bandicam 2017-03-29 18-51-04-068

1: 2011/11/18(金) 13:17:50.34 ID:WtbXsZQBO
あの出来事から、ずいぶん年月が過ぎたので、客観的に当時の記憶を見られるようになった。

そんな過去の思い出を書こうと思います。
遅筆ですが、ぼちぼち書いていくので生暖かい目で読んでください。


管理人です。こちらは4月で最も読まれた記事になります。


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2: 2011/11/18(金) 13:19:50.38
宗教?
3: 2011/11/18(金) 13:25:03.92 ID:L7/lDu6X0
>>2
それもあります

PCから書きますので、IDが変わりますがよろしくです
4: 2011/11/18(金) 13:26:15.91
洗脳と教育の違いって何?
5: 2011/11/18(金) 13:31:07.81 ID:L7/lDu6X0
>>4

教育は人を成長させるけど、洗脳は人の人生を崩壊させると思います
6: 2011/11/18(金) 13:32:38.62
これは期待
7: 2011/11/18(金) 13:35:58.88 ID:L7/lDu6X0
はじまりは、とある宗教の人生相談のサイトだった。
「誰か悩んでいる人がいたら、メールしませんか?」
そんな投稿にメアドを載せた。

私は当時、高校一年生。将来の夢はカウンセラーになること。
きっかけは自分の兄弟が荒れて、更正した時に話を聞いてあげて役に立てたこと。
その中で、とある宗教の人に助けられたこと。
悩んでいる人達の力になりたいと思っていた。

今思えば、私自身が潜在意識の中で悩みを抱えていたのかもしれない。
自信過剰な小娘だったのは間違いないけれど。
8: 2011/11/18(金) 13:39:28.20
何年前の話?
10: 2011/11/18(金) 13:43:44.37 ID:L7/lDu6X0
>>8
約10年前の話です
9: 2011/11/18(金) 13:40:06.31
いい洗脳もあると思うけどな
思い込みの力はすごいよ
10: 2011/11/18(金) 13:43:44.37 ID:L7/lDu6X0
>>9
確かに、良い洗脳というのもあるかもしれません
思い込みというのは良くも悪くも、人の人生を変えるかな、と思います
12: 2011/11/18(金) 13:44:41.47 ID:L7/lDu6X0
メールはなかなか来なかった。
数日後、ようやく来た1通のメールは、こんな内容。
「私は43歳のまく吉といいます。
今仕事に行けなくて悩んでいるので、良かったらメールしてもらえませんか」

待望のメールだったので、当時16歳の私は喜びつつ、困惑した。
43歳って、自分の親に近い年齢だったから。
ただ、私の目的はあくまで、「悩んでいる人のために何かしたい」だったので、
特に気にすることなくメールを返すことに決めた。
また、宗派は違えど、同じ宗教に入信している人に悪い人はいない・・・そんな考えを持っていたから。
14: 2011/11/18(金) 13:50:57.03 ID:L7/lDu6X0
「はじめまして。夕子といいます。私でよければお話聞かせてください(*^^*)」

当時の私は初めてネットというものが我が家に導入されて、浮かれすぎていたのだろう。
怖さ、というものを知らなかったのだ。

その後、まく吉さんは私に、仕事へ行けない悩みや自分の通っている宗教サークルに関して色々話してくれた。
もちろん世代が違うから、音楽などの一般的な趣味の話題はなく、話題にあがるのはもっぱら仕事の悩みのこと、宗教の話だった。
そして、私自身の生活の様子に関しても話題が挙がった。
私は、「今日は世界史の授業が面白かったです」とか「体育があって嫌です」など高校生活の話をした。
16: 2011/11/18(金) 13:59:28.02 ID:L7/lDu6X0
また、Sさんという好きな人がいること、その人は30歳で、年上なのでなかなか告白できないことなどを話していた。
気づけば私のほうが相談していたような気もする。

メールを始めて3,4ヶ月が経った頃。内容に変化が訪れていた。

「最近、夕子さんのことばかりを考えてしまいます」
「今日も夕子さんが幸せであるようにと願っています」
あれ、なんか方向が変わってきたな・・・と思い、返事をためらうようになっていた。
でも基本的に鈍感な私は、そこには触れずにさらっと返していた。
18: 2011/11/18(金) 14:12:12.52 ID:L7/lDu6X0
そんなある日、唐突にこんなメールがきた。
「私はあなたを愛しています。結婚を前提に付き合ってくれませんか」

16才の私は困惑した。相手は43歳だし、会ったこともないし・・・。
ただ、私は、他人から「愛してます」なんて言われたことがなかったので、
少し嬉しかったのだと思う。
告白といえば、中学の時に友達経由で2度されただけで、直接言われたこともなかった。
今考えると色々と支離滅裂なんだけれど、当時の私は極端に無知な箱入り娘だった。
少女漫画や映画に出てくるような、メールだけでお互いを知った男女が結婚する・・・
そんな恋愛が素敵だと思っていた中二病な私だった。

まあ、自分の両親が文通を通じて、知り合い、結婚した経緯もあったからなんだけど。
20: 2011/11/18(金) 14:17:14.38
夕子ちゃん逃げてえええ。。。><
23: 2011/11/18(金) 14:28:47.68 ID:L7/lDu6X0
>>20 

読んでくださってありがとうございます
亀レスですが、よろしくお願いします
22: 2011/11/18(金) 14:27:17.85 ID:L7/lDu6X0
私は、「まだまく吉さんのことを、よく知らないので・・・会ったこともないし・・・」と返事をした。
彼は、「一度でいいから会ってもらえませんか」と言った。

私は、躊躇していた。そして、とりあえず電話をする流れになり、まく吉さんと初めて電話越しに話した。彼は聡明な雰囲気の人で、話がとても上手だった。こちらの警戒を簡単に解いてしまうような、話術を持っていた。
そうして、彼に言われるまま、1度会ってみることに決めた。

当時の私は高校生で、門限は夕方5時だった。
なので、指定した場所と時間は、爽やかな緑の多い公園に、昼の1時。

約束したことを半分後悔して眠れない夜を過ごすうちに、その日がやってきた。
24: 2011/11/18(金) 14:41:44.13 ID:L7/lDu6X0
あの日。夏の暑い日だった。

ピンクのワンピースを着て、私はそわそわしながら彼が乗っている電車が到着するのを待っていた。
あの時のなんともいえない緊張感は、今はもうはっきりと思い出せないが、それはもう心臓がドキドキしていたのを覚えている。

知らない人と会う、ためらいや罪悪感も感じていた。
待っている間に、踵を返して帰ろうかと思ったことも。
だけど、それ以上に好奇心と、約束したからには会わないといけない、そんな変な責任感が私の中にはあった。
25: 2011/11/18(金) 14:56:28.89
冷静に考えると親と子の年齢差だよなw

ウチがそうだとか思ってたら凄い気の毒になってきた…
27: 2011/11/18(金) 15:22:03.38 ID:L7/lDu6X0
>>25
そうですね、最初はすごく抵抗感がありました

でも私は結構おおざっぱな性格なので、30歳の人を好きになるくらいだから、
40代でもそんなに変わらないんじゃないか、と思ってました(?)
26: 2011/11/18(金) 15:20:40.32 ID:L7/lDu6X0
電車が止まる。扉が開く。
私は、時刻表の影に隠れて、出てくる人達を見守った。

田舎の駅。降りてきたのは、一人だけだった。

その時思った第一印象は、ケンタッキーのおじさんだ。
(これ、もう本人が読んだら、色んな意味でゲームオーバーなので、ちょっと怖いけど続きを書きます)
背は高く、白髪交じりの頭に丸めがね。すこし小太り。ひげこそ蓄えていなかったが、顔立ちも雰囲気もケンタッキーのおじさんにそっくりだった。

正直、驚いた。

何が驚いたかって、話で聞く限り、洋画に出てくるようなダンディーなおじ様が現れる予定だったから。
夢見がちすぎた私の心は半分折れた。
28: 2011/11/18(金) 15:47:52.70 ID:L7/lDu6X0
だけど、私は未知の体験に対して、割とすぐ順応してしまう悪癖の持ち主であり、
驚いた顔をしたら失礼と思ったので、おずおずと笑顔で話しかけた。
「あの・・・っ、まく吉さんですか?」
「あっ、夕子さんですか?はじめまして、まく吉です」

挨拶を交わすと、ぎくしゃくしながら、公園のベンチに座った。
緑が青々としている中、子供たちやおばあさん達が散歩をしていた。
私は、その時何が一番気になっていたかというと、自分のスカートの裾だった。
裾から半透明な裏地がたまにチラチラとするのが気になって仕方なかったのを覚えている。
一生懸命手で押さえながら、話をしていた。

会話の内容はあまり覚えていない。

ただ、その人は、話術が巧みで、今でいうと空気を読むのも上手だった。
間の空け方、様子を伺っての言葉選びなど。
29: 2011/11/18(金) 15:52:31.50 ID:L7/lDu6X0
そうして、2時間くらい話しただろうか。私達はベンチを立って、一緒に電車に乗った。
その時に周囲の女子高生がこっちをちらちら見ていたのが、とても嫌だった。

援助交際でもしているように思われたのか?
分からないけど、そんな関係じゃないのに・・・と気分が悪くなったのを覚えている。

そうして私は自転車で帰宅し、その人も地元に帰っていった。
これが、悪夢の始まりになるなんて、当時の私には全く想像ができなかった。
今の私なら、あの掲示板に投稿をした時点で、想像に難くないんだけれど。
31: 2011/11/18(金) 15:57:49.53 ID:L7/lDu6X0
私は帰宅後、メールをした。
「やっぱり、年齢のことなどもあるので、お付き合いは考えられません・・・ごめんなさい」
だけど彼は簡単には食い下がらなかった。
熱烈にアピールをしてきていた。
「初めて見たとき、こんなに美しい人が世の中にいるのかと思ったよ」
「私は真剣にあなたを愛しています。会ってから、余計その思いが強くなりました」

そんな言葉の羅列に、「そんなこと言われたの初めて!」って素直に喜んでいた当時の自分がなんとも可笑しい。
32: 2011/11/18(金) 16:06:25.57 ID:L7/lDu6X0
私は、こう返事をした。
「やっぱり、年上のSさんが忘れられません・・・」

彼は、
「なら、告白してみなさい。もし振られたら、私と付き合いましょう」
今思うと、なんで、振られる=まく吉と付き合うって選択肢しかないのか分からないのだけど、その時はうまく断ることもできず、「考えさせてください」と返答していた。

そうして、私は人生初めての告白をすることになった。・・・メールで。
33: 2011/11/18(金) 16:07:11.31 ID:L7/lDu6X0
Sさんは、学童保育のお手伝いをしている人で、私も子供が好きだったので、週に1度ボランティアで働いていた。
方言なまりのある、気さくで笑顔がすてきな人だった。

「2年前から、Sさんのことが好きでした。いつも私のことを気にかけてくれたことが嬉しかったです」
そんな内容だったと思う。

付き合ってください、とは書けなかった。
年齢も離れてるし、思いを伝えるだけで精一杯だったから。
34: 2011/11/18(金) 16:27:15.86 ID:L7/lDu6X0
彼から来た返事はこんな内容だった。

「夕子ちゃん、メールありがとう。夕子ちゃんはまだ若くて、これからの人生が待っています。僕はその気持ちを受け取ることは出来ません。これからも、児童教室でよろしくお願いします」

振られた・・・すごくショックだった。
分かってはいたけど、実際に言葉で断られて、とても悲しくて涙が出た。

そんな時、まく吉さんからの電話が何度も鳴っていた。

「フラれました・・・」
「そうか・・・辛かったね。泣いてもいいんだよ」
「はい・・・」
37: 2011/11/18(金) 16:34:26.38 ID:L7/lDu6X0
一通り泣いて、Sさんがどれだけ好きだったかを話した後、彼はこう言った。

「私が夕子ちゃんを絶対に幸せにするよ。一生愛すると誓います。だから、結婚を前提に付き合ってください」
「・・・・・・」
「・・・・はい」

フラれたショックで私は正常に物を考えられなかったのだと思う。
この人は、私のことを一生愛してくれる・・・それなら、この人と結婚をするのも良いのかもしれない・・・。
本気でそう思っていた。
付き合うからには、この人のことを好きになろう、そう思った。

こうして、17歳になる夏。私は、まく吉さんの彼女になった。
42: 2011/11/18(金) 16:42:51.23
とっても純粋な子と言い換えておこう
44: 2011/11/18(金) 16:45:24.34 ID:L7/lDu6X0
>>42
ありがとうです・・・!
43: 2011/11/18(金) 16:43:52.45
ちょっと気になるので聞くけど1の容姿はどんなもんで?
45: 2011/11/18(金) 16:49:36.69 ID:L7/lDu6X0
>>43

当時はおかっぱ頭でした
背は158センチで、細め

顔は日本人ぽくて丸顔です
49: 2011/11/18(金) 17:25:51.90
年甲斐もなく話術で子供を誘導するとか……

まあ >>1 も悪いかもしれんけど、それを理解して話すカーネルは相当アレだよな
50: 2011/11/18(金) 17:56:58.23 ID:L7/lDu6X0
>>49

まく吉は自覚があったのか、無意識で人を操る才能があったのかは、
今はもう分かりませんが・・・

怖いなと思います
53: 2011/11/18(金) 18:30:58.59 ID:L7/lDu6X0

彼女になって、初めてのデートをすることになった。

なんだか変な気分だったのを覚えている。
それまで誰かと付き合ったこともなく、私の恋愛経験値はゼロに等しかった。

隣町の駅で待ち合わせをして、改札口の前でまく吉を待った。
手に汗をかいていたと思う、実感がわかなかった。
そうして現れたのは、やはりケンタッキーのおじさんだった。

ときめきとか好きとか、そういうのはよく分からなかった。
だけど、誰にも言ってない秘密の交際。
そのなんとも言えない緊張感を、恋なんじゃないかと思っていた。
54: 2011/11/18(金) 18:32:04.02 ID:L7/lDu6X0
私達は、手をつなぐこともなく町並みを歩いて、ご飯を食べ、他愛もない話をした。
初めて明石焼きを食べておいしかったことを覚えている。

周りの目が最初は気になったけれど、だんだん慣れていった。
そして、この誠実そうな男性の彼女になったんだな・・・と少しずつ実感していった。
幸せだったと思う。
55: 2011/11/18(金) 18:38:52.03 ID:L7/lDu6X0
まく吉は遠方に住んでいたため、会うのは月に1度程度だった。

私は門限5時の生活を送っていたため、会うのは大体朝10時から夕方4時くらいまでだった。
知り合いに会うのを避けたかったので、普段使わない駅で待ち合わせをして、お昼を一緒に食べて、話をして・・・大したことは何もない。
ただ、手をつないで歩くくらい。

すれ違う人の目は冷たかったけど、知らない人たちだったので、特になんとも思わなかった。

そんな風に数ヶ月が過ぎていった。だんだん恋心も芽生えていった。
57: 2011/11/18(金) 18:58:46.22 ID:L7/lDu6X0
まく吉は30才頃に一度うつ病を発症して辞職、その後転職し、だましだましなんとか仕事を続けていた。
だけど月に1度会う程度では、特にそれに対する強い危機感はなかった。

強いて言うなら、電話口で、幼児言葉で甘えてくるくらいだった。
最初は驚いたものの、スポンジ脳な私はそれも受け入れていった。
58: 2011/11/18(金) 18:59:28.25 ID:L7/lDu6X0
秋から冬になる頃、気になることが起こった。
まく吉は宗教関係のサークルに入っていて、そこで知り合った男女二人と一緒に週1度の勉強会を行っていたのだけど、その女性とまく吉がどうも親密な様子だと、電話で話を聞きながら感じた。

私は、自分はまだ幼いし、その30代前半の女性のほうが、まく吉にお似合いではないか、いつか気持ちが移ってしまうのでは、という不安に駆られた。

でも、友人だということだったので、そのときは特に何も言わなかった。
61: 2011/11/18(金) 19:05:25.22 ID:L7/lDu6X0
3月の終わり、まだ肌寒い季節に、まく吉とその女性(リサさん)が最近二人で会っているらしいと聞いて、私は「付き合ってる彼女がいることは、リサさん知ってるの?」と尋ねた。
すると、まく吉は言葉を濁して、「伝えてない」と言った。

それを聞いて、胸騒ぎがした。

「話を聞いていると、リサさんはまく吉のことが好きみたい。遠距離中の彼女がいることをちゃんと言ってほしい」と言った。
まく吉は渋々、「わかった」と言い、次の勉強会の時に、話すと約束してくれた。
62: 2011/11/18(金) 19:08:33.53 ID:L7/lDu6X0
その結果が気になって、電話が来るのを、家の中を一人でぐるぐるしながら待っていたのを覚えている。

そうして帰宅したまく吉に「どうだった?」と聞くと、

「帰り道で彼女がいるって話したんだけど、リサさん泣いていたよ」と言った。

泣くってことはやっぱり好きだったんじゃないのかな・・・嫉妬のようなものが生まれていた。
64: 2011/11/18(金) 19:12:45.80 ID:L7/lDu6X0
それから、私は高校3年生に進級した。

進路は、元々行きたい大学があったのだけれど、
まく吉が「自分の地元にぜひ進学してほしい。将来結婚するんだから」と言っていたし、

私もその頃はまく吉を好いていたので、
「近くの学校に通ったほうがいいかな」と思うようになっていた。

そうして、進路変更して、まく吉の地元の短大へと進むことに決めた。
短大にしたのは、43歳のまく吉の年齢を考えて、早めに結婚しようと思ったため。
この時点でセンター向けの勉強を止めて、3教科特化型の勉強方法に変えてしまった。

当時の私に迷いはなかったから。
65: 2011/11/18(金) 19:13:18.01 ID:L7/lDu6X0
そうして、穏やかに夏が来た。
純愛と呼べるくらいに私たちの関係はプラトニックに見えたし、年齢差以外を思えば、普通の恋人同士として幸せだったと思う。
特に何も疑うことなく、私は将来に希望を抱いていた。

破滅の足音が近づいているなんて、露にも知らず。
68: 2011/11/18(金) 19:16:44.45 ID:L7/lDu6X0
夏休みが始まる頃、こんな話が持ち上がった。
まく吉が、宗教サークルのみんなで旅行に行くという。
そのメンバーの中には彼に好意を抱いていると思われる、リサさんも参加すると聞いた。

しかも期間は10日間、海外。

私はそれを聞いて、心配になったし、また私自身海外旅行へ行きたい気持ちもあり、まく吉に相談した。
そうして、サークルのリーダーに、一緒に参加できないかと掛け合うことになった。
69: 2011/11/18(金) 19:18:43.44 ID:L7/lDu6X0
まく吉は、「結婚前提で付き合っている夕子さんという人を一緒に連れて行きたい」と話して、
結果、私も参加することとなった。

私の両親はというと、門限など厳しいところはとことん厳しい家だったのだが、しっかりした子だと思われたため、2つ返事でOKがでた。

もちろん両親はまく吉と私が付き合っていることなどは知らない。
私は両親に、語学研修にもなるからと説明した。
70: 2011/11/18(金) 19:19:15.26 ID:L7/lDu6X0
また、そのサークルのリーダーは、精神科の分野で社会的地位のある著名人だったため、
メールを交わして任せられるだろう、という判断で私を送り出すことになった。

私は、小学生の時から一度も使うことなく貯めていた20万円の貯金を、その旅行代金として当てた。


そうして悪夢の旅は幕を開けた。
71: 2011/11/18(金) 19:28:30.89
20万円…!
75: 2011/11/18(金) 19:47:10.73 ID:L7/lDu6X0
>>71

当時の私には大金でしたー
お小遣い月5千円だったし
72: 2011/11/18(金) 19:35:30.38 ID:L7/lDu6X0
まく吉と一緒に空港へ行き、サークルメンバーと合流した。
私はついついリサさんの存在を目で探していた。
大半が50代のおばさんの中、一人とても綺麗な女性がいるのに気づいた。

それが、リサさんだった。

リサさんは芸能人としてでも通用しそうな目鼻立ちのはっきりした美人だった。
対して私は、黒髪おかっぱのあかぬけない高校生だったので、ショックは大きかった。
まく吉がこんなに綺麗な人に好意を持たれていたなんて・・・と。
73: 2011/11/18(金) 19:36:07.42 ID:L7/lDu6X0
メンバーは、合計10人前後。
リーダー、私とまく吉、リサさん、50代から60代のおばさんが5,6人ほど。

おばさん達は、みんな宗教の、というよりはリーダーの熱心な信者みたいだった。
リーダーを取り囲んで、キャーキャー言っていたのを覚えている。

また、同じようにまく吉もおばさん達から支持を受けているようで、尊敬のまなざしで見られていた。
74: 2011/11/18(金) 19:40:06.57 ID:L7/lDu6X0
飛行機の中で私はまく吉の隣に座った。

元々出来上がっているサークルに飛び入りしたわけで、
自分は人見知りではないと思っていたけれど、まったくの知らない人たちの中で、
どう立ち回ればいいか分からなかった。

年齢も一人だけ高校生ということで、どう考えても浮いていた。
76: 2011/11/18(金) 19:47:54.66 ID:L7/lDu6X0
旅行でのホテルは10日間同じ場所に宿泊することになった。
私の部屋はリサさんと同室だった。
夫婦でもない、未成年の私をまく吉と同室にすることは出来なかったのだと思う。

リサさんは、私のことをある程度聞いていた様子で、
初日は「よろしくね」とやさしい笑顔を向けてくれて、私はほっとしたのを覚えている。
だけれど、一緒に観光に出向くということはなかった。
もうすでに内輪のグループがあって、気づくと部屋からいなくなって、観光に出かけているようだった。

私は必然的にまく吉に頼るほかなかった。
でも、常に一緒にいる私たちを、おばさん達は快く思わなかったようだ。
77: 2011/11/18(金) 19:51:14.95 ID:L7/lDu6X0
2日、3日と経つにつれ、リーダーの元へと私たちにまつわる悪い噂や批判がいくようになっていた。
一人、おばさんの中で、はぶられ気味にされていた女性が教えてくれた。

きっとどこかで手をつないで歩いているところを見られたのが原因だと思われる。
そうして、旅行も残り半分になる頃、私とまく吉は、リーダーの部屋へと呼び出された。
79: 2011/11/18(金) 20:06:13.40 ID:L7/lDu6X0
リーダーは私たちを部屋に入れると鍵を閉めた。

「あなたたち、なぜここに呼ばれたか分かりますか?そこに正座しなさい!!」

おずおずと土足の床に正座すると、リーダーは怒鳴りながら説教をした。
私は何がなんだかよく分からずにただ硬直していた。
恐怖しか感じていなかった。

どうしてこんなに怒っているの?

それがよく理解できず、ただただ怖かったのを覚えている。
書いていて、あの時から何年も経った今でも、体が震えるくらいに。
80: 2011/11/18(金) 20:10:02.29 ID:L7/lDu6X0
そしてリーダーは主に私を責め立てた。

その宗派的に、男女交際自体があまりよく思われなかったのもあると思う。

ただ、まく吉はリーダーからの厚い信頼を得ていたため、
私が余程悪い、そそのかしている娼婦にでも見えたのかもしれない。

怒りの矛先は私の元へと集中した。
頭の中が真っ白になり、ひたすらに正座をしてうつむいていた。
81: 2011/11/18(金) 20:11:44.37 ID:L7/lDu6X0
私はそのリーダーのことを旅行に行く以前は著名人として、
また精神科の権威ある人として尊敬していたので、
私は自分が余程悪いことをしたのだと思って自分を責めた。

でも心の奥底では納得してなかったのだと思う。
何がそんなにいけないの?きっとそんな気持ちもあった。

説教は、3,4時間続いた。
彼がようやく正座した足がしびれて、よろけながら私たちは部屋を出た。
私は茫然自失としていた。
82: 2011/11/18(金) 20:12:14.80 ID:L7/lDu6X0
何がどうしてこうなっているの?なんで怒鳴られているの?
手をつないだのを見られたのが、そんなに問題になった?

疑問が頭の中をぐるぐると巻いて、底知れぬ恐怖だけがそこにあった。

私はそれまでの人生で、品行方正な優等生、と言われ続けていたため、
自分がそんなに素行の最低な人間として怒鳴られる、なんていうのは初体験で、
だからこそ余計困惑と恐怖を覚えたのだと思う。

まく吉は、部屋から出た後、私とは話したがらずに、自分の部屋に戻っていった。

その日の夜、私はただ帰りたいと願いながら、床に就いた。
83: 2011/11/18(金) 20:15:11.73 ID:L7/lDu6X0
翌日も私とまく吉はリーダーの部屋に呼び出された。
同じく正座をさせられ、怒鳴られながらの説教、同じことの繰り返し。
少しでも反抗的な目をしようものなら、「なんだその目は!」と叱り付けられた。

なぜ連日呼び出されて怒鳴られるのか、分からなかった。
なぜサークルの人たちに顔を合わせると、顔をしかめられるのか分からなかった。
なぜリーダーに会うたびに睨まれるのか分からなかった。
84: 2011/11/18(金) 20:15:44.21 ID:L7/lDu6X0
年齢差のせい?付き合ってはいけないの?
なぜみんなまく吉には優しいのに、私には冷たくするの?
そんなに私はいけない子なの?

だけど、誰も知らない土地で、海外で、逃げ出すことも出来ないそんな環境で。
それが3日、4日と続いたため、私は自分が人間としてとても最低なんだと思うようになっていた。

まく吉は、徐々に私から離れていった。

私が部屋に呼びにいっても、無視されるようになった。他の人たちに声をかけても、苦笑いをして白い目で避けて通っていく。

海外である程度田舎な場所にホテルをとっていたため、徒歩での移動はそんなにもできず、相談する相手もなく、私は精神的に追い詰められていった。
86: 2011/11/18(金) 20:18:44.41 ID:L7/lDu6X0
いつしか、誰もいない部屋でひとり、テレビを見るようになっていった。
楽しみにしてきた海外旅行で、一人ぼっちで外国のテレビを見る・・・自然と涙がこぼれた。
CMで日本企業の車が映し出されると、懐かしく感じるほどだった。

日にちはまだ数日ある。
どこにも逃げられない、人の目が怖くなった。

そんな中で、唯一楽しかった記憶といえば、ひとりぼっちで公園にいたとき。
外国の子供たちが私に声をかけてくれて、芝生の公園で一緒に遊んだこと。
あのときだけは、とても楽しかったのを覚えている。

私はまく吉に疎まれても、他に行く場所がなかったので、なんとか一緒にいられるように、声をかけてついて回っていた。
87: 2011/11/18(金) 20:20:03.82 ID:L7/lDu6X0
リサさんには最後の頃、少し事情を話したら、「大変だったね」と言って、「私は応援してるからね」と言った。
優しい人だと思った。

そうして、辛かった旅行は終わった。
私はまく吉への怒りも感じてはいたが、それ以上に自分に対しての自信を失っていた。

ようやく自宅に戻ったとき、とても安堵したことを覚えている。
親に「楽しかった?」と聞かれたが、心配させるわけにもいかず、またまく吉の存在を明らかにしていなかったため、作り笑いで「楽しかったよ」と答えるしかなかった。

だけど、これで終わりではなかった。
89: 2011/11/18(金) 20:22:15.67
乙です

ちなみに何ていう宗教か言えないですよね
90: 2011/11/18(金) 20:23:47.12 ID:L7/lDu6X0
>>89

ちょっと名前は出せないですね、基本はまともな宗教だと思われます
ただ、宗派によってはかなりおかしなところもあると思います
95: 2011/11/18(金) 21:07:42.91 ID:L7/lDu6X0
まく吉はその旅行後、前から休みがちだった仕事に行かない日が続いた。

具体的には分からなかったけど、明らかに精神状態が悪く、病んでいるようだった。
私はまく吉を支えないと、と思っていた。
私のせいで、リーダーにも責められたのだから、と。

毎日苦しそうに仕事に行けないと愚痴を言う彼の話を、よく聞いていた。
交際に変化はなく、私はまく吉を信頼していたし、このまま何事もなく過ぎていくかのようにみえた。
96: 2011/11/18(金) 21:08:32.49 ID:L7/lDu6X0
事が動いたのは、夏休みも過ぎ、学校が始まってすぐの頃だった。

私は学校の帰り、偶然、その日はまく吉と初めて会った公園に来ていた。

のんびりしてから、駅に向かう途中、まく吉からメールがきた。

「別れよう」

私は踏み切りの近くまで来ていたのだけど、足を止め、愕然とした。
慌てて電話をかけるも、まく吉の電話はつながらなかった。


着信拒否をされていた。
99: 2011/11/18(金) 21:23:06.13 ID:L7/lDu6X0
夏の濃い緑、踏み切りの遮断機が下り、カンカンと鳴り響く音を聞きながら、
ただ、突っ立って携帯を握り締めていた。

なんで・・?
理由が聞きたかった。

蝉の声と通り過ぎて行く電車の色が、異様に頭にこびりついていた。

とりあえず連絡がほしいとメールを送り、
混乱したまま、気づいたら帰宅して自分の部屋にいた。

その日、私はまだ事実を受け止めることもできず、拒否された電話に何度もかけなおしたが、反応はなかった。食欲もなく、ただ苦しくて夜眠ることができなかった。
100: 2011/11/18(金) 21:24:05.26 ID:L7/lDu6X0
そうしてぐったりとして迎えた翌朝。まく吉からメールが来た。
おそるおそる開いてみると、

「やっぱり別れるのはやめよう」

と書いてあった。
意味が分からなかったので問い詰めたところ、こんな返事が返ってきた。


「リーダーに、夕子は精神異常者だから別れるように言われた」と。


このときの衝撃は、なんというのだろう・・・
今まで当たり前に立っていた地面が崩れていく感じとでもいうのだろうか。

私の人生全てを否定されたような気がした。
102: 2011/11/18(金) 21:25:49.89 ID:L7/lDu6X0
そのリーダーは、私を旅行中に執拗に責めた相手であり、
なおかつ社会地位的には、精神科の学位を持っている人だった。

短い間だが、尊敬もしていた。

その人に「精神異常者」と呼ばれた事実は、あまりにもきつかった。

私はいままで、どちらかというと平凡な高校生で、今まで特段な問題行動を起こしたこともなく、
夢見がち過ぎる性格ではあったけど、どこにでもいる高校生だと思っていたから。

それが、「精神異常者」というレッテルを貼られたことに私は悲しくて泣いた。
106: 2011/11/18(金) 21:31:56.10 ID:L7/lDu6X0
まく吉は、

「でも私は、夕子をかばったんだ、だから別れろと言われたけど別れなかったんだよ」

そういった。
それが唯一の救いのように感じていた。

まく吉はリーダーのサークルと距離を置いたようだった。

だけど、それから1ヶ月後、私の父宛に波乱を呼ぶメールが届いた。
108: 2011/11/18(金) 21:33:05.03 ID:L7/lDu6X0
それはリーダーから私の父への、警告文。

「おたくの娘さんは、ご両親に内緒で、40代のまく吉という男と付き合っています。
この男は以前私のサークルにいた者ですが、除籍しました」このようにメールは始まっていた。

最後は娘さんと別れさせたほうがいい迄をつづっていた。

それを、私の父は、プリントアウトして、無言で怒りながら私の部屋に投げつけた。
111: 2011/11/18(金) 21:35:05.57 ID:L7/lDu6X0
私はそれを見て、最初は青ざめ、そして悔しくて泣いた。

「なんでこんなことをするの?」

私はその紙の裏に、付き合っているのは事実だが、旅行中に連日怒鳴られたことや、
影で私を精神異常者と呼んでいたこと、やましい交際ではないことなどを書き、
キッチンのテーブルに置いた。

そうして自室に戻ってさめざめと泣いた。
母親は、それを読むと、私の部屋にやってきた。

「つらかったね。どうして言ってくれなかったの・・・」

そう言って私を抱きしめて泣いてくれた。

母が私の悩みに対応してくれたのは、物心ついてから人生初めての経験だったので、うれしいような、自分が情けないような気持ちだったのを覚えている。
112: 2011/11/18(金) 21:36:24.74 ID:L7/lDu6X0
まく吉は、私の前では赤ちゃんも顔負けの甘えっぷりだったが、体面だけは大変いい男だった。

きちっとスーツを着こなして、見た目は初老としかいいようがなかったけれど、

自分はこれだけの年収があって、きちんと娘さんを養う覚悟がある云々、
結婚を前提に清い交際をしている云々、などを言い、

反対していた父からも一応の了解は得た。

そうして進学のことも、合格したら行かせてやると言われた。
115: 2011/11/18(金) 21:39:35.52 ID:L7/lDu6X0
高3の秋も深まった頃、受験勉強にも精を出し、
ようやく問題に片がついたかな、と思えた頃。

私は、まく吉と別れていた間に起こった真相を知ってしまう。

それは電話での何気ない会話の中でのことだった。

「そういえば、なんであの時、突然別れるなんて言ったの?
すぐに、やっぱり別れないって言われたけど・・・」

それはどうしてもひっかかっていることだった。
言い方が柔らかかったからか、まく吉は少し言いにくそうに、だけどはっきりこう言った。


「実は、別れてた間に、リサちゃんに告白したんだ・・・」



・・・え?
117: 2011/11/18(金) 21:42:57.49 ID:L7/lDu6X0
「ちょっと待って、それ・・どういうこと?」

「つまり・・リサさんにフラれたから、『別れるのやめよう』って言ったの?」

私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

「俺は悪くないんだよ!!」

彼は、大きな声を出した。
118: 2011/11/18(金) 21:44:03.11 ID:L7/lDu6X0
「リサちゃんが、夕子と別れろってしつこく言ってきたんだ!
旅行から帰ってきてから、1ヶ月くらいずっと!
だから、私はてっきりリサちゃんが自分と付き合ってくれると思ったんだ!
だけど婚約者ができたからって断られた!私は悪くない!!
全部リサちゃんがそう仕向けたんだよ!」

すごい剣幕でまくしたてた。


そうして、私がうまく返事できないで固まっていると、

「私は夕子のために、別れようって言ったんだよ!そうしないといけないと思ったから!夕子は私のこと信じてくれるよね?!」


「信じてくれなかったら・・・亡くなるよ」
120: 2011/11/18(金) 21:47:46.11 ID:L7/lDu6X0
私は思考回路が一旦ぷっつり逝ってしまったんだと思う。

ようやく、再起動した時には、
「そっか、私が悪かったんだ・・・私のために、まく吉は別れたんだ・・・」そう考えていた。

とりあえず、喚いてる彼に、
「ごめんね、そっか・・・私が悪かったね、ごめんね」と言ってなだめた。

私はきっと疲れきっていたのかな。

釈然としない思いもあったけれど、その時は、もう彼を許そうと、思っていた。
この時蓋をした、悲しい気持ちが、後々、私の足を絡め取ることになる。
121: 2011/11/18(金) 21:50:01.16 ID:L7/lDu6X0
その後、私は受験に無事合格し、彼の地元へと引っ越した。

私の親は、心配もしていただろうけど、私以上に悩みの種となっていた兄のことで頭がいっぱいだったのだろう。
結局引っ越し先のアパートに来たのは、契約時と、その後アパートを出る時だけだった。

そして始まった2年間を一言で形容するなら、地獄、だった。
145: 2011/11/19(土) 19:17:43.90 ID:sxKuHQ7f0
短大に進学後からのお話です


彼は、ほとんど仕事に行かなくなっていた。
そして、貯金が全くなく、生活費のために借金をする有様だった。

当時、
「自分の家族(母と妹)を養うために、お金が必要だったから、貯金は出来なかった。
今も、生活していくためには私が借金をしなければならない」
と聞かされていた。


146: 2011/11/19(土) 19:19:46.45 ID:sxKuHQ7f0
まく吉の父は10年以上前に亡くなっているため、稼ぎ頭がまく吉だったという。
実際のところ、まく吉はよい給料を貰っていたし、貯金できないというのはおかしな話だった。

浪費三昧の贅沢な生活をしていたのは間違いないのだけれど、まだ社会経験のなかった私には検討がつかなかった。
147: 2011/11/19(土) 19:21:18.94 ID:sxKuHQ7f0
ただ現状収入が減っている事実に、

「家賃の安いアパートに引っ越したらどうかな?」
「出費を抑えることはできないのかな?」

そんな、家庭に突っ込んだ提案をすることはあった。

だけど、
「母に月これだけ渡さないといけないから無理だ、母は高齢だしお金もかかる」

そう返されては、私にはどうすることもできなかった。
151: 2011/11/19(土) 19:36:10.42 ID:sxKuHQ7f0
お金がなくて、またも借金をしてしまったよ」
「実は、今すでに100万程借りているんだ・・・」

そんな事実を吐露しはじめたまく吉に、
私は焦りを感じていた。

当時借金というと、私の中のイメージでは、
CMにあるような悪徳金融会社しか思い描くことが出来ず、
早く返済しないと、金額が膨れ上がるのでは・・・と思った。
152: 2011/11/19(土) 19:36:28.21 ID:sxKuHQ7f0
「自分ひとりじゃどうにもならないよ・・・もうだめだ」

そうこぼす彼を、私は学生ながらに、支えたいと思った。
そうしてアルバイトを始めて、月に1、2万円ずつだが渡すようになった。

彼は、「悪いよ・・・でも助かる。ありがとう」そう言って受け取っていた。
153: 2011/11/19(土) 19:41:27.78
40過ぎのおやじが10代の子にお金もらうって、プライドとかないんかな
154: 2011/11/19(土) 19:49:08.43 ID:sxKuHQ7f0
そんな金銭的な問題もあったが、一番の悩みの種は、突然にかかってくる電話だった。
まく吉はしょっちゅう、自ら亡くなる未遂をほのめかすようになっていた。

明け方も。授業中にも。夜寝る前にも。

私がメールに気づけなかったり、電話に出られないときがあると、
何十通という勢いでメールが来ていた。
155: 2011/11/19(土) 19:49:36.70 ID:sxKuHQ7f0
「なんで電話に出てくれないの?」
「ねえ、電話に出てよ」
「早く来てくれないと4んじゃうよ」

「私が4んでもいいの?早く来てよ」


「今、枕元に首吊り用の縄を用意してるよ」
157: 2011/11/19(土) 19:54:02.97 ID:sxKuHQ7f0
心臓がはねて、背筋が凍った。

私のせいで彼が4んじゃうの?怖いよ・・・
いつしかそんな意識が埋め込まれていた。

慌てて電車に乗ると、彼の家まで駆けつける。
着いたら、まく吉をなだめすかして、眠るまでそばにいて、帰宅する。

そんな日々を送っていた。
158: 2011/11/19(土) 19:57:00.42 ID:sxKuHQ7f0
自ら亡くなる未遂予告が出るたびに対応していた私だったけれど、ふと、
「授業中、メールに気づかなくたって仕方ないじゃない・・・そんなに言われても、どうしようもできないよ・・・」
とため息をつく時も多かった。

また、私は想像力や感受性が豊かなほうだったので
(影響を受けやすいおばかさんとも言う)、
彼が首吊り用の縄を使って4んでいるシーンなどが脳裏に浮かんでは恐怖におびえていたのだった。
162: 2011/11/19(土) 20:12:06.98 ID:sxKuHQ7f0
それはもう、胸がきりきりとする日々だった。
常に緊張の下に晒されていた。

そんなこと、誰にも相談できなかった。

親しかった地元の友達とも、連絡を取ることが少なくなっていた。
短大で新しく出来た友人には、そんな重い話をして引かれるのが怖かった。
両親は、兄の問題にかかりきりだったし、事情を話したら連れ戻されると思い、言えなかった。

進学に当たって、「何かあったら、連れ戻すからな!」そう言われていたから余計に。
163: 2011/11/19(土) 20:20:06.02 ID:sxKuHQ7f0
電話で、彼に子守唄を歌って、寝かしつけた夜。

電話を切った後、携帯をふすまに投げつけて、嗚咽して泣いたこともあった。

顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、

「助けて・・・誰か・・・」そう嘆かずにはいられなかった。


だけど、私にはどうしたらいいのか、分からなかった。
孤独感に押しつぶされそうだった。
164: 2011/11/19(土) 20:28:43.12
40おやじに子守唄歌ってたら精神病むわな
165: 2011/11/19(土) 20:30:47.69 ID:sxKuHQ7f0
そんな中で、唯一弱音を吐けるのは、ネットだけだった。
顔も知らない相手に話を聞いてもらう時間が、安らぎになっていた。


彼は、日曜日に、彼自身が立ち上げた宗教サークルに私が来ることも強要した。

私がバイトなどを理由にして拒むと、

「夕子来ないの?じゃあ私も行かない。
いいんだね?リーダーの私が行かなかったら、みんな困るけど」

そういわれて、仕方なく行っていた。
166: 2011/11/19(土) 20:31:23.51 ID:sxKuHQ7f0
彼は、サークル内では、非の打ち所のない体裁の良い男へと変貌した。

堂々とした態度に、説得力のある話し方、サークルメンバーの相談にも根気良く乗っていた。

みんなが彼を慕い、信頼していた。私は冷めた目でそれを見ていた。
彼の仮面をかぶった上面な話なんて、退屈だったしあくびもした。
167: 2011/11/19(土) 20:33:38.39 ID:sxKuHQ7f0
それがサークルメンバーには気に入らなかったのだろう、ある日、一人のおばさんから彼の元にメールがきた。

「夕子さんは、サークルに来てもやる気が見られないし、
きちんと話を聞いてないですよね。どうも幼すぎると思います。

もうちょっと態度を改めるべきじゃないかと思うので、
まく吉さんから注意してもらえませんか」
168: 2011/11/19(土) 20:35:06.73 ID:sxKuHQ7f0
まく吉は、「どうしよう・・・」といいながら、そのメールを私に見せてきた。

私が幼い?どっちが?


サークルに私が行かないと行けないっていうから、辛くても行ってるのに・・・

悲しいやら腹立たしいやらで、気持ちの整理がつかなかった。
183: 2011/11/19(土) 21:12:10.35 ID:sxKuHQ7f0
当時の心境を、表したような出来事があった。

住んでいたアパートは築50年の古い建物で、虫が寄り付いていたので、
ある日、部屋でバルサンを炊いた。
その翌日、部屋の中央に、一匹だけ、仰向けになって4んでいる例の虫を見て、最初はただただ不気味だった。

なぜ真ん中にぽつんと亡骸があるのかな?
184: 2011/11/19(土) 21:12:28.42 ID:sxKuHQ7f0
よくよく考えると、そこはバルサンを置いた位置。そのバルサンは底の部分がへこんでいて、そこだけ札虫剤がつかなかったのだ。

例の虫は苦しみながらも札虫剤のついてない床へとたどり着き、結局亡くなったのだった。

「これは私じゃないかな・・・」

そんな風に、ふと思ったりもした。
185: 2011/11/19(土) 21:13:41.57 ID:sxKuHQ7f0
短大1年生の冬ごろ、私はとうとう彼に別れを切り出した。

後押ししてくれたのは、ネットで相談を聞いてくれたタケさんという人だった。

「その彼はおかしいよ。別れた方がいい」

再三言われて、私もなんとか今の状況から脱出したいと決意した。
187: 2011/11/19(土) 21:19:06.97 ID:sxKuHQ7f0
まく吉は「絶対に嫌だ。私を見捨てるの?」と言った。

「私と夕子はすでに一つだからね。私は夕子だけを一生愛し続けるからね」と。

なんと言われても、私も限界に達していたので、無理やり距離を置くことにした。
ただ自ら亡くなるだけは避けたかったので、電話もメールも返さなかったけれど、拒否はしなかった。
194: 2011/11/19(土) 21:25:03.49 ID:sxKuHQ7f0

その間、私も久しぶりに学校の友人と気兼ねなく遊んだり、飲み会に参加したりした。

だけど、表面上の付き合いという感じが強くて、なかなか心を打ち解けることができなかった。

好意を寄せてくれる男の子もいたけれど、

「若い男は下心しか持ってないから近づいてはいけない」

宗教的にそう教えられていた私は、デートに誘われても、どうしても一歩踏み出すことができなかった。
まく吉とは、そういう関係は持っていなかったから。
195: 2011/11/19(土) 21:26:25.89 ID:sxKuHQ7f0
別れて1週間ほど経った後、彼は50本のバラの花束と十数万する指輪を買って、
私のアパートに訪ねてきた。

「頼むから復縁してほしい、夕子がいないとだめなんだよ。
私が一生愛するのは夕子だけなんだから」
と懇願された。

情が動いたけれど、その時は断って門前払いをした。

彼は、「別れても、私の気持ちは一生変わらない、一生愛し続けてるからね」
と言って去っていった。
197: 2011/11/19(土) 21:27:40.23
マジでそいつ怖いわ

バラの花束とかないわー
204: 2011/11/19(土) 21:44:53.20 ID:sxKuHQ7f0

その後、しばらくして他の男性から告白された。

それは、ネットで知り合い、まく吉の話を聞いてもらっていた、タケさんだった。

私は悩んでいた。

友達経由で知り合った人たちとは違って、彼には私の事情を理解してもらっている。
他の男性と付き合うのが怖くなっていた私だったけれど、この人なら、と揺れていた。

そんな頃に、まく吉からの電話が鳴った。
207: 2011/11/19(土) 21:50:45.68 ID:sxKuHQ7f0
彼は最初、自ら亡くなる未遂で私を煽り、それでもなびかないのを見ると、こう言った。

「私達は、2年前、神の前で互いに一生愛し合うと誓ったよね?それを反故にするの?
それはつまり、神を裏切ることになるけど、それでもいいの?」

神を裏切る・・・すでに宗教に染まりきった私にとって、それは重罪行為に感じた。
返事にとまどった私に、まく吉はこう続けた。

「夕子、正座して聞きなさい。今、神がこう仰せられています。

夕子よ、あなたは、私との誓いを破るのか。私との誓いを破ることを、私は許そう。
しかし、それによってあなたの人生が荒んだものとなるのは承知しなさい。
もう一度聞くが、あなたは私の誓いを裏切るのか?」

私は、その言葉に口をつぐんだ。とても重みのある言葉に感じた。

そうして、結局私は、裏切ると言うことが出来なかった。


私は、まく吉の下に戻っていった。
209: 2011/11/19(土) 21:52:40.62
宗教恐ろしいです><
211: 2011/11/19(土) 21:57:26.18 ID:sxKuHQ7f0
そうして、タケさんに電話をして、
「元彼とよりを戻すことになりました。
やはり付き合えません、ごめんなさい」と伝えた。

するとタケさんは、

「そっか・・・。ごめん、辛すぎる・・・。俺・・亡くなるかもしれない」

と言い出したものだから、私は仰天した。
216: 2011/11/19(土) 22:00:16.74 ID:sxKuHQ7f0
頭の中がパニックになったまま、私はとにかく、「なくならないで」と言い、

「とにかく会ってほしい、今一人でいたら、おかしくなりそうだ」
というタケさんと会うことにした。

そうこうして、慌てて出かける準備をしている真っ只中に、まく吉から電話があり、

「今どこにいるの?」
と言われたので、

パニック状態に陥っていた私は、

「今、ある男性のところへ向かっているの」
とつい口を滑らせてしまった。


まく吉は発狂した。
218: 2011/11/19(土) 22:04:38.09 ID:sxKuHQ7f0

彼は、「薬を60錠飲んだよ、助けに来て!早く!」と叫んだ。

私はますます混乱した。


まく吉の母からも、

「あんたが来ないとうちのまく吉が。あんたのせいよ!早く来なさい!」
と言われた。

あの時のことを、世間的には修羅場と呼ぶのかな?

体が2つもない私は相当焦った。私のせいで、人が亡くなるかもしれない、
そう思うと胸が痛くて倒れそうだった。
220: 2011/11/19(土) 22:08:35.08
洗脳されてる、というか周りに振り回されてるという印象だな
自分を持ってないというか…育った環境のせいでこんな面倒に巻き込まれる不遇
222: 2011/11/19(土) 22:11:15.35 ID:sxKuHQ7f0
とりあえずまく吉には母がいるのだから、任せることにして、タケさんの元へ行った。

理由に納得はしていなかったもの、話し合いの結果、
タケさんは落ち着いた様子で、

「わかったよ、なんか来てもらっちゃってごめんね。
彼氏が心配だろうから、帰りなよ」そう言ってくれた。

ちなみにまく吉は薬を吐き出して、事なきを得たようだった。
彼の母には恨み言を言われたけれど。
225: 2011/11/19(土) 22:21:28.85 ID:sxKuHQ7f0
そうして、再び付き合うようになってから、知ったこと。

彼はサークル内の女性とまたも親密な関係になっていた。

その女性(ユミさんとする)に頼まれて、ユミさんの部屋に行って一晩泊まったと聞いたり、彼女が手を握ってきた、など。

彼の話はいつも、「相手の女性が誘ってきた」という口ぶりだった。
当時の私は、それでも彼を信じていたので空恐ろしい。

ただ、性的な面では、彼は潔癖だったので安心していた。
226: 2011/11/19(土) 22:23:26.83 ID:sxKuHQ7f0
そんな風にして日々が過ぎ、私も相当心を蝕まれていた。
自分では、ほとんど自覚はなかったけれど。

気づけば、また季節は巡り、卒業まで半年の時期になっていた。
私は、そんなまく吉の束縛に対しても、ずいぶん慣れてしまっていた。

異常という感覚が麻痺していたのだろう。
231: 2011/11/19(土) 22:32:08.96 ID:sxKuHQ7f0
友達に、ぽろっと、「彼が病んでいるんだ・・・」と伝えたことはあったけれど、
精神病自体があまり知られてなかったので、特に反対されたり意見を言われることはなかった。

何より、自分が、幸せだと信じたかったのかもしれない。

ある日、宗教サークルからの帰ると、まく吉から電話があった。
「今日、帰り道に、何考えてた?」

私は、これからの将来どうなるのかな・・・という思いに耽っていたところだった。
232: 2011/11/19(土) 22:33:37.10 ID:sxKuHQ7f0
「将来のことを考えていたよ。
卒業後、心理学の専門学校に行くって言ってたけど、
貯金はまだ貯まってないし、とりあえず実家に戻ってアルバイトでもしようかなって」

私が行こうと思っていた専門学校は海外の学校だったため、
9月から新学期が始まる予定だった。

「そうか、将来のことを考えていたんだね。結婚のことは考えなかった?」

「うーん・・、まく吉の年齢を考えたら、先に結婚してから専門学校に行く準備をしたほうがいいかな・・・とも思ったよ」
233: 2011/11/19(土) 22:36:07.08 ID:sxKuHQ7f0
「・・・やっぱりそうか・・・」

まく吉は意味深な雰囲気で間を取ると、こう言った。

「実は今日、私達は卒業後結婚すべきだってお告げが来たんだ。夕子にも同じ思いが与えられたみたいだね」


「え、そうなのかな?でも、そんなことあるのかな?」

「これは間違いなく啓示だよ。私には分かる。夕子、結婚のこと考えてみてほしい」

私はその時、まく吉の言葉を完全に信じていた。
もうこれが運命なのかな、と感じていた。

今、どん底にいるけれど、これ以上のどん底はないだろう。
あとは、良くなるだけ・・・そんな期待を抱くようになっていた。
234: 2011/11/19(土) 22:36:43.37
ま さ か
235: 2011/11/19(土) 22:50:17.58 ID:sxKuHQ7f0
そうして後日プロポーズをされ、私は承諾した。

それまで進学のために貯めていた100万程のお金は、
ささやかな結婚の費用に当てることに決まった。

まく吉が会社にあまり行けていないことは、両親も知っていたが、
そこまで酷い状態だとは思っていなかったのだろう。

再度、挨拶に来た時、まく吉はパリっとスーツを着こなしていた。
借金のことは隠して、会社に行けていた頃の年収を提示して、大丈夫だと安心させた。

結果、4年近くにわたる交際の末の結婚ということで、許しがでた。
239: 2011/11/19(土) 23:01:56.84 ID:sxKuHQ7f0
20歳。成人式の日、私は薬指に婚約指輪をはめていた。

そして、結婚式当日。

家族だけでの小さな結婚式が開かれた。

純白の花嫁衣裳に包まれロードを歩く私の写真は、幸せそうな顔をしているように見えた。

そこでひとつハプニングが起こる。

私は式の途中で、眩暈を起こして倒れかけてしまったのだ。
その後は、ずっと調子が悪くて、なんとか式場の進行をこなしているところだった。

その日、私が事前に知らされていた予定では、私の家族と、まく吉の家族は、母と妹とその娘だけが来ると聞かされていた。
あとはまく吉の友人が二人。のはずだった。
241: 2011/11/19(土) 23:03:55.52 ID:sxKuHQ7f0
式後の写真撮影の中で、来てくださった人たちに挨拶をして回ったのだが、
ひと段落して二人になった頃、まく吉妹の旦那さんから電話が鳴った。

そして1時間にも及ぶ電話。
まだ肌寒い季節に、私は袖なしのドレス一枚で、駅構内で震えていた。

まく吉は暗い顔をして戻ってきた。
そしてこう告げた。

「妹の旦那さん、夕子のことすごく怒ってたよ。
せっかく来てやったのに挨拶もしないなんて非常識だって。

これだから若い子と結婚したらダメになるって。
妹の旦那さんも、バツ3だけど若い子と結婚したときは、すぐに離婚したんだって。
私が代わりに謝っておいたからね・・・ひどい目に遭ったよ」
242: 2011/11/19(土) 23:04:20.80 ID:sxKuHQ7f0
私は、目が点になった。
「妹の旦那さんが来るなんて聞いてないよ・・・。
顔も知らないけど、いったいどの人のこと?」

「来てたんだよ、夕子が挨拶しないから、私が怒られたんじゃないか!」

結婚式当日なのに、非難されて泣きたい気持ちになった。
248: 2011/11/19(土) 23:25:42.82
オッサンの身内にまともな精神な人はいないのか
250: 2011/11/19(土) 23:36:10.16 ID:sxKuHQ7f0
>>248
まく吉の母は心療内科に通っていて、妹の家族が引き取りました

妹はというと、まく吉が会社に通えなくなって借金をしはじめた頃に、
結婚して家を出ました
自分のお金はきちんと貯金していて、すぐにマイホームを買っていました

友人は宗教関係の人が2人ほどしか。一人はサークル仲間のユミさん
もう一人は、遠方に住んでいる男性で、どちらも結婚式に参加してくれました

253: 2011/11/19(土) 23:45:57.81 ID:sxKuHQ7f0
こうして始まった結婚生活は、けして楽しいとは呼べないものだった。

最初の方こそ、まく吉は出勤してくれて、私も家事にいそしんでいたが、
結局1週間も経たないうちに、また仕事に行けなくなってしまった。

いつしか、再び自ら亡くなる未遂を繰り返すようになり、
勝手にネットショッピングをしては浪費をして、借金は膨れ上がるばかり。


結婚して1ヵ月後、彼はとうとう会社からリストラされた。
254: 2011/11/19(土) 23:46:25.96 ID:sxKuHQ7f0
それを聞いた私は、心がぽっきり折れてしまった。

これ以上どん底はない、と信じていたけれど、更に落ちることがあるなんて。
結婚して、さあ頑張ろうという意思は、もう消えてなくなっていた。

だんだん家から出るのが怖くなってしまい、買い物やゴミ出し以外では外出する機会も減っていった。
人の目が怖くて仕方なかった。
256: 2011/11/20(日) 00:03:20.63
無理すんなよ
261: 2011/11/20(日) 00:12:55.69
友人からの電話やメールも、返すことができなくなっていた。
「元気にしてる?」
その問いかけに、作り物の
「うん、元気にしてるよ」の返事が、出来なくなっていたから。

もう元気なんて、どこにもなかった。
ただ、絶望だけ。
262: 2011/11/20(日) 00:13:30.82
悲しかったことがある。

話の冒頭にでてきた、児童保育のSさんの奥さんから、贈り物を頂いた。
だけれど、私は完全な無気力状態になっていて、お礼の手紙ひとつ書くことが出来なくなっていた。

数週間後、
「うちの奥さんが贈り物をしたのに、お礼ひとつよこさないなんて、失礼じゃないか」とお叱りのメールをもらった。
それを読んで、私は泣いてしまった。
263: 2011/11/20(日) 00:14:21.09

実は、短大時代でまく吉と別れようかと悩んでいた時、
Sさんにだけは相談できるかも・・と思って、私は幾度かメールをしたのだけれど、
返事は一度も返ってこなかったのだ。

あの時、SOSを出せた唯一の知人はSさんだけだったので、切なくなった。
264: 2011/11/20(日) 00:15:22.15
私は確かに失礼だったと思う、何か頂いたら、お礼を書くのは当然の行為。

でも、それすら出来なくなってしまった自分。


しなければいけないことも、何もできない。

ぼーっとしていると涙がにじんでくる毎日。

ベランダに出て、ここから飛び降りたら楽になるかな・・・そう、カウントダウンしては、
理性が押しとどめて部屋に戻るような、そんな暗い気持ちに苛まれていた。

まく吉の自ら亡くなる未遂で、あれだけ苦しめられた私が、同じことをするのは間違っている・・・
みんなに迷惑をかけてはいけない・・・そう自分を戒めた。
265: 2011/11/20(日) 00:18:09.85
まく吉はというと、週に1度、サークルの女性のユミさんと二人で食事に行っていた。
勉強会という名目で。

深夜、私が、ふと目を覚ますと、まく吉はその女性に電話で愚痴をこぼしていた。

「私が辛いのに、夕子は起きてくれないんだ。
私がこんなに苦しんでいるのに、体をゆすっても、起きてくれないんだよ」

寝ているだけなのに、なんでそんなこと言われなくちゃいけないの?
四六時中、まく吉の相手を出来るわけないでしょう・・・

私には色々な感情があったはずだけど、ほとんどが機能しておらず、
ひたすらにどうでもよくなっていた。
266: 2011/11/20(日) 00:22:49.67
結婚して10ヶ月後。

冬の到来と共に、私の大好きだった祖母が脳梗塞で倒れた。


おばあちゃんは、とても温かくて、にこにこと笑顔の絶えない人だった。
私が返事が出来ない状態に陥っても、毎月のように絵葉書を送ってくれていた。

結婚が決まった時に、両親には「絶対に帰ってくるなよ」と言われたけれど、
祖母は「辛くなったら、いつでも帰ってきていいんだよ」と私を送り出していた。

知らせを聞いて急いで実家に帰り、祖母の入院している病室へと向かった。


ようやく会えた祖母は、目を開けることも、口を利くことも出来なくなっていた。
267: 2011/11/20(日) 00:23:59.21

「夕子だよ、わかる?」

私は手を握り締めて、耳元で話しかけた。

おばあちゃんは、私の手を弱弱しく握り返してくれた。
温かい手だった。

何度も何度も、話しかけるたびに、ゆっくりだけど、ぎゅっぎゅっと手を握ってくれた。

私は泣いていた。
なんでおばあちゃんに手紙を返さなかったんだろう?
話せる間に、もっと色々なおしゃべりをしなかったんだろう?

ごめんね・・・ごめんね・・・
268: 2011/11/20(日) 00:25:55.57
おばあちゃんは私の声を聞くと、少しだけ穏やかな顔をしたように見えた。

脳梗塞で、意識は火事に包まれているような苦しい思いをしているという話を医者に聞いていたが、
それでも祖母は私が話しかけて手を握ると、微笑んでいるようだった。

それが、何よりの慰めだった。

おばあちゃんが好きだった、童謡の歌をラジカセで流しながら、
面会時間ぎりぎりまで、私はおばあちゃんに会いに行っていた。
269: 2011/11/20(日) 00:27:18.68

それから、数日後、祖母は亡くなった。


母は、「おばあちゃんはみんなにお別れを言えるように、頑張ってたのよ」と言った。

私があんまり悲しむものだから、兄は元気付けようとからかって笑わせてくれた。
父は、夕子が泣くのを初めて見た、と母に向かってつぶやいていた。

私の心には、ぽっかり穴が開いてしまった。
270: 2011/11/20(日) 00:29:58.21
読んでくださったみなさま、ありがとうございます

今日はそろそろ眠りたいと思います

祖母が亡くなり、もうしばらく辛い話が続きますが、

まもなく転機も訪れます。


また暇な時に覗いてくれたら嬉しいです

次の書き込みは、遅くても月曜日になりそうです


今日もお付き合いしてくださって、どうもありがとうございました

おやすみなさい
290: 2011/11/21(月) 06:10:40.07
辛かったな、本当に。
303: 2011/11/21(月) 14:29:41.29
ありがとうございます

では続きを載せますね


家に戻った時、私はまた自分の殻に閉じこもっていた。

お互い特に会話もなく、居間でそれぞれのパソコンを見ている日が続いていた。
まく吉は相変わらず、パソコン上で宗教の論争に明け暮れているみたいだった。

そうして結婚して1周年を迎えたけれど、そこに喜びはなかった。
乗り切った・・・そんな印象。

私はもう限界だったのだと思う。
304: 2011/11/21(月) 14:30:58.00
4月のある日、まく吉がいつものように自ら亡くなるをすると言い出した。
ささいなケンカが発端だった。

私は、いつもなら「なくならないで」と懇願して止めたものだが、


その時、魔が差した。


「じゃあ、私も亡くなるよ」


そう口にしていた。
それまで、決して言わなかったその一言が、ぽろっと出たのだ。
306: 2011/11/21(月) 14:33:35.67
もう生きてることになんの希望も見出せない。
ただただ、私は疲れ果てていて、眠るようににいきたかった。

誰も私がずっと苦しんでいることに気づいていなかった。

この3年に渡って

周りの人も家族も友人も、誰も・・・誰も・・・。


私が亡くなっても、誰も悲しまないんじゃないか・・・


もう、いいや。


私は人生を投げた。
307: 2011/11/21(月) 14:35:31.35
名前は明かさないけれど、赤色の睡眠薬がある。

当時はっきりとは知らなかったけれど、数十錠で達するものだったらしい。
私とまく吉は、それと他の薬をあるだけ服用した。
彼は、病院に行って薬をもらっては、飲まずに置いておくことが多かったから。

意識が遠ざかる中で、「ごめんなさい・・・」そう思った。

私とまく吉は、自ら亡くなる儀式を図ったのだ。
308: 2011/11/21(月) 14:37:44.09

私は、あの時、亡くなったと思った。



目が覚めたとき、私は病室にいた。
救命器具が頭の上あたりにぼんやりと見えたのを覚えている。

どうやら胃洗浄というのをされたらしい。

あとで聞いた話によると、
まく吉は薬を飲む直前に、友達に電話をしていた。
その友達が、どうも様子がおかしいというので、救急車を私達の住所まで呼んだのだという。

病院の人の話が、薄れていた意識の中で聞こえてきた。

遅ければ命はなかったと。
311: 2011/11/21(月) 15:01:42.55
私の両親が病院に駆けつけていた。

まだ薬が効きすぎていて、その時の記憶はほとんどない。

霞がかった意識の中で、私は実家に戻っていた。
まく吉も一緒に、引き取られていた。

ようやく意識がはっきりしてきた私は、今度はパニック発作を起こしていた。
312: 2011/11/21(月) 15:04:13.02
心臓が痛いくらいに脈を打って、息つぎがうまくできない。
なんとか体を起こしたいのに、硬直してしまっている。

手に力を入れようとしても、指ひとつ動かない。
声が出ない。
目が開けられない。

私は自分の身に起こっている得体の知れぬ恐怖に怯えた。

313: 2011/11/21(月) 15:07:03.63
母が、となりにいた。私の手を一生懸命さすってくれていた。
私は発作中、亡くなるのではないかという気持ちに駆られていたため、
最後に会えて嬉しいような申し訳ないような、複雑な気持ちでいた。

でも、きっと本当はほっとしていたのだと思う。


終わったんだ、って。

生きてるんだな、って。
314: 2011/11/21(月) 15:07:55.82
母は、体が思うように動かない私を、着替えさせてくれた。


肌着までも。

肌着ひとつ変えることすら出来なくなった自分が、情けなくて、涙が溢れた。

でも同じくらい、久しぶりに誰かに大切にされて、その温かさに胸がいっぱいになった。


私、ちゃんと必要とされてたんだなって。

大事に思ってくれてたんだなって。
326: 2011/11/21(月) 18:05:26.36
(´;ω;`)ウッ
390: 2011/11/21(月) 20:59:28.77
お疲れ
切なくなったけど次楽しみにしてる


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