1000: 20xx ザ・ミステリー体験- 最初に言うけどもこれは自己満足に近い。突発的に、自分勝手に、発散したくなっただけなので面白半分に聞いてほしい。
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因みに文才も無いから、言葉遣いが現在進行形やら過去形やらでごっちゃになるかもしれんが悪しからず。
後、これは少しホラーチックな話だから(そんな怖くは無いと思うが)そんなのが苦手な人や、今までの文を読んで、俺の話し方が無理!ってなった人はごめん。
それじゃあ始めます。
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信じてもらう必要は無いんだが、俺は昔から、いわゆる、見える体質というやつだった。
見えるってよりは感じるという方が感覚としてはあってるんだが。
得体の知れないモノが近くにあると決まって左頬が痒くなる。
んで、周りを見てみるとなんとなく分かるんだ。ああ、そこにいるな、って。
大体は漂っているだけで特別寄って来たり離れたりはしない。触ろうとしても手が空を切るだけだ。 例えるなら、線香の煙みたいなもので、すぐ空気に紛れてしまう。
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ごくたまに光としてソレが見えたり、なんて事もあるけれど、ほとんど、が感じるだけで(直感として感じたり、温度として感じたり)、
はっきり見えることなんてめったになかった。
それに合わせて吐気を覚えたり、頭痛がしたりとかいうことも、ほとんど、ない。実害があったりとかもまたしかりだ。
それは故に俺の霊感(俺の感じる得体の知れないモノってのが霊だけだとは、自分でもよくわからないのだが)がそこまで強くはないからだと思ってる。はたまた今まで運が良かっただけか。
そんな微妙な体質なもんだから、昔は、悪霊だとか妖怪だとかの悪さをするモノってのはそもそもいないんじゃないかとまで思っていた。
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そんな考えが覆されたのは、中三の夏休み。
都会寄りの田舎てのに住んでいた俺は小学校、中学と、虐められていた。
虐めが始まった経緯は霊感関係もろもろなのだが、そこは面白い話ではないので割愛させて頂く。
強いて簡単に言うなら異物混入は干される、というところだろうか。
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裏でやったりだとか、見えないところでやるのが都会での常套句だと聞くが、田舎のイジメは表でもがんがんやられる。学校でも、道端でばったり会ってもだ。なんなら家にも来る。安心できる場所が無い。
そんなこんなに懲りた俺としては、このまま近場の高校へ行き、また同じメンツに虐められるというのはなんとしても避けたいところだった。
もっと言うなら地元から抜け出して、新天地で高校生活を謳歌したかったんだ。
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そこで親に相談してみると(親は前々から心配してくれていたが、俺自身が引け目を感じ、先生へ言いにいくなどはよしてもらっていた)祖父母宅、父の地元はどうだろうかと言われた。
一人暮らしは金銭的に無理。 そもそも俺の学力的に行ける高校は限られている(お恥ずかしい)。
その両方ともをクリアした父の地元への高校進学という案は、当時の俺には十分魅力的に思えた。
そうして話は進み、夏休みの間は祖父母宅で試しに生活してみるという事になったのだった。
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そして時は進んで夏休み。ついに父の地元での生活が始まった。
俺の地元も立派な田舎だったが、父の地元はさらに立派なド田舎だった。
娯楽といえば古いシューティングゲームが置いてある駄菓子屋が一軒だけ。
後は民家、畑、田んぼ。 林、森、山だ。 内陸だから海も無い。川ならあるけど。
最近になって遊んだんだけど、僕の夏休みってゲーム。アレの行動範囲を広くして駄菓子屋建てたのを想像してくれればいい。
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そんで、実はその駄菓子屋ってのが祖父母宅な訳なんだ。
夏休み中は何をするにも暇だったのと、泊めてもらうお礼も兼ねて、店番を手伝ったりする毎日だった。
村で唯一の娯楽施設とあって小中学生が集まる集まる。高校生はバスとかで何本か先の町へ出かけたりしているらしくあまり姿は見なかったが。
まあ最初の方こそ遠巻きに見られたりもしたが、土地柄なのか、子供達は皆大らかで、すぐに打ち解けてくれたんだ。
そんで特に仲良くなった友達が2人。
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1人はヨッチャン(仮名)。
(当時は本名で呼んでいたが、実名はマズイので、彼の好きだった駄菓子から付けさせてもらう)
俺が村に来てから一番目に話しかけて来てくれた子で、駄菓子屋での様子を見るにそこの中学ではリーダー格だったのだろう。
その明るい性格や、クワガタ見っけ!と言って躊躇無く田んぼを踏み荒らす大雑把なところなんかは確かにいかにも、大将!という感じだった。
そしてもう1人はマル棒。
こっちは当時の本当の呼び名。
坊やの坊、ではなく棒力の棒、だ。彼とはよっちゃん経由で一緒にいる内に仲良くなった。
彼等は同級生で、自称よっちゃんのブレーキ役らしいが、周りの見解としてはむしろマル棒のブレーキ役がヨッチャンだった。
クラスに1人はいる、普段はおとなしいが怒り出したら…って奴だ。
ガムの当たりを取られても大して怒らなかったのに、ボンタンアメの最後の一粒を取られて、小学生女子の頬を平手打ちしたのは今でも鮮明に覚えている。
因みにマル棒の棒もここからつけた。
だが、それを除けば頼り甲斐があって本当に良いやつだ。
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俺、ヨッチャン、マル棒。
夏休み中に遊んだのはもっぱらこの2人とで、大概は森を探検して、そこで昆虫を捕まえたりして遊んでた。
森を道なりに進んで行くとノコギリクワガタやカブトムシが取れる、森の中でもひときわ巨大な木があり、
(村の人達はその木を巨木って呼んでた)
最初見た時はその大きさに、ものすごく驚いたりもした。(思い出補正もあるが、トトロの木みたいな感じ)
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ヨッチャンやマル棒曰く、村の大人に子供達はその巨木より先には、迷うから行ってはいけないと注意されているらしいので(祖父母も俺が来た初日にそんな話をしていた)それ以上先へ行くことは無かったが。
まあ、そんなこんなで日は進んだ。
今までのイジメを思い出すと本当に楽しい毎日だった。 そんな日々によって心にも余裕が出来て、周りが見えてきてたのだろう。
ある日俺はあることに気づく。
皆が駄菓子屋で和気あいあいとする中、少し離れた電柱の陰に1人、隠れる様にしてこっちを見る女の子を見つけたんだ。
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頭に農家のおばさんみたいな日差し帽を被った(伝わりにくかったらごめん)、肌が透き通る様に白い女の子。
背丈から見るに当時の俺とさほど変わらない年齢だったと思う。
今までもそこに居たのか、その日始めてここに来たのかはわからなかったが、俺はその日初めてその子を見かけたんだ。
なので近くにいた男の子に聞いてみる。
俺「あの子、初めて見っけど、ここの子?」
男の子「え、どいつ」
俺「ほら、あそこにいる」
そう言って僕は電柱の方を、棚卸しで使っていたため手ではなく、顎でしゃくった。
男の子はその方を見た後言う。
男の子「…電柱なんかにゃ誰もいねえけど」
俺「え?いや、いるだろ。隠れてるけど、ほらあそこ」
自分も再度確認してみるがしっかり電柱の陰に隠れている女の子が見える。
男の子「いねえって言ってんだろ」
そう、乱棒に切り上げると男の子は逃げる様に、他の子の元へ行ってしまった。
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その後、他の子にも何人かに聞いてみたがどの子も似たり寄ったりな反応で、「そんな子は見えない」の一点張り。だが、これ以上続けると俺がおかしな奴だと思われそうだったので、やめておいた。
それで最後にもう一度と、電柱の方を見てみると、女の子は既にいなくなっていた。
だがやはりおかしい、と夜になってまた考えてみる。
最初に女の子が見えるかと聞いた男の子に違和感を感じたんだ。
電柱を指で示したならともかく、顎で大体の位置を示しただけなのに、あの男の子は「電柱なんかには誰もいない」と言った。
他の皆にしても違和感を感じる。 女の子が見えるかと聞くと決まって強引に話を切り上げてしまう。
そんな独特な雰囲気、感覚には覚えがあった。
経験則だったのだろう。俺はその時こう思ったんだ。
あの女の子はここの皆にイジメられてるんじゃないか?と。
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次の日。
俺はヨッチャン、マル棒にも女の子について聞いてみた。
が、ヨッチャンとマル棒も皆と同じ様な反応。見えない、とのこと。思い切って昨日考えた事を口に出してみる。
俺「ヨッチャン達、もしかして皆であの子イジメてんの?」
ヨッチャン「いやいや」
俺「じゃあなんで皆見てないって嘘言うんだよ。本当は見えてんだろ?見えてないフリとか趣味悪いぞ」
マル棒「だから、そういうんじゃないんだよ」
俺「そういうのってなんだよ。はっきり言えって」
はっきりしないヨッチャンとマル棒を見て自分の不安は確信へと変わっていった。学校での自分と女の子を重ねてすごく感情的になっていたのだと思う。
そんな俺にヨッチャンは言った。
ヨッチャン「わかった。言う。友達だもんな」
マル棒「よせって!おじさん(ヨッチャンの父)にどやされるぞ」
俺「おじさん?大人まで関わってるのかよ」
ヨッチャン「あのなほんと、イジメとかじゃないんだ。友達だから、信じてくれるよな。その、お前が見たって女の子、たぶん、幽霊なんだよ」
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ヨッチャンは歯切れ悪くそう言った。
マル棒は隣でそんなヨッチャンを睨み、その後は俺を睨んだ。
そして俺は言った。
俺「馬鹿にするな」
と。
その時考えた事は今でも覚えてる。
よりにもよって幽霊? そんな嘘は通用しない。 お前らは知らないかもしれないけど、幽霊ってのはあんなはっきり見えるようなもんじゃない。 それともあの子のアダ名か。 幽霊っていうアダ名を付けて、透明だから見えませんって事か。
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そう思った。
ショックだった。今まで仲良く、本当に親友だとまで思っていた友達があろうことかイジメに加担してただなんて。
俺「お前ら、皆、馬鹿野郎だ」
そう言った直後、拳が俺の頬に飛んできた。勢いで倒れる俺。俺を見下ろすマル棒。マル棒はそのまま俺の胸ぐらを掴み言った。
マル棒「馬鹿野郎はお前だ。友達を信じられないのかよ」
俺「嘘吐きが友達だって!?」
ヨッチャン「やめろって!」
マル棒に怒りの矛先を向けられたのは初めてで、それは想像以上に怖くて、なんならちょっとチビリかけた。が、頭にきて、いつもなら下手に出るところを言い返す。 ヨッチャンはそんな俺達を止める。
イジメと嘘と棒力。フラッシュバックする小中学校での日常。 疑心暗鬼になって、頭に身体からの赤い液体が上って、わけわかんなくなって、俺はマル棒を振り切りその場から逃げ出した。最後に聞こえたのは、ヨッチャンの言葉。
ヨッチャン「あの女の子には近付くなよ!」
最後までそれかよ、と思う。俺はその日から村の子供達を避けるようになった。
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その日も次の日も次の次の日も、ヨッチャンが何度も直接会いに来てくれたけど無視をした。
店番も、家事などを手伝うのを代わりとして、やらなくなった。
祖父母ともあまり話さなくなった。
ともかく、村の皆と会いたくなかった。
最高の夏休みは一点、最悪の夏休みになった。
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そしてヨッチャン、マル棒と喧嘩して一週間くらいした頃だったと思う。
村の小中学校合同で日帰りキャンプに行くイベントがあるらしく、それによりその日、村には小中学の子供がほとんどいなくなっていた。
村に皆がいなかったため久しぶりに外を散歩して見る。 だけど、気分は浮かなく、ヨッチャンやマル棒、皆の事を考えている内に気がつけば森の近くまで来ていた。
2人と森を探検したのを思い出し、落ち込む。あの時はあんなに楽しかったのに。
改めて森を探検してみるのもいいかもしれない。
そんな事を考え俺は一人、森へ足を踏み入れた。
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奥に行くにつれ、舗装された道がだんだんと獣道となり、枝分かれしていく。記憶を頼りに俺は以前ヨッチャン達に連れってもらった巨木の元へ向かっていた。
巨木はあの日と変わり無く堂々とそこに立っていた。 この巨木を見ると何と無く安心する。木にこんなことを思うのもなんだが、その大きさや雰囲気に頼り甲斐を感じたんだ。
…明日もう一度ヨッチャン達と話してみようかな。
そんな事を考えた時、視界の端で何かが動いた気がしてそちらを見てみる。
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巨木の向こう側の木の陰から、あの女の子がこちらを見ていたのだ。
あの子はキャンプに行かなかったのか。いや、行きたくなかったのかな。
そんな事を考え、彼女に話しかけてみようと巨木の向こう側へと足を踏み出した。
すると女の子はもっと向こうへ逃げ出してしまう。
俺「待って!」
そう叫ぶと彼女は再び少し先の木の陰にまた隠れてこちらを振り返る。
僕はまた追いかける。 近付くと彼女はまた逃げ、少し先の木の陰へ。
遊んでるつもりなのだろうか?
こちらは真剣なのに、と思う反面、その追いかけっこを楽しみ始めている自分がいた。
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俺が少しづつ追い。
彼女が少しづつ逃げる。
ふふ。
と、少女の笑い声が微かに聞こえた。
追いかけ、逃げて、追いかけ…
ふふふふ。
彼女の笑い声はだんだんと大きくなってゆく。
逃げて、追いかけ、逃げて…
ふふふふふふふふふふふ。
森の中で反響しているのだろうか。彼女の笑い声が森全体から聞こえてる気がした。
追いかけ、追いかけ、追い…?
彼女の姿を見失った。 と、同時に辺りを見てみると、森はもうほとんど暗くなっていて、この時ようやく、自分が森の奥まで来てしまっていると気が付いた。
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ふふふ、はは、はははははははは。
笑い声が高笑い声へと、少女の声から女性の声へと、変わっていく。
辺り全体から聞こえてくるその高笑いにやっと事の異常性を感じた。
どこだ、あの子はどこにいる。
探そうにも恐怖で俺はそこから周りを見ることができない。
だが、急にピタリと、声は止み、暗い森は不気味な静寂に包まれた。
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気づく。
ヨッチャンとマル棒は正しかった。
何もわかっていないのは俺の方だった。
彼女は…。
左頬が痒い。
痒い。痒い。痒い。痒い。
そして、
うなじに夏場には不似合いな空気の冷たさを感じ、背後を反射的に振り返る。
…いない。
よかった。と安心したのも束の間。
ははははははははははははははは。
と、
真後ろから笑い声が、金属をすり合わせたかの様な甲高い笑い声が、俺の耳を劈いた。
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逃げなくては。そう、頭ではわかっているのだが、動けない。
恐怖心からか、はたまた金縛りか、指一本動かせない。
誇張では無く本当に、身体を震わせる事さえままならなかった。
ソレの笑い声に混じり、自分の呼吸音がやけに鮮明に聞こえる。
頭が痛い。
吐気がする。
笑い声が近付く。
耳元に吐息がかかった。
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その時、
目の前に小さな光を見た。
今まで月明かり一つ漏れてこなかったその深い森に光が差し込んだ。
その微かな眩しさに目を閉じかける。
そして気が付いた。身体が動かせる様になっていたんだ。
走り出す。力の限り。ただ光だけを目印に。
逃げる、逃げる、逃げる…
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彼女の笑い声が遠のいていく。
光が目前へ近づいていく。
近づくにつれ、その光は二本の懐中電灯の明かりだったとわかる。
その持ち主は、ヨッチャンとマル棒だった。
巨木の向こう側で2人が俺に手を伸ばしていた。
あと少し。
気付く。
頬が。
痒い。
何かが、肩をつかんだ。
ものすごい力で引っ張られる。
体力の限界だ。振り払えない。 森へ戻される。
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光が直ぐ目の前で揺れた。
2人が俺の両手を取る。
片方は優しく、片方は力強く、俺の両手を掴んでくれた。
肩を掴む力が緩むのを感じる。
気が付くと俺は巨木の向こう側、いや、こっち側へと帰っていた。
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心配そうにヨッチャンが言う。
ヨッチャン「もう少し走れる?」
体力が限界だった。 これ以上走ることはできない。 と、微かに首を横に振る。
マル棒「無理でも踏ん張れ」
2人が両手を一本ずつ強く引っ張ってくれた。
引きずられる様にして最後の力を振り絞り、走り、森を出る。
その後の記憶は定かではない。
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次の日。
目を覚ますとそこは和室だった。
横には小太りの坊さんがいて、俺が起きたことに気が付くと部屋を出て温かい玄米茶を持って来てくれた。その時初めて自分のノドがカラカラだった事に気付く。温かいお茶をガブ飲みしたのは生まれて初めてだった。
坊さん曰く、ここは村はずれの神社らしく、俺は昨日、森を出た瞬間、地面にぶっ倒れ、そのまま気を失ったので、ここに運ばれたらしい。
神社に坊さんってのはありなのか?とは思いこそしたがそれよりも、その時の俺は坊さんに聞きたい事は沢山あった。
が、それを聞こうとすると、その前にまずは昨日森であったことを教えてくれ、と坊さんは言った。
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お坊さん「やっぱ、そうだったか」
昨日の一部始終を聞いた後、坊さんは訳知り顔でそう言った。
俺「やっぱってどういうことですか」
お坊さん「いやな、君の右の肩、見てみ」
そう言われ、服の下を見てみると、俺は一気に毛が逆立った。
そこには赤い手形がついていた。
俺は思わずその場で吐きかけた。
お坊さん「すまん。怖いよな。でも安心してくれ君の身体に憑いてるなんて事は無いから」
背中をさすりながら坊さんは優しくそう言ってくれた。
お坊さん「でも、君には話さなきゃいけんな。昨日、君が見たって女の子の事と、この村の昔話をな」
そうして坊さんの話は始まった。
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昔々の話らしい。
この村で、真っ白な肌と髪を持つ女の子が生まれた。
それは今ではちゃんと先天性白皮症という名前がついているもので、先天性、つまり生まれつきのものらしい。
だが、勿論当時はそんなことわからなく、村人達は女の子を、その美しさに、神の子と崇め始めたんだという。
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殆どが農民だった村人達は豊作を願い、月に一度、太陽の下、数時間にも続く稲穂の神への祈りをこの神社で女の子に行わせていたらしい。
だが、女の子が生まれてから十数年の歳月が経ったある年だった。
村では近年稀に見る程の飢饉が起こった。主に日照りが原因だったのだという。
だが、それをどうすることも出来ない村人達は稲穂の神に祈りを捧げる事しかできなかった。
女の子の月に一度の祈りは毎日行われる様になる。日中の日照りの中、数時間にも渡る祈りが、毎日だ。 おまけに先天性白皮症というのはメラニン色素が少ないという理由から太陽光に弱いという特徴があるらしい。
それらによって女の子は日に日に弱っていく。だが、村人達が祈りをやめさせる事はなかった。
だが、その祈りも虚しく、日照りと飢饉は続く。
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その最初の犠牲者は女の子両親だったという。女の子は一人になった。
そして、当時の村人の一人が言った。
『白い子供の所為だ。アレは神の子などでは無い。自分の両親さえあやめてしまう妖なのだ。俺達全員を葬ってやろうとしているのだ』
と。
飢饉が続く中、祈りを続ける為に村の食料は優先的に稲穂の神と、女の子に捧げられていたらしい。
だからそれを羨み、そして恨んだ人のやっかみだったんだろう。
だが、あろう事か、村人達はその言葉を受け入れてしまう。
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掌を返す、とはまさにこのことで、
村人達は、両親をも失った女の子をあの森の奥深くへと追いやった。
そう。俺が女の子を追ったあの巨木がある森のことだ。
あそこの巨木はその大きさから当時は神社と同じく神聖なものとして扱われていたらしい。
村人達は神聖なるその森で女の子をあやめた。
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そして皮肉にも、偶然か、必然か、その年から日照りは無くなり、村の土地は豊かになったという。
だけど、その代わりとして始まったのは神隠しだった。
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女の子が亡くなった翌年から、村では行方不明者が多数出たという。そして、何ヶ月か後に森の奥で見つかるのだ。その体はどれも痩せ細り、まるで何も食べていない様だったらしい。
それに重ね、女の子を見たという村人達が後を絶えなくなった。
村人達は嫌でも気づく。女の子は悪霊となり、自分達をあやめてしまうつもりなのだと。
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そして村人達はその地方で名高いお坊さんに助けを求めた。
そのお坊さんは、森の聖なる巨木を媒体とし女の子の魂を森の奥、巨木の向こう側へと縛り付けたという。
そうして村の神隠しは終わりを告げたんだ。
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お坊さん「それで、私がその坊さんの末裔という訳なんだ」
坊さんはそう続ける。
お坊さん「まあにわかには信じがたい話なんだが、実際に見た君は信じる他ないわな」
俺「はい、まあ、大体は。でもその縛り付けたってとこがよくわかんないです」
お坊さん「縛り付けたのになんで、森の外で見えるのかっちゅう事だろう」
その通りだった。それに、俺だけが見えてたなら霊感云々の話で納得出来なくはないが、あの皆の反応は明らかに見えてる人のものだった。
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お坊さん「それはな、私の先先代、当時、霊を縛り付けた坊さんの情け」
俺「情け」
驚きはしなかった。むしろそれは予想の範疇だった。
お坊さん「そう。肌が白い、髪が白い、それだけの理由で女の子は周りに人生を曲げられた。流石に力は、魂は、外に出せないが、気持ちとか心は外に出させてあげようっていう先先代の情け。
それに先先代は少し、天邪鬼なとこがあってな、女の子を鬼にしたのが彼等、村人達なら、彼等もそれなりの業を負うべきって考えがあったらしい」
業を負う。つまり、それに見合った罰は受けろということなのだろう。
村人達は女の子の姿を見るたびに自分達のしたことを、もしくは祖先がしたことを思い出し、恥じ入り、恐怖する。
坊さんの先先代とやらはそれが、村人達にとってあるべき姿だと考えたのだろうか。
それは本人しかわからないことだが、少なくとも俺は、ここの人達には申し訳ないが、それが正しい事の様に感じた。
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お坊さん「だから本当はこの村の人以外に彼女は見えない筈なんだが。こんなことは初めてだったんだわ。なんで君には彼女が見えたんだろう」
お坊さんは不思議そうに呟くように、そう言った。
今までの話を聞くと女の子はむしろ村人達の被害者の様に思えた。 つまりこれは古から続く虐めなんだと思う。
霊感があるから彼女が見えた、と言うのは簡単だけど、俺はそれだけでは無い気がした。
虐めへの悲しみや怒りの様な、負の感情で俺と彼女が繋がってしまったのが、彼女が俺に姿を見せた理由の様な気がしたんだ。
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俺「彼女に名前はあるんですか?」
なんとなく彼女の名前が知りたくなったから、聞いた。
お坊さん「名前はなあ、付けちゃいけないんよ。正確に言うと彼女には興味や好奇心などの意識を極力向けてはいけない」
俺「どういうことですか?」
お坊さん「これは霊や妖と呼ばれるモノ全般に通じる事なんだが、意識をそれに向けるってのは結構危険な行為なんだ。
自分が魅入るか、奴さんに魅入られるか、まあなんにせよロクなことにならない。
触らぬ神に祟りなしってのは正に先人の知恵なんだな。
そんで、それはやっぱ彼女に対しても同じなんだ。聞く限り君は今回彼女に魅入ってしまったし、彼女もまた、君を魅入ってしまった」
魅入って、魅入られた。
俺は彼女が虐められてるのでは、と心配をした。その時から俺は彼女に魅入ってしまったのだろう。
そして、時代は違えど、どこか通じるところがある俺を彼女は魅入ったのだろうか。まあ、それは俺の知る由もない事だが。
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そんな事を考え込んでつい無言になってしまった時だ。
お坊さん「いけない」
と、そう言われた。
お坊さん「さっきも言ったな。意識を向けてはいけないんだ。思い出すのは良い。だけど、考えるのはダメなんだ。意味通じるか?」
俺は首を縦に振った。
お坊さん「よし。私が今、ここで君と話している理由ってのはつまるところここにある。君が彼女に魅入られない様に、まあ、アドバイスってのをしに来たんだ」
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この後、俺は坊さんに三つの事を約束した。
一つは、考えない。 勿論彼女の事をだ。
二つ目は、今後森へ行かない。 森は言うなれば彼女のホームグランドらしく(おかしな例えだが)正常な判断が出来なくなる可能性があるらしい。下手な話、気づかない内に巨木の向こう側にいる、なんて事もあるかもしれないらしいんだ。
そして最後、三つ目。
お坊さん「友達を大事にする事」
と、坊さんは言った。 だがこれには流石に困惑した。
俺「え?」
お坊さん「いやいや、大切なんだよ。君を連れて来てくれた2人。友達だろう?」 俺は戸惑いながらも頷く。
お坊さん「彼女には出来なかった事をするのが大切なんだ。同調してはいけない。似てたってなんだってね、君は君だ。この夏休み、友達とめいっぱい遊ぶんだよ」 全てをを見透かしたように坊さんは笑みを浮かべながらそう言ったんだ。
俺「…はい」
お坊さん「よし。じゃあこれでアドバイスはおわり。車で祖父母さんの家まで送るね」
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其の後、俺はなんで森の奥へ行ったのだと祖父母にめちゃくちゃ怒られた。そんでめちゃくちゃ強く抱きしめられた。そして俺はめちゃくちゃ申し訳なくて、でも嬉しくて泣いた。
坊さんは粗方の事を祖父母に説明し終えると、俺に念のためと、電話番号を書いたメモ用紙を渡し帰って行った。
其の後すぐにヨッチャンとマル棒が来て謝って来た。
最初に全部話すべきだった。 ごめん。と。 殴るにしてもグーはなかった。今度からはパーにする。ごめん。と。 わけわかんなかった。 謝るべきはどう考えてもこっちなのに。
先に謝られてカッコつかなかったので、俺は土下座した。
流石にこれには二人とも不意をつかれたらしく、ギョッとした後、笑って俺の頭を小突いた。
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その日は三人で祖父母の家に泊まり、昨日の事についていろんなことを話した。
どうやらやはり村人達全員、大人から子供までが、女の子の存在は知っているらしい。そしてその女の子を魅入らない為の対処法もだ。 そして村の大人達はは子供に、村の外から来た人には女の子の事を話してはいけない、と言っていたらしい。 話すと彼女に意識を向けてしまうから、という理由だったらしいが、今回はそれが全て裏目に出たということだ。
こうして俺の夏休みは再開した。 既に残った日は少なかったが、坊さんに言われた通りヨッチャンやマル棒達とアホみたいに遊んだ。
そして、あの森での一件以来、女の子を見ることは無く夏休みは過ぎていったんだ。
嘘みたいな速度で時は過ぎ、夏休み最後の日。祖父母の家の前に父が車で迎えに来た。ド田舎から田舎へ帰る日がきたんだ。
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沢山の見送りが来てくれて驚いた。村の子供達と大人達、坊さんまでいた。
そして何より、ヨッチャンとマル棒が泣いていたんだ。 俺も結局泣いてしまった。 祖父母も、何故か父も、貰い泣きしていた。
また、ヨッチャン、マル棒達と会う約束をして俺は村を出る。 車の後部座席に座り、流れる村の景色を眺めていると、その景色はやがて、あの森を映し出した。森の横を通り過ぎる。
その時目に映ったのは、俺と同い年の女の子。
目指し帽を被るのはどうやらやめたらしく、綺麗な白髪のおかっぱ頭を風になびかせている彼女の顔には、心無しか、笑みが浮かんでいた気がした。
まあなんにせよ皆とはさようなら。もしまた会うとしても、それはずっと先の話だ。そう俺は思った。
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俺はその後、結局父の地元の高校へは進学せず、俺の地元の高校への進学を決めた。
逃げちゃいけないと思ったんだ。
戻って来られなくなる気がしたから。
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そして、今。
俺は中学校の教員を目指し日々奮闘中。
今でも連絡を取る仲であるヨッチャンと、マル棒も、それぞれ、同じ様に無い頭を捻って、人生を謳歌している。
祖母は今でも元気だが祖父は去年、老衰で亡くなった。 祖父の葬式の時、あの時の坊さんに久しぶりに会って、弟子にならないかと、冗談混じりに、それとなく誘われたが、低調に断っておいた。
今でも時々、何も無い空間に何かを感じたり、左頬が痒くなる事があるが、もう昔の様に気にする事はない。
気にしたところで仕方が無いと学んだからだ。
- 1000: 20xx ザ・ミステリー体験
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これで、話はおしまい。
聞いてくれた人全員に感謝します。
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