1: 20xx/ミステリー master-
鈴子は高卒で就職に失敗して、実家でアルバイト暮らしをしている。
今の収入では一人暮らしは無理だったのだが、友人にルームシェアをしないかと誘われた。
喜んで賃貸申込をした後に、実は友人の彼氏もあわせた三人暮らしだといきなり聞かされる。
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部屋は別々だからと渋々承諾して入居当日を迎えると、友人とその彼氏が破局したとかで、
鈴子は友人の彼氏と二人暮らしをするはめになった。
その男はふられたことを気に病んでDQN 態度丸出しで接してくる。
男は、鈴子が拾ってきた猫を勝手に捨ててしまう。
雨の日の事で、鈴子が見つけた時には既に 猫は亡くなっていた。
怒った鈴子は、男が留守の間に、男が持ち込んだ荷物を全てきれいさっぱり捨ててしまった。 鈴子は刑事告訴を受け、罰金刑ですんだものの前科持ちとなった。
私立中学への入試を控えた弟は、前科持ちの姉のせいで入学できないかもしれないと冷たくあたる。
父母は鈴子に優しい態度を見せるものの、 父母同士は実は遊びなどでギクシャクしていたらしいことが顕在化する。
鈴子は、100万円を貯めて一人暮らしをはじめると宣言した。
それだけのお金があれば、賃貸暮らしもできるし、新しい地でのバイト先を見つける余裕もできる。
そこでまた100万円を貯めたらまた引っ越す。
ずっと自分を知る者のない土地を転々としようと決意する。
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鈴子は実家で暮らしながら色々なアルバイトを掛け持ちするようになった。
ある買い物帰りの時、学生時代の同級生が絡んできた。
学生時代からタチの悪いいじりの対象になっていたらしい鈴子は、 前科のことを彼女たちにあれこれと言われる。
鈴子はブチ切れて買ったばかりの玉子を同級生たちに投げつけまくり、その場を去った。
その現場を、下校中だった弟はたまたま目撃した。
弟は学校でいじめられていた。
よく持ち物をとりあげられたりしていた。
私立入学を希望するのは、いじめ加害者たちと離れたいからだった。
自分はなにもできていないが、鈴子はちゃんと対抗できるのだと、弟は少し鈴子に好意的になった。
やがて鈴子は100万円を貯めて家を出て行った。
弟は、家を出ても連絡を取り合おうと姉と約束した。
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海辺の街に来た鈴子は、海の家で働くようになった。
ちょっとチャラいサーファーっぽい男が鈴子にちょっかいをかけてくるようになる。
サーファーは外見のわりに根はいい奴っぽかったが、鈴子は心を開くことなく、 彼に対しては嘘のプロフィールしか話さず、100万円が貯まったらすぐにまた引っ越した。
弟に手紙を書くことはなかった。
弟は学校で殴られてよく怪我をしていた。
山辺の村に来た鈴子は、桃農家で住み込みで働くようになった。
過疎の村で、よそ者の鈴子は珍しがられたが、真面目に働くので暖かく受け入れられた。 100万円が貯まったころ、鈴子は「桃娘」としてキャンペンガールにならないかと言われる。
断ったのだが、どこかで話が食い違い、勝手に任命されてしまう。
改めて断ろうとすると、村人全員が集まっての会議という大事になり、 「せっかく世話をしたのに恩知らずだ」と感情的な罵倒の対象にされてしまう。
自分は前科があるから表に出れないのだと叫び、鈴子は村を出て行った。
鈴子を泊めてくれていた農家の人は、村人たちのふるまいを詫びながら、鈴子に桃を持たせてくれた。
そこでも鈴子は弟に手紙を書かなかった。
弟は異物を混入された給食を吐き出して笑い物にされていた。
地方都市に来た鈴子は、ホームセンターで働くようになった。
同い年で、大学生のイケメンが同僚におり、鈴子はやがて彼に惹かれていった。
二人はつきあうようになり、鈴子は自分が前科を持っていることや、 100万円を貯めては引っ越しをしていることを教えた。
イケメンは戸惑いながらも全てを受け入れ、鈴子を慈しみ愛してくれた。
しばらくして、イケメンの大学の後輩(女)がホームセンターで働くようになった。
イケメンと後輩は話があうようだった。
ある時、街を歩いていた鈴子はイケメンと後輩が喫茶店にいるのを目撃した。
イケメンは、お金がないからと鈴子に代わりに払ってくれないかと言いだした。 それからイケメンはやたらと鈴子からお金を借りるようになった。
100万円はなかなか貯まらなかった。
弟から手紙が届いた。
机の上に花瓶が乗せられているのを見て、 我慢できずにいじめの加害者を殴ったと
いう。
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弟は加害者に怪我をさせてしまって児童相談所に送られたという。
でも、前に鈴子が同級生たちと対抗する姿を見て勇気づけられた、 自分は逃げずに小学校に通い続けるし、加害者たちと同じ中学に行ってやると書かれていた。
そして、父母が心配しているからたまには連絡をとってあげてとも。
鈴子ははじめて弟に手紙を書いた。
自分は逃げてばかりで、誰かに好意を持たれるのも注目されるのも怖かったと。
一度自分から好きになった人と別れるのは辛いことだが、 別れの次には出会いがあるから泣くことじゃない、 そう書きながら鈴子は泣き出し、荷造りをはじめた。
まだ完全に100万円は貯まっていなかったが、鈴子は引っ越しをすることにした。
イケメンとの別れ話もすませた。
お金を持っているから付き合ってるだけなんでしょう、と言うとイケメンはなにも言い返せなかった。
ホームセンターで上司との挨拶をすませると、イケメンがやってきて今までに借りた金を全て返してきた。
鈴子はそれをそっけなく受取り、すぐに引っ越すために去って行った。
漫然と花に水をやるイケメンに後輩が話しかける。
「誤解されたままでいいんですか? 本当は、 100万円貯めて引っ越してほしくなかったからお金を借りていただけなのに」
イケメンは反応もせずにずっと水をやり続けていたが、 しばらくして、やはり鈴子を引き留めようと走り出した。
駅の周辺を息を切らしてイケメンは走り続けた。
鈴子の姿は見当たらない。イケメンは肩を落として立ち止まった。
鈴子は、イケメンがたちすくんでいるすぐ横の階段の上にいた。
ふと鈴子を後ろをふりかえる。
下方にはイケメンがいるのだが、鈴子はそれに気づかない。
「やっぱり追いかけてきてくれるわけなんてないか」
鈴子はそうつぶやいて、その土地を去って行った。
イケメンがいい人だったのに急に金せびり野郎になってうはぁと思っていたら、 実は
演技で、なのに鈴子はそれを知らないまま、また旅立ってしまうというラストはもちろん、 DQNは延々と増長するだけだろうに
意地をはってDQNと同じ 学校にいることを選んだ弟の未来も暗く思えてしまう。
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