

「それも悪くないかなあ」

「はあ」

「だって撫でてくれるんやろ?」

別にお姉さんだったら犬でも猫でもワニでも蛇でも撫でる

「なら犬も悪ないな」

「お姉さんは」

「ん?」

「お姉さんは、その、彼氏、とか」

「おらんよ。おったら流石に連れ込まんわ」

「ですよね、はは」

嬉しかった

「でも、好きな人はおるかな」

言葉が詰まる
息が苦しくなった

そのお陰で

「そうですか」

と噛まずに言えた
160: 200xミステリ-23:11:15.50 ID:veZIivoe0
なんでだろう
凄く夢見た光景なのに
男の夢って具合なのに

なぜだか辛かった
きっとお姉さんに好きな人がいると聞いたからだ

理由はわかってた

胸は苦しい
なのに心地いい

お姉さんを独り占めしている気がした
お姉さんの好きな人にだってこんなことはできないだろうと思った

けど俺はお姉さんの好きな人には成り代われない

結局、お姉さんはその内に眠っていた

泣きそうだったけど
俺もなんとか眠ることができた


起きると横にお姉さんがいた
頭を撫でて、起きてくださいと言う

お姉さんは寝返りをうって抱きついてくる
心臓が一気に跳ね上がる

もうずっとそのままでいたい


でもお姉さんはその内に目を覚ました
抱きついていることに気づくと、より深く顔を埋めた


「ごめんな、ありがとう」


お姉さんの言葉の意味がわからなかったけど
とりあえずお姉さんが喜んでくれるならと
俺はお姉さんの頭を撫でた
163: 200xミステリ-23:14:29.29
キュンキュン
166: 200xミステリ-23:16:04.99
なんだか切ないよ
167: 200xミステリ-23:17:14.81 ID:veZIivoe0
店について開店作業
とりたてて難しいことがあるわけじゃないので忘れてはいない

その日も疎らにお客さんが入っていた

何組目のお客だったか
中盤ぐらいでその人はきた

「よお」

やけにいかつい顔の人だった
ってか怖い人だと思った

「なんやねん」

少なくともお姉さんはその人を嫌っているようだった

「この前の借り、返してもらいに来た」

「自分が勝手にやったんやろ」

「でも助かったろ?」

席に座ったのでいらっしゃいませと通しを出す

「おお、この前のガキンチョか? 随分変わったなあ」

「?」

「なんだ覚えてねえのか。助けてやったろ?」

なにを言ってるのかさっぱりわからなかったのでお姉さんを見やる。

「不良に絡まれとった時、こいつが追い払ってん」

なるほど、それであの三人は逃げたのか。
そりゃこんな顔に睨まれたら逃げたくもなる。

「ありがとうございました」

「気にすんな。お陰でこいつにいいことしてもらえるからな」

「誰がするか」

「本気だ」
168: 200xミステリ-23:18:38.08
( ゜д゜)………
171: 200xミステリ-23:19:28.38
ゴクリ
179: 200xミステリ-23:22:53.30 ID:veZIivoe0
ガキでも解る三段論法

俺を助けるお姉さんを助ける強面

それをネタにお姉さんを脅迫

原因は俺

「あの」

「ん? どうした、坊主」

「……困ります」

「……あ?」

「そういうの、困ります」

「おいガキ」

強面が俺の胸ぐらを掴んで引っ張り上げる
なんでこんなこと言ってるんだろう俺はと後悔した

「おいオッサン、その手離さんとキレるで?」

お姉さんがドスの低い声で強面に言う
でもそれもこれも嫌だった

俺が子供だからこうなったんだ

「あの」

強面がこっちを向く
それに合わせて思いっきり手をぶつけてやった

平手で

多分、グーで殴ることが恐かった
そういう経験がなかったから
だから平手で殴った

強面は鼻血を出した
181: 200xミステリ-23:24:28.23
よくやった。
187: 200xミステリ-23:27:19.25
強面もろいなw
188: 200xミステリ-23:28:10.93 ID:veZIivoe0
「ガキ……調子に乗りすぎだなあ?」

強面の恫喝に身が震えた
殴るなんてことはついやってしまったことに近くて
それ以上のなにかなんて無理だった

外に連れ出された俺は
五六発ぶん殴られた

こんな痛いことがあるんだと知った
もう人を殴るのはよそうとか考えてた

お姉さんが後ろから強面を止める
強面がお姉さんを振り払うと、壁にぶつかった

お姉さんが痛そうな声をだした

なにを考えたわけでもなく強面に突撃する
なにもできないけど許せなかった

振り払われて、また殴られて

「気分悪い、二度と来るか」

捨て台詞を吐いて、強面は帰った


お姉さんが中の客を帰して
意識の曖昧な俺を看病してくれた

どう看病してくれたかは覚えてないけど

お姉さんは泣いていたような気がする

ごめんな、ありがとう

と言っていた気がする
でも、俺にはやっぱり意味がわからなかった

殴られたからか、わからなかった

お姉さんが泣いているのは見たくなかったから
泣かないで、と手を伸ばした

お姉さんの頭を優しく撫でた
201: 200xミステリ-23:36:01.61 ID:veZIivoe0
気づくとお姉さんの部屋にいた
いつの間にか気を失った俺はお姉さんに運ばれたらしい

寝起きだからかぼうっとする
でもおでこがひんやりと気持ちいい

「おはよ」

お姉さんはベッドの横にある勉強机みたいなやつのイスに座ってた
パソコンを触ってたらしい

「おはよ、ございます」

起き上がろうとしたけど体が痛くてうめき声が漏れる

「あかんて、今日はゆっくりしとき」

「でも、仕事」

「なに言うとん。そんな面じゃお客さんびびるし、あの鬱陶しい客が二度と来ん言うてんから、うちとしては充分や。ほんまにありがとう」

「君はうちの幸運やな」

「役に立てました?」

「充分やって。あの客な、前から鬱陶しかってん。ああやって誘ってきてて。でも多分、ほんまに二度とこんやろ。なんせ、十五歳の子供に鼻血出されてもうたからな。メンツが立たんで」

にやりとお姉さんは笑う。

「凄いな、自分。恐かったやろ、痛かったやろ」

強かったけど、痛かったけど
それどころじゃなかった
そんなことどうでもいいぐらいに怒っていた

「別に」

「かっこつけんなや。でも君」

「かっこよかったよ」

嬉しいよりも照れくさい
俺は布団の中に顔を隠す


「なんか食べられそうなもん持ってくるわ。口ん中切れとるやろうけど、ゼリーなら食えるやろうから」
210: 200xミステリ-23:40:31.07 ID:veZIivoe0
ゼリーは確かに食べられたけど
口の中は切れてて痛かった
でもまあ

「はい、あーん」

「自分で食べますよ」

「ええから」

「いや」

「はよ口開けろや」

「はい」

お姉さんが食べさせてくれたからなんでも食べれた
お姉さんが食べさせてくれるなら納豆でも食べれそうだった
納豆嫌い


「なんか欲しいもんある?」

「欲しいもの?」

「漫画でも食べ物でも用意するから。高いもんは勘弁してほしいけどな」

「じゃあ」

俺はこの時も知らなかったけど
殴られすぎると熱がでるらしい
だから思考があやふやになって
突拍子もないことを言ってしまうようだった

「お姉さん」

言ってから後悔した
なんてことを言うんだ俺は、って


「な、なんでもないです」


「うちは奥やからな」


お姉さんがベッドに潜り込んでくる
229: 200xミステリ-23:46:44.69 ID:veZIivoe0
一緒に眠った経験もあるわけだけど
その時とは雰囲気が違って
俺は借りてこられた猫のように固まった

「こんな」

お姉さんの手が頭に触れる
いつも俺がそうするように
優しく髪を撫ではじめる

「こんなぼろぼろになってもうてな」

「ごめんな」

別にぼろぼろになるのもぼこぼこになるのも
お姉さんを守れたならそれでよかった

お姉さんが喜んでくれてるし
ちょっとでも役に立てたみたいだし


お姉さんが頭を撫でる
それはとても心地いい

「ほんで」

「どないしてほしいん?」


それに答えられるわけもなく
恥ずかしくなって顔を反対側へ背けた


「なんてな、はは」

「それはちょっと卑怯やな」

お姉さんの手が首の下に移動する
それこそ犬猫のようにそっと撫でられて
くすぐったくて体が跳ねた


「こっち向いて」

耳元でそっと囁かれた甘い言葉に脳が痺れた

視界すらぼうっとしている中でお姉さんの方に振り向くと

唇が唇に触れる
369: 200xミステリ-00:44:08.46 ID:x60gR+VC0
風呂から出て、お姉さんの部屋へ
俺は家にパソコンがなかったからお姉さんがパソコンで遊んでいるのに興味深々だった

「なに見てるんですか?」

「これ? 2ch言うてな」

因みに2chもお姉さんから知った


お姉さんと馬鹿なスレを覗いて笑っていた
お姉さんは話始めると話上手で
スレのネタに関連した話題をこっちに振ってくる

それに返すだけで話のやり取りが進む

そういうのはBARの店長だけあって上手だった


暫くして眠ることに
流石に翌日は仕事に行かなければならない

「僕も行きますよ」

「気持ちだけでええよ。辛いやろ?」

辛いとかそんなんじゃなくてお姉さんと一緒にいたいだけなのに

と思った


「君はほんま可愛いなあ」

と思ったら口に出てた


「ええよ、やけど仕事はさせんで。それやと化粧できんし、まだ腫れとるからな」


二人で一つのベッドに寝転がる
このまま時が止まればいいのに
378: 200xミステリ-00:48:34.77 ID:x60gR+VC0
このまま日課にしてしまいたい行事
お姉さんの頭を優しく撫でて
お姉さんが眠るまで隣にいること

うとうとするお姉さんの横で
お姉さんが心地よさそうに震えるのを見てられること

「気持ちいいですか?」

「それさっきのお返し? 気持ちいいよ、もっとして」

撫でていると心が安らかになる
なんでか、お姉さんよりも優位に立った気がする

「お姉さんも可愛いですよ」

「君に言われたないわ」

「ほんとに」

「はいはい……ありがと」

本当にたまらなく可愛いからいっそのこと撫で回して抱きしめ尽くしてむちゃくちゃにしたくなるけど
お姉さんはそのまま寝入っていくから

俺も暫くして眠った
401: 200xミステリ-01:02:21.77 ID:x60gR+VC0
そのあとも仕事は続いて
でもどことなく仕事に身が入らない
といっても、ミスをするような仕事内容でもないからいいけど

お客さんが話しかけてきてもぼうっと返事を忘れてしまうくらい


家に帰るまで気が気じゃなかった
お姉さんの話っていうのは十中八九俺が知りたいことだろう


お姉さんが好きな人のことだろうから


家に帰って
お風呂にも入らずお姉さんは飲み物を用意する

もちろん俺はコーヒーを頼んだ

「飲めんくせに」

「飲めるようになります」

「ええやん、飲めんでも」

「嫌です」

「子供やなあ」

子供扱いされてついむくれてしまう

「はい、どうぞ」

差し出されたコーヒー


うげえ


「それで、話してくれるって言ってたことなんですけど」

「話逸したな」

ははっ、とお姉さんはいつものように快活に笑って
口を開く
407: 200xミステリ-01:08:42.05 ID:x60gR+VC0
「好きな人おるって言うたやん? その人のことやねんけどな」

「手っ取り早く言うけど、もうしんどんねん、そいつ」

「なんつーか病んどったからなあ。しんでもた」

「ここで一緒に暮らしとった。BARはそいつと一緒に初めてんよ」

「親友やったし、同時に恋人やった」

「たったそんだけのありきたりな話や」

「なんでしんじゃったんですか?」

「さあな。遺言はあったけど、ほんまかどうかわからんし」

「まあ、そいつが言うには、恐かったんやて」

「うちを幸せにできる気がせんって」

「想像つくんかどうか知らんけど、うちもそいつもろくな家庭で育ってないねんよ」

「うちは親から虐待受け取ったし、そいつは親に捨てられてたし」

「十六ん時に会って、似たもの同士やからか気が合って」

「二人で金貯めて家借りて、店も出した」

「けっこう上手く行っとってん」

「あいつはなにが恐かったんやろなあ……幸せにしてくれんでも、一緒におってくれるだけでよかったんに」

「あいつの保険金でこの家は買い取った。なんか、あいつが帰ってきたらって考えるとな」

「ありえへんのやけど」

「……まだ好きなんですか?」

「どやろな。うち残して勝手にしんだアホやから、まだ好きか言われたらそうでもないかもしれん」

「やけど忘れられへんねん。あいつのこと」


それは十五歳の俺には身に余る
とても重たい過去だった
413: 200xミステリ-01:15:55.54 ID:x60gR+VC0
「まあ、そういう話。たいしておもろないから話すのは好きちゃうんやけど」

「……君、うちのこと好いとるやろ?」

「あ……はい」

「やから、君には話とかななって」

「うちを狙ってもいいことないで、ってな」


「……関係ないですよ、そんなこと」

「俺はお姉さんのこと、好きですし」

「お姉さんがこうしていてくれるなら、俺はそれだけで充分です」

「無理やん、それも」

「こうして大人になるとな、子供をそんな道に引っ張るんがアカン、ってことぐらい思うんよ」

「君にはどんなんか知らんけど家族がいるし、なにより未来があるからなあ」

「うちみたいな女にひっかかっとったらあかんねんって」

「引っ掛けたんうちやけどさ」


「お姉さんは俺のこと嫌いですか?」

「嫌いなわけないやん」

「じゃあ、いいじゃないですか」

「来年、というか暫くしたら高校生です。高校卒業したらこっちに来ます。それからじゃダメですか?」

「……」


お姉さんが口ごもる
なにを考えているんだろう
お姉さんが考えていることなんて一つもわからない

俺が子供だったからなのか
お姉さんが特殊だったからなのか


お姉さんはたっぷりの間を置いて

ええよ、と答えた

けれどどうしてだろう、不安が拭えない
ええよ、と言ってくれるならどうしてお姉さんはそんなに

寂しそうだったんですか?
417: 200xミステリ-01:17:45.62
これが3年前か
418: 200xミステリ-01:18:04.39
少女マンガ的ならこのあと >>1 を好きだという女が現れる
424: 200xミステリ-01:21:42.75 ID:x60gR+VC0
「今日が最期やな」

「最期じゃありません。暫くしたら会いに来ます」

「そやったな。ま、とにかく」

「今日は遊ぼか!」

「でもお店は?」

「自営業はな、融通聞くねん」

「どこに行きましょうね」

「映画なんてどない?」

「いいですね」

「よし、じゃあ早速!」

「化粧はしませんよ」

「ええやん、あれ可愛いやん」

「俺は男ですから」

「今だけやで? 三年後はできんぐらい男らしゅーなっとるかもしれんで?」

「それでいいです」

「ったく、ケチやなあ」


なんとか化粧をされずに出かけることとなる
初めてのお姉さんとデート


映画を見て、ご飯を食べて、ゲームセンター行って
楽しくないわけがなかった
430: 200xミステリ-01:25:16.41
もうバッドエンドの雰囲気たっぷり。

でも最後は二人とも幸せになってもらいたい。
432: 200xミステリ-01:26:23.76 ID:x60gR+VC0
夜はお姉さんが料理を作ってくれることになり
帰りがけにスーパーで食材を買い込んだ

「こう見えて料理には自信あんねん」

「楽しみにしてます」

「ほんまかいや。君どうも感情薄いからなあ。だいたい、いつまで敬語なん?」

「癖なんで」

「律儀な子がいたもんやわ」

慣れた手つきで食材を調理していく
野菜を切って、肉を切って
したごしらえして、炒めて

一時間ぐらいで料理が出された

「どないよ」

「おお……予想外」

「は? なんやて?」

「予想通りな出来栄え」

「それはそれでええ気分せんわー」

実際、料理は美味しかった
というか料理の美味さよりなによりも

お姉さんのエプロン姿が一番刺激的でご飯どころじゃなかった


なんというか、お姉さんってほんと綺麗だなあ、と
438: 200xミステリ-01:32:23.85 ID:x60gR+VC0
「ごちそうさまでした」

「お粗末でしたー」

洗い物を手伝いながらふと思う
こんな風に生活できるのも、もう暫くはないんだと

三年
少なくとも三年は遠いところに居続けることになる

たまに会えてもそれだけだろう
なによりお姉さんは本当に俺を待っていてくれるんだろうか?


不安が顔に出ていたのか、お姉さんが後ろから乗っかかってきた

「な」

「はい」

「うち、好きな人できてん」

「はあ」

「気のない返事やな。告白されとんねんで?」

「……嬉しいですよ」

「こっち向きや」

「はい」

触れるかどうかの小さなキス

「ほんまに、好きやで」


お姉さんと初めて会った頃のように
俺はまた動けなくなった

この人はどれだけ俺の知らないことを知っているんだろう
446: 200xミステリ-01:37:56.68 ID:x60gR+VC0
別々にお風呂に入ってゆったりとした時間を過ごす
何度でも挑戦するがやっぱりコーヒー

「さああ飲めるでしょうか!」

お姉さんはノリノリだ
因みにまだ飲めたことはない


ごくり、と喉を通す

あれ?

「これ、飲めます」

「やったやん!」

「というかこれ、いつもと苦味が違います」

「うん、それについては謝らなかん」

「?」

「うちよう考えたら濃い目が好きでな。君が飲んどったんめっちゃ濃かってん。やから普通のお店レベルに薄めてみた」

「……はあ」

「ま、まあええやん、飲めたんやし。ほら、最初にきっついのん経験しとくとあとが楽やん? な? はは……怒った?」

「別に怒りませんよ。ちょっと、肩透かしな気分です」

「よかった」

時間は過ぎる
お姉さんといられる、短い夜


「ほな」

寝よか


聞きたくない言葉は当たり前にやってきた
450: 200xミステリ-01:42:00.80 ID:x60gR+VC0
お姉さんは奥
俺は手前

七日間続いたお伽話も今日で終わる

明日、目が覚めたら
お姉さんが仕事に行くついでに俺は帰る


嫌だ
帰りたくない
ずっとここにいたい

そう考えても意味がない
言えない気持ち

言ってもお姉さんが困るだけだ


撫でる髪は今日も柔らかい
お姉さんの綺麗な髪は今日もいい匂いがする

ずっと撫でていたい

ずっと傍にいたい

どうして俺は十五歳なんだろうなんて
どうしようもないことに苛立った


お姉さん、お姉さん


「なあ」


答えられなかった

今口にしたら、なにかを言葉にしたら

一緒に涙まで出てしまう


「この前の続き、しよか」
468: 200xミステリ-01:53:47.46
めっちゃ切ないやんか
545: 200xミステリ-03:04:06.55 ID:x60gR+VC0
翌日


昼過ぎに起きた俺はお姉さんに黙って部屋の掃除を始めた
トイレ、お風呂、玄関、物置、キッチン、リビング

最期にお姉さんの部屋

「……なにしとん?」

「掃除。お世話になったので」

「生真面目やな、ほんま。こっちおいで」

「はい」


寝転がっているお姉さんの横に行くと、頭を撫でられた

ええこやな、といつも口調で

嬉しかったからお姉さんの頭を撫で返す

ええこやな、とお姉さんを真似て


「……関西弁へったくそやな」

「そうですか?」

「なんかイントネーションがちゃうわ」

「難しいですね」

「今のまんまでええよ」

「君は君のまんまでええよ」

「はい」


お姉さんが仕事の支度を始めたら帰るのはもうすぐだ

家に帰ったら両親は怒るのだろうけど、どうでもいい

それだけ価値のある人に出会えた


「行こか」

それには答えられずただ
引かれた手に連れられて外に出る
549: 200xミステリ-03:10:57.84 ID:x60gR+VC0
家を出て近くの駅へ
そこから都会の駅まで僅か十分

お姉さんはずっと手を繋いでてくれた
お姉さんの手はとても暖かった

白状するけど俺は既に泣いていた

声を頃して
俯いて
泣いていることを悟られずに泣いていた

きっとお姉さんはお見通しだったろうけど


都会の駅に着く

俺の家はここから本当に遠い


「暫くのお別れやな」

「ありがとうございました」

「今度はいつ来る?」

「夏にでも来ます。速攻バイトして、お金貯めて」

「そっか。ほんじゃ、待っとくわ」

「あの、これ」

「ん?」

「携帯番号です。電話、くださいね」

「うん、電話するわ」


嫌な予感しかしなかった
今ここでお姉さんの手を離したら
二度と会えなくなるような気がした

「お姉さん」

「ん?」

「ごめんなさい」

「なに謝っと……」


俺よりも身長の高いお姉さんの
肩を掴んで引き下げて
無理矢理キスをした

そこはまだ駅のホームで人目がつく

長い時間のように思えて
それは一瞬のことだった
550: 200xミステリ-03:15:03.18 ID:x60gR+VC0
「強引やな」

「ごめんなさい」

「嫌いちゃうけど」

「すみません」

「お返しっ」

今度はお姉さんの方からキスをしてきた
その時間は本当に長かった

二分、三分?

お姉さんは 
人目も気にせずに没頭した

俺もなんだかだんだんどうでもよくなってきて
人目よりもなによりも
お姉さんの気持ちに応えたくて


だってお姉さんは俺よりもずっと大人で
お姉さんはとても綺麗な人で
BARの店長とか格好良い職業で

モテないわけがない

こんな一瞬、奇跡に違いない
夢でないことがいい証拠だ


だからきっとお姉さんは俺を忘れる

俺はいつまでもお姉さんを忘れられないだろうけど


「大好きです」

「うちもやで」

「また来ますから」

「うん」

「絶対に来ますから」

涙が止まらない

この約束が嘘になると思ってしまって
ずっと涙が止まらない
552: 200xミステリ-03:16:44.85
切ないわ
553: 200xミステリ-03:19:28.65 ID:x60gR+VC0
電車が来る

お姉さんが微笑む
俺の頭を撫でる

俺は泣きじゃくったただのガキで
駄々をこねるただのガキだ

電車が扉を開ける

中に入る

泣くなや、男の子やろ?

扉を締める合図が響く






お姉さんが僕を抱きしめる

ほんまに

ぎゅうっと強く、抱きしめる

ほんまに

車掌の警告が響く

大好きやで

けたたましいサイレンが鳴る

ありがとう

お姉さんが離れる

ドアが締まりかけた頃合で

お姉さんは快活に微笑んだ

目尻に込めた涙を無視して


「バイバイ」




別れの言葉を口にした
556: 200xミステリ-03:22:16.12 ID:x60gR+VC0
家に帰ると鬼の形相をした両親に迎えられた
がーがー怒っていたけど、なぜだろう
俺はそれがとても嫌だったのに、ふと思った

二人も子供なんだろうな、って

お姉さんがお姉さんだったように
お姉さんだけどお姉さんじゃなかったように

大人だって子供なんだな、って


「俺さ、二人が喧嘩するのが嫌で家出したんだよ」

そういうと二人は黙ってしまった


喧嘩の原因ってなんだろう
考えてみれもどうでもいい

頭の中でお姉さんが離れない
お姉さんがいつまでもそこにいる

お姉さんは、そこにいるけど


俺の携帯はいつまでも鳴らなかった
557: 200xミステリ-03:25:22.77
悲しいね、いろいろと悲しいね
558: 200xミステリ-03:25:32.17 ID:x60gR+VC0
高校に無事入学して、夏

バイトをしてお金を貯めて、お姉さんに会いに行く夏


だけど、相変わらずお姉さんから着信は来なかった


学校の友達もできた
好きな人はできなかったけど

というか
お姉さんを知って他に好きになれるとか、無理だろう


結局、俺はお姉さんに会いに行かなかった

臆病だったから?
不安だったから?

答えはまあ、三年後
559: 200xミステリ-03:26:40.60 ID:x60gR+VC0
ってなわけで書き終えたぞ

釣りかどうかとかよく話題に上がってたけど
それってそんなに大事なのかな

釣り成分は30%だ



で、続きあるけど知りたい?
561: 200xミステリ-03:27:38.84
いい話だ、マジで感動する。
続きも聞かせてくれ
565: 200xミステリ-03:27:47.81
三年後気になる!
571: 200xミステリ-03:28:57.69 ID:x60gR+VC0
こっからはあんまり長くならないように書きたいが
難しいな

今までの見てわかるとおり無駄に長くなるから

まあ、じゃあ、書いてく

因みに30%の成分は主に会話な

出来事は事実なんだが、そこまで会話を詳細に覚えてたら俺は化け物だろう
574: 200xミステリ-03:29:20.75 ID:x60gR+VC0
ってかこんなにいたのかよ、びびった

ちょっとコーヒー入れてくるから待っててな
576: 200xミステリ-03:29:52.18
うぉぉぉぉ
コーヒー飲めるのかよ!!!!
591: 200xミステリ-03:39:00.41 ID:x60gR+VC0
三年後

高校を卒業してそのまま働くと伝えたら両親は落胆していた
因みに俺の家出が切欠か、あれ以来二人は不仲が解消したようだ
少なくとも家で喧嘩はしていない

しかも勤め先を遠くに選んだから余計だ
理由を問われたけどその街が好きだからとしか言えなかった

就職はまあ、なんとかなった
高卒なためいいところとは言えんが選ばなけりゃなんとでもなる

家も決めて、一人暮らしの段取りをしつつ

三月に入って俺は学校に行くのをやめた
あとは卒業式以外どうでもいいわけだし

それよりもなによりも俺にはやることがある


家を探す時や就活の時に訪れているわけだが
改めて来てみると不思議な感覚に襲われた

あの都会の駅の前にある広場はどうにも健在らしい


そこのベンチでぼうっと座っていると、お姉さんが



なんてことは流石にない

暫く佇んで、お姉さんを探すべく歩き出す

といっても行く先なんて決まっている
あのBARとマンションしか知らないんだから
597: 200xミステリ-03:44:16.72 ID:x60gR+VC0
夜の八時過ぎ
あのBARが開いている時間帯だ

こうして見ると怪しい雰囲気だな、と思った

お姉さんに連れられた三年前は気づかなかったが、これは一人で入れんと思った

ドアを開けるとベルが鳴る

店の看板とかなにもないから不安だったけど、BARはまだやっているらしい


中に入るとお客さんは一人もいなかった

でも、一人だけ、その人はいた


赤く長い髪の
綺麗なお姉さん


「こんにちわ」

「らっしゃーい」

どうやらお姉さんは俺の存在に気がついていないようで
これはこれで面白いと俺は自分を明かさなかった


まあ、なんだかんだで
今ではお姉さんより身長も高いしなあ
606: 200xミステリ-03:49:47.32 ID:x60gR+VC0
三年経ってもお姉さんはお姉さんだった
綺麗ですっとしていてモデルみたいで

大人の色気が増したと言えばいいのか
しかし十八の俺に大人の色気はよくわからん


「お客さん、初めてだよね?」

「ですね」

「なんでこんな見つけづらいとこに」

「友達に聞いたんですよ。真っ赤な髪のマスターがいるBARがあるって」

「ああ、これ。ははっ、もういい年なんやけどねー」

「でもとってもお似合いですよ」

「あざーす。いや、なんか照れるわー」

「どうして赤髪なんですか?」

「これ? これな、むっかあああああしの知り合いに褒められてなー」

しんでしまった人のことだろうか

「大切な想い出なんですね」

「いやそんなんどうでもええねんけどな、今となっては」

「?」

「ぷっ」

「どうしました?」

「いや、そんでなー」

「この赤い髪を綺麗ですね、って褒めてくれたガキンチョがおんねん」

「ガキンチョ」

「そうそう。そいつな、うちに惚れとるとかいいよったくせにな、くせにやで? 携帯番号ちゃうの教えて帰ってん」


……うそん
609: 200xミステリ-03:51:14.46
>>606
変な声出たw
615: 200xミステリ-03:51:59.19
バカヤローwwwww
なにしてんだよ
617: 200xミステリ-03:52:01.40
携帯番号間違いだと!
629: 200xミステリ-03:56:36.46 ID:x60gR+VC0
「連絡ください言うた割に連絡通じへんやん? どないせーってのな」

「そ、それはそれは」

冷や汗が沸き立つ
まじで? それで連絡こなかったの?

「会ったらほんまどつきまわしたらなあかんなあ」

迂闊に名乗れなくなった

「そ、それと赤髪がどういう?」

「ん? やからさ、あのアホンダラが戻ってきた時、うちのトレードマークがなかったら気づかんかもしれんやん?」

「そんなこと……」

ありえて嫌だ
お姉さんの赤髪とピアスは凄い印象強いから

「ところでお客さん、なに飲む?」

「おすすめのカクテルを」

「いや無理やわー」

とお姉さんはドン、っと机が揺れるぐらいの勢いでコップを置いた

「自分みたいなガキンチョにはこれで充分やろ?」

それはいつか出されたジュースだった

「……はは」

「ははっとちゃうわドアホ! いつまで待たせんねんおばはんにする気かおどれぁ!」

「あ……バレてました?」

「バレバレや言うねん! 君身長高くなっただけで顔つきほとんど変わってないやんけ可愛いわボケぇ!」

「可愛いなんて、もうそんな年じゃないですよ」

「そこだけに反応すんなアホ! 首傾げる仕草もなんも変わってないいうねん……」


唐突にお姉さんは体を背けて顔を隠す
ああ、お姉さんも変わってないな
631: 200xミステリ-03:58:16.39
お姉さんやっぱ気付いてたかwww
632: 200xミステリ-03:58:36.41
なんていう凄い展開
642: 200xミステリ-04:02:58.75 ID:x60gR+VC0
「どんだけうちが待っとったおもてんねん……」

ふるふると震える肩
いつもそうだった
お姉さんは弱味を俺に見せたがらない

恥ずかしい時も
哀しい時も
苦しい時も

顔を背けてそれを隠す

椅子を降りてカウンターの中に入っていく
土台が同じ高さになったため、俺はお姉さんよりも大きくなった


「ほんま、背高くなったなあ」

「牛乳飲んでますから」

「……君ええボケ言うようになったやん」

「そりゃお姉さんと一緒になるの、夢見てたんで」

「タバコは?」

「身長伸びませんから」

「迷信やろ」

「プライバシー効果ですよ」

「プラシーボ効果やろ」
644: 200xミステリ-04:03:25.86
生きてるだと…
それにしても久しぶりに会ったのに余裕だな
651: 200xミステリ-04:07:04.09 ID:x60gR+VC0
自分より小さくなったお姉さんをそっと抱きしめる
自分の腕の中に収まるお姉さんは、とても可愛らしくて愛くるしい人だった

「大好きですよ」

「あっそ」

「つれないですね」

「知るか、三年もほっとったアホ」

「どうしたら許してくれます?」

「そやな」

「とりあえず、うちより身長低くなりや」

「はい」

「うん、ええ位置やな」


引き寄せて、お姉さんはキスをする
三年ぶりのキスは相も変わらず、優しくて、この上ない喜びが詰まっていた


「なあ」

「はい?」

「うち、ええ歳やねんけど」

「結婚とか興味あるんですか?」

「君とする結婚だけ興味あるな」

「そうですか。じゃあ、暫くしたらしますか」

「なんでしばらくやねん」

「まだ新入社員ですよ、俺。いやまだなってもないのか」

「就職したん? ここがあんのに」

「それも悪くないんですけど、やりたいこともありまして」

「へえ、なんなん?」

「秘密です」
662: 200xミステリ-04:13:28.84 ID:x60gR+VC0
改めて席についてジュースを飲んだ

「一つ気になってたんやけど」

「はい」

「なんで夏にこんかったん?」

「……そうですね」

「連絡が来なくてムカついてたんで」

「君のせいやろそれは!」

「ですね。でもあの時の俺は本当にそうだったんですよ。恋人ができたのかな、って。だから三年溜めて、まずは社会人になって、もしダメだったら」

「ダメだったら?」

「ストーカーにでもなろうと思ってましたよ」

「どこまで本気やねん」

「半分。ストーカーは冗談ですけど、仮に彼氏さんがいるなら奪おうとは思ってましたよ」

「本気やな」

「そりゃまあ、お姉さんは僕の人生を変えた人ですから」

「言いすぎ……でもないんかな」

「うちの人生を変えたんは、君やしな」

「それは意外ですね」

「君はあの一週間をどう覚えとる?」

「妄想のような一週間ですかね」

「妄想て。雰囲気でんわ。でもうちにしたって、ありえん一週間やった。だってそやろ、家出少年かくまって、いろいろあって、恋して」

「でもそういうの慣れてると思ってました」

「よく言われるけどなあ、そういうの。うちかてただの女やしな」

「……そうですね」

「そこは同意なんやな」

「もう十八ですからね。お姉さんが普通にお姉さんに見えますよ」

「なんやそれ。ってか君、いつまでお姉さん呼ぶん?」
670: 200xミステリ-04:19:07.62 ID:x60gR+VC0
「お姉さんって呼ばれるの、好きなんだと思ってましたよ」

「嫌いちゃうけど、今の君に呼ばれるんは違和感しかないわ」

「でも」

「なんやねん」

「名前で呼ぼうにも名前知りませんし」

「……ほんまやな、うちも君の名前知らんわ」

「名前も知らない人を泊めてたんですか、いけませんよ」

「名前も知らんお姉さんに付いてったらあかんやろ、頃されんで」

「ほな」

「はい」

「○○ ○○です、よろしゅー」

「○○ ○○○です、よろしくお願いします」


「ははっ、なんやねんこの茶番」

「っていうかお姉さん、意外に普通の名前なんですね」

「君は古風な名前やな。しっくりくるわ」


そのあともお姉さん、基、○○との会話は続いた
お客さんが何組か来て、ついいらっしゃいませと言ってしまったりもしたけど


俺はお姉さんの家に泊まることになった
679: 200xミステリ-04:26:06.29 ID:x60gR+VC0
「コーヒーお願いします」

「飲めるん? ってそや、薄くせなな」

「そのままでいいですよ。あれ以来濃い目のしか飲んでませんし」

「なんで修行しとんねん」

「○○と同じ味を覚えたかったから」

「……君、照れずにようそんなこと言えるな」

「鍛えましたから」

「それ絶対間違っとるわ」


差し出されたコーヒーに口をつける
強めの苦味が口の中でふんわりと滲んで、これはこれで嫌いじゃない

「ほんまや、飲めとる」

「三年も経てば飲めますよ」

「敬語はいつやめるん?」

「唐突ですね。やめませんよ」

「変な感じやな」

「そうですか? これで慣れてしまってて」

「だってもううちら恋人やろ?」

「ああ、はあ、そう、ですね」

「なに照れとんねん、やっぱ子供やなあ」

「いやあの、今のは突然だったので」


三年前と違って会話はすらすらとできた
三年も会っていなかったからか、話したいことが山のようにあった

暫くして、変わらないあの言葉


ほな、寝よか
690: 200xミステリ-04:31:54.32 ID:x60gR+VC0
俺の腕に小さな頭を乗せて
縮こまるお姉さんは可愛らしい

優しく撫でると香るあの匂いに
急速に三年前を思い出す

「ずっと会いたかってんで」

「ごめんなさい」

「もうどこにもいかんよな?」

「卒業式には帰らなくちゃならないのと、家を借りてるのでそれを解約するのとありますね」

「うん、ここにいたらええよ」

「家賃は払いますから」

「いらんよ、借家ちゃうし」

「結婚資金にでもしておいてください」

「お、おう」

こうして思えばお姉さんは照れ屋だったのだろう
三年前の俺はそんなこと全くわからなかったけど


その内にお姉さんはすやすやと寝息を立て始める
俺の腕の中で安らかに眠る

こんな日々がこれから一生続くのだろうと考えたら
俺はなんとも言えない喜びに包まれて

幸福の中で眠りについた


それは春が訪れる
桜が咲く前のこと
692: 200xミステリ-04:32:58.43 ID:x60gR+VC0
ってなわけで悪いが終わり

俺九時間も書いてたのか
そりゃどうりで頭が痛いわけだ

読んでくれてありがとう、お前らお疲れな
699: 200xミステリ-04:34:04.01
>>692
おつ!
面白かったよ!

で、他には無いんか
700: 200xミステリ-04:34:26.38
乙!感動した!

この春から一緒に暮らすの?
723: 200xミステリ-04:38:16.51 ID:x60gR+VC0
>>700
うん、春からってから正確には再来月ぐらいになりそうかな

就職したばっかでばたばたするし、家の解約とかやることけっこうあるし
住民票とか、親の説得とかな
707: 200xミステリ-04:35:25.22
上手く言えないが、その後は幸せなのか?
725: 200xミステリ-04:40:45.19 ID:x60gR+VC0
>>707
もちろん!
こんないいお姉さん捕まえて幸せじゃないなんて奴、いないだろ?
708: 200xミステリ-04:35:28.79 ID:x60gR+VC0
もうお姉さんと再開できた時点で畳む話で
そっから先は蛇足だからな

悪いが終わりだ
729: 200xミステリ-04:42:32.03
マジで幸せになってくれることを願ってるぜ!!








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