bandicam 2017-05-15 18-56-23-711


全ては終わり、男性は助かりました。しかし墓参りを終えた彼の目の前にはあの男が現われます。

そして、この男の口からは悲しすぎる過去が語られるのです。

それでは不思議な世界をお楽しみ下さい。


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bandicam 2017-10-20 09-35-26-671


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bandicam 2017-12-16 15-11-11-955


1000: 20xx ザ・ミステリー体験
久しぶりに来た親父の墓は、土埃で汚れていた。 俺は予め用意していた掃除用具を取り出し、念入りに親父の墓を磨いた。 「家族を助けてくれてありがとう。守ってくれてありがとう」 そんな気持ちを込めて念入りに磨いた。

母も姉も一生懸命に墓を磨く俺を眺めて、何故そんなに一生懸命に磨くのかと不思議そうにしていた。 俺は母と姉の二人にも掃除道具を渡し、墓磨きに協力してもらった。 心なしか、親父の笑い声が聞こえた気がした。


その後、俺たちは家族でレストランに入った。 久しぶりの家族団欒だった。


食後に俺はトイレに入った。入り口を開け、トイレの中に入る。 そこはビルの屋上だった。 驚いた俺は周囲を見渡す。

俺の視線の先には、あの騒動の本丸の男が、フェンスに寄りかかりながらタバコを咥えていた。 「よお」 気軽な挨拶をすると男は俺に近づく。 「俺に近付くんじゃねぇ!!」 俺は怒鳴った。

「はは、怖いねぇ。そんなに怒鳴るなよ。なにも危害を加える気はねぇよ」 男は尚も俺に近づく。 「なんのつもりだ!?いったい、何しに来た!?」 怒鳴る俺を無視して、男は俺の眼前に立つと、思いがけない言葉を発した。 「事の顛末を知りたくないか?」
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「事の顛末だと?」 男は俺を嘲るように微笑んだ。

「心配するな。あの男好き社長の許可は取ってあるよ」 男は俺の胸に拳を当てた。 すると男の拳は何の手応えも無く、俺の体をすり抜けた。

「ほらな。俺からお前に何かすることは出来ないんだよ。 あの男好きにお前は完全にガードされているし、俺もあの男好きに能力の根源を握られている。 今の俺は、男好きに金玉抜かれた腑抜けなんだよ」 俺は後ずさりをした。


「俺に何を聞かせたい?」 男はどこからか椅子を取り出し、腰掛けた。 「さっきも言ったろ?事の顛末さ。 どうして俺と妹がお前を狙ったのか。何故、葬ってやろうとしたのか。 お前には聞く権利があるんだよ」

確証は無かったが、男に害意はないように思えた。 確かに俺も、この騒動の動機と理由が知りたい。 俺の心にある霧の正体が知りたかった。 「分かった。なら聞かせてくれ。事の顛末を」 「そうこなくちゃな。わざわざ、来た甲斐が無い」 そう言うと男は、タバコを地面に捨て足で揉み消した。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「初めにお前に出会ったのは、お前がバイクで小樽に来たときだ。 確かツーリングだっけ?お前はそれをやりに来たんだ。 俺はたまたま小樽に用が有って来ていた。 その時、妹の奈々子がお前に目をつけたんだ。 何故なら、お前が奈々子にとって羨ましい存在だったからだ。 まるで光に群がる虫のように、奈々子はお前に惹き寄せられた」 俺は困惑した。


「何故俺なんだ?俺の何が羨ましかったんだ?」 「お前の中に、温かい家族の繋がりが見えたのさ。 それが奈々子には、心底羨ましかった。 俺たちの家族はな、言っちゃ何だが、肥溜めそのものだった。

特に奈々子は生前、そうとうあのクソ親父に責められた。 口に出すのもおぞましいぜ。実の父親が娘を対象にするなんてよ。

しかも親父はひでぇもんだった。 だが、俺も人のことは言えねぇ。苦しむ妹を、見て見ないふりしたんだからな。 母親はとっくの昔に亡くなって居なかった。 だから妹にとっちゃ、俺は唯一の頼りだったんだ。それを俺は見捨てた。 面倒臭かったんだよ、正直言って。俺にはどうでもいいことだった。 奈々子にとっては絶望的だったろうよ。アイツは一人で警察に行き、助けを求めた」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

俺は男の話を遮った。

「気持ち悪くなったか?そうだろうな。肥溜めの話だ。無理も無い」 男はポケットからタバコを取り出し、口に咥えた。 さっきまで人を嘲るように笑っていた男の顔は、深海のような冷たい表情だった。 話の内容よりも俺は、この男の表情に恐怖を感じていた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「いいか?続けるぜ?」 俺は無言で頷いた。なるべく男の顔を見ないように気を付けた。 「奈々子は警察に助けを求めたが、全て無視された。 親父は精神科医としてはエリートだった。 警察にも協力していたし、署の幹部とも仲が良かった。 奈々子は対応した警察官に、人格ごと全てを否定されて追い返されたんだよ。 更に絶望した奈々子は、遂に精神を病んで、精神病院に入院した。 しかも、親父の病院にな。


そこでも奈々子は酷い扱いを受けた。 警察に訴えた奈々子を、親父は許さなかった。 信じられるか?実の父親なんだぜ? そして奈々子は自ら亡くなる事えをした。どこからか持って来たロープで首を括ってな。 そこで俺は初めて泣いたよ」 黙って俺は男の話を聞いていた。


男の家族と俺の家族。まるで正反対の家族だった。 「奈々子は自ら亡くなる事をした後、この世を彷徨い、俺の所に来た。 奈々子には才能はあったが、俺のような能力はなかった。 だから、俺に復讐の話を持ちかけたんだ。俺に協力しろってな。 勿論、それを俺は断ることも出来た。 だが俺は、初めて気付いた感情に逆らえなかった。 俺は奈々子を愛していた。自分勝手な話だがな」
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「俺は奈々子に協力し、親父と警察官、それと看護師をあやめた。 俺はそれで奈々子が満足すると思っていた。 だがそれは違った。 俺は霊というものに対する知識を、中途半端に持っていたに過ぎない。 どんなに復讐を遂げても、奈々子はいない。 俺の目の前に居る悪霊と化した奈々子は、奈々子であって奈々子じゃない。 ただの情念の塊だ。情念の塊が満足して消えることなんて絶対に無い。 俺は落胆したよ。 親父も含めて3人もあやめたのに、ただ奈々子の形をした悪霊が増大しただけだった。 そんな時にお前が現れた。 ただの復讐の情念の塊だったはずの奈々子が、お前に魅かれた。 俺にとっては驚きだったよ。もしかしたら、と変な希望まで持っちまった。 だが、奈々子はいない。普通の生き人とは一緒に居られない」


「それで俺を葬ってやろうと思ったのか?ふざけるな」


「ああ、今思えば愚かもいい所だ。だが、俺にとっては希望だった。 お前と居れば、奈々子は奈々子として戻れるんじゃないか、とな」 男の話に俺は納得がいかなかった。 「ただあやめてしまうだけなら、お前には何時でも俺をあやめてしまうことは出来たはずだ。 何故すぐにやらなかった?何故あんな回りくどいことをする?」 俺は男に問いただした。男の表情に変化はない。

「単純にすぐに消しても、霊はこの世に留まらない。すぐに消えてしまう。 苦しめて、追い詰めて、不条理を与えることで、霊はこの世に強い情念を残し、長く留まる。 お前には未来永劫、奈々子と一緒に居て欲しかった」 男の言葉に、俺は全身が震えた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「北海道から帰ったお前は交通事故を起こし、重症を負った。 あれも俺の仕業だ。 お前の会社の人事部長の脳に侵入して、解雇通知を書かせたのも俺だ。 左腕の骨折だけ治りが遅かっただろ?あれも俺だ。 その他諸々。お前には色々、仕掛けたな」 俺は震える拳を押さえた。

「殴っても良いんだぜ?そこで我慢するのは、元サラリーマンの悲しい性か?」 俺は男の左頬を全力で殴った。男は椅子から転げ落ち、地面に平伏した。

「まあ、一発くらいは殴らせないとな…」 男はそう言うと椅子を元の位置に戻し、再び腰掛けた。 俺は怒りで全身が熱くなっていた。


「落ち着けってのは無理な話かもしれないが、話は最後まで聞け。 俺はお前に感謝しているんだ」

「感謝だと!?」

「最後にお前が奈々子と一緒に居たときの話だ。 あの時、俺は男好きの部下に押さえつけられ、床に平伏していた。 事の終わりを見届けろと男好きに言われ、俺はお前たちを見ていた。 あの時…、俺は眼前の光景に我が眼を疑った。俺は奇跡を見ていた。 ただの復讐の情念の塊だった奈々子は、そこには居なかった。 お前も見ただろ?あの奈々子が本当の奈々子だ。生前の頃の奈々子だったんだ。 アイツはただのか弱い女だった。あれが本当の奈々子の姿だったんだ。 俺は泣いた。奇跡を前に、俺は子供のように泣く事しか出来なかった。 最初は光に群がる虫のように、奈々子はお前に魅かれただけだった。 それが何時しか、本当にお前のことを好きになっちまっていたんだ」
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
俺は震える拳を降ろし、黙り込んだ。 「お前も薄々気付いていたんじゃないか?」 そう言う男の顔からは、深海のような冷たさが消えていた。 最後に見たあの女の顔を、俺は思い出していた。

気が付くと、俺の眼からは涙が流れていた。

「泣いてくれるのか?」

男はそう言うと静かに俯いた。

「お前は優しい男だな。あんな事をした奈々子のために泣いてくれるなんてよ。 お前は本当にしぶとい奴だった。俺はお前の勇気に驚かされ続けたよ。 そして、家族の愛情に恵まれた、優しい男だ。 今なら奈々子の気持ちが俺にも判る。俺たちは愛情に飢えていた。本当にお前が羨ましい。 奈々子は生前、誰かを好きになることなんて一度もなかった。 こんな形じゃなく、奈々子が生きている間にお前と出会えていたら…。 お前のように俺にも勇気があれば、こんなことにはならなかった」


俺は泣いた。あの女を思い、泣いていた。 あの女は敵だ。あの女が俺に何をしたのかは忘れない。 それでも、俺の眼から流れる涙は止まらなかった。


男は椅子から立ち上がると、天を仰いだ。

「俺も奈々子も、散々人を苦しめた。天国には行けねぇ。 奈々子も地獄に落ちたよ。アイツは生まれ変わっても、また辛い人生を送る。 でもよ…、もし、お前がアイツに再び出会ったなら…。その時は…」

男は踵を返し、背を向ける。

「…自分勝手にも程があるか…」 男は静かにうなだれる。 その背中には、悲しみが色濃く映し出されていた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
俺は事の顛末を知った。俺には泣くことしか出来なかった。 男とあの女の悲しい過去。俺の知らない家族の話。 全てが俺の胸に突き刺さり、涙を溢れさせていた。 俺はただただ悲しかった。

「じゃあな」

男はそう言うと、俺から離れていく。

「これから、お前はどうする気なんだ?」 俺の問いに男は足を止める。

「俺には初めから守護霊なんてものはいない。 自分の身は自分で守ってきた。 だが、俺はもう能力を封印する。 俺がお前を苦しめたように、今度は俺が苦しむ。 もう、お前とは会うこともねぇ。 俺の行き着く先は妹や親父と同じ所さ」


そう言うと男は、俺の目の前から消えた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
俺はレストランのトイレに戻ってきていた。 トイレの洗面所で泣き腫らした顔を洗った。 俺はあの男の言葉を思い出していた。 『俺の行き着く先は妹や親父と同じ所さ』 あの家族に救いは訪れないのだろうか。 一度人は道を外すと、元には戻れないのだろうか。 俺は世の無常を感じていた。


トイレから出た俺は、家族の待つテーブルに帰ってきた。 幸せな光景。あの家族は、この光景を一度も見たことは無いのだろうか。 俺の胸は切なさでいっぱいだった。 「ちょっとぉ、なにボーとしてるのよ」 姉の声に俺は我に返る。 「ああ、悪い。ちょっと考え事しててさ」

「さっきから、あんたの携帯、鳴りっ放しだったよ。 なんか、出ても悪いかなぁと思って放置してたけど」 俺は自分の携帯を見た。

確かに5件も着信履歴が在る。 相手はジョンの携帯だった。 何の用だろうか。俺はリダイヤルした。 「もしもし。お兄さんですか?」 「ああ、なんだ、ジョン?何回も着信履歴が入っていたけど、急ぎの用事か?」 「いやぁ、俺がお兄さんに対して、急ぎの用事って訳じゃないんですけどね。 社長が今すぐ事務所に来いって」 「社長が!?」


俺は携帯を切ると家族に謝り、レストランを飛び出した。 社長を待たせること程怖いことは無い。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
全力で走り抜け、俺は社長の待つ探偵事務所に辿り着いた。 「ご…御用件は…はぁ…はぁ…なんですか、社長…はぁ…はぁ」 社長はタバコを灰皿に押し付けた。 「はぁはぁ気持ちが悪い!先ず呼吸を整えろ馬鹿!」 俺の目の前に一杯の水が差し出された。 「お兄さん、飲んでください」 ジョンだった。 「ああ…、ありがとう。ジョン」 ジョンは優しく微笑んだ。


ジョンのくれた水を俺は一気に飲み干し、呼吸を整えた。 「良いか?とりあえず、この書類に眼を通せ」 社長の差し出した書類を俺は見た。 そこには『内定通知書』と書かれていた。 「これは…、なんですか、社長?」 俺は唐突な書類の内容に戸惑った。 「見て判らないか?お前を我が社に採用すると言っているのだ。 お前は未だに無職なのだろう?私がお前を雇ってやる」 社長の言葉に驚いた俺はジョンの顔を見る。 ジョンは笑顔でサムズアップをしていた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
「え!?いや、嬉しい!けど…。ど、どういうことですか、社長?突然で…」 「戸惑っているのか?」 社長は妖しく微笑む。

「実を言うとな。お前の敵だった、あの男に頼まれたのだ」

「あの男に!?」 俺は驚いた。あの男が社長に頼みごとを?

「私も驚いたよ。 我が社の口座にいきなり1000万円も振り込んで、お前を雇ってくれと頼み込んできた。 せめてもの罪滅ぼしとでも思ったのか。それともお前が気に入ったのか。 1000万円もあれば、どんなペーペーでも一流に育つ。 私は快諾したよ。その気持ちを受け取るかどうかは、お前次第だがな」

俺は迷うことなく、「御願いします」と言い頭を下げた。

「お前には霊能の才能が欠片しかないから、探偵として雇うことになる。 言っとくが、甘くは無いぞ。覚悟しておけよ?」 そう言うと社長は微笑んだ。ジョンも笑っていた。 俺は探偵として生きていくことを決めた。
1000: 20xx ザ・ミステリー体験
俺の物語はここで終わる。 探偵として歩み始めた俺には、様々な出来事が起きる。 でも、それはクライアントの物語。 守秘義務の関係上、これ以上は書けない。


あの騒動で俺は強くなった気がする。 今でも時折、あの女のことを思い出す。 あの女は、今もどこかで苦しんでいるのだろうか? もし、再びアイツと出会ったなら…俺はその時… アイツを助けてやりたいと思う。


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